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夜、アミリア君の部屋へと向かう。
ソフィア「お邪魔します…」
アミリア「ソフィアさん、来たね。さぁさぁ、こちらへ」
アミリア君は紅茶を用意してくれて待っていた。
ソフィア「あぁ、紅茶まで、ありがとうございます!」
アミリア「紅茶は大丈夫かな?そこまで把握出来てなかったんだけど…」
ソフィア「いえいえ、大丈夫ですよ、用意してくれるなんて思ってなくて…」
私は紅茶の入ったカップを口に運ぶ。
アミリア「俺から誘ったんだ。これぐらい、どうって事はないよ」
ソフィア「それで、話とは…一体」
私はカップを机に置いた。
アミリア「これと言って大事な事でもないんだけどさ、実は俺、ここに来る前は作曲家をしてて、色んな曲を作ってたんだ」
ソフィア「凄いですね!」
アミリア「ここでひっそり曲を作ってみたんだ。この階の隣に空き部屋にピアノがあるんだ。ついてきてくれるかな?」
アミリア君は、楽譜を数枚手に持ち、立ち上がった。
ソフィア「はい…」
ソフィア「ほんとだ、ピアノがある。ここ来たことが無かったんで」
アミリア「そうなんだ」
アミリア君は椅子に座り、楽譜を置き、鍵盤蓋を開け、鍵盤に手を置いた。
私はもう一つ奥に椅子があったので、それを持って、ピアノの近くに置いて座った。
今弾いてくれている曲はワルツ調だった。気がついたら弾き終わっていた彼。
アミリア「ごめんね、忙しくてさ、短い曲だったけど。ソフィアさんってワルツ好きでしょ」
ソフィア「えぇ!?なんで私の好みを!?」
アミリア「この前君の部屋で掃除か大変だからって言って来た時にワルツ系のレコードが棚に並んでてね」
ソフィア「なるほどですね、それで知ってるんですね。それにしてもピアノできるなんて羨ましいです」
アミリア「幼少期の頃習ってたからね。それに父親が作曲家だったから」
ソフィア「幼少期から、へぇ〜」
すると、とつぜん、ドアがガチャっと鳴り、それに気がついて私は勢いよく後ろを振り返った。
その先で、拍手が聞こえた。
ディサイア「素晴らしいな」
アミリア「ディサイア様!…事前にひっそり館で作っていたものを披露していたところで…」
アミリア君は少し驚いた表情だった。
ディサイア「実に見事だった。流石は派格者でもある優秀な子だ。その曲の名は何というかな」
アミリア「いえ、名前は特に…」
ディサイア「そうか。…いや、廊下で偶々君が演奏している音が聞こえてきて気になったものだから、きてみたら、もう終わってしまっていたか。君のオリジナル溢れる曲をもっと聴いていたいぐらいだ」
アミリア「お褒めの言葉、ありがとうございます。ですが、私は今は短い曲しか。作曲は最近全くしてないですね」
ディサイア「なるほど。前も言っていたな、作曲家をしていたと。ここに来てから忙しくなって中々する機会が減ってしまったのも無理はない」
アミリア「でも、曲を作るのは未だに好きでいるので」
ディサイア「その気持ちはずっと大切にしているといい。それと、話は変わるが、私達の命を狙っている団体がいるらしい。覚悟だけはしておけ。では」
ディサイア様は出ていってしまった。
狙ってる…?いつか来てしまうのではないかと思っていたけれど、ついに来たのか。
アミリア「ゆったりしてる場合じゃないね」
ソフィア「そうだね…」
私は廊下に出た。
ディサイア「ピアノ…か」
私の古き良き友人にもピアノ好きがいたのを思い出した。季節はすっかり冬。毎年冬になり、雪が降ると彼女を不意に思い出してしまう。
アンジェルス・ワークス「ディサイア。見てちょうだい。この雪景色」
私とアンジェルスは暖炉で温もった部屋の中にいた。そこで私は窓から近い場所に椅子があったからゆっくりと腰をかけて本を読んでいた。一方アンジェルスは窓から見える雪景色をじっとりと眺めていた。
ディサイア「何をそんなに興奮しているんだ。ここでは冬の時期になると積もるのは昔から分かっているだろう」
アンジェルス「ん〜それもそうなんだけど……なんかこうーもう少し、感激した表情が見たかったのだけれど…貴方いつもそうよね。冷静沈着としているのは良いことだけれど少しは他の事にも興味を持つことも…」
ディサイア「あぁ、それじゃあ…急に降るようになったな、凄いな」
アンジェルス「んっもう良いわ、」
ディサイア「…そうか」
そして私達は雪が積もると、とある活動をする。それは、除雪作業だ。
それぞれ場所分担させられた私達は、左右は林が立っており、左には川がある。ここから川までだいぶ深さがある。
ミフィルク・スワイン「今日はよろしく、君達って最近来た子だよね」
ディサイア「あぁ、そうだが」
アンジェルス「よろしく、というかこの3人だけなのね」
ディサイア「参加している人も少ないし、作業場所の都合やらでそれぞれ3人ずつらしいぞ」
ミフィルク「俺さ、長年やってるんだよね、先輩ってこと、よろしく、あー2人とも。俺は、川の方でやってるからなんかあったら呼んで?んじゃ」
ミフィルはそう言うとそっぽ向いて川の方へ行ってしまった。
アンジェルス「はぁ〜なんで私達がこんなこと…」
アンジェルスは気だるそうにザクザク掘っては2人で決めた隅の方に集めた。
ディサイア「人間との、協調性を育む活動の一つだそうだ」
アンジェルス「はぁ何それっっよっと。はぁ、それで本当に育めるかどうかよね」
アンジェルスは集めた台形の雪を見つめながら言った。
ミフィルク「お〜い!2人とも〜奥の方行こうぜ!奥めっちゃ積もってる!」
ディサイア「奥…か」
アンジェルス「本当ね、行きましょ、」
私達は奥へと行く、ここは静かだな…私達が担当しているところは他の活動者とは離れた場所だった。
ディサイア「川にも雪がかかっているな…」
アンジェルス「ん?奥の方、川見て」
と、アンジェルスが立ち止まり、堤防がある川の方に指を指した。
すると、除雪作業をしているミフィルクがあるだけだった。
ディサイア「あれは、ミフィルク。それがどうかしたのか」
アンジェルス「あれさ雪、川に流してない?」
ディサイア「…?それが何か問題でも?」
アンジェルス「……あっ、ほらほら、明らかに捨ててるよ、あの動き。雪を川に捨てたら、雪のせいで塞がって、河川の水が溢れてダメなのよっ!止めないと!」
ディサイア「まずい事は確かなのか、私自身、知識不足だったな」
私達は注意をしに大急ぎで走った。
アンジェルス「ちょっ、ちょっと!!!!貴方!危ないわよ!!!」
ミフィルクの近く向かった後にアンジェルスは走って川の近くに寄る。
ミフィルク「あぁん?何だよ。捨ててるだ…け」
アンジェルス「てっ…」
次の瞬間アンジェルスは前のめりに滑ってしまい、川の方へと転げ落ちてしまった。
ディサイア「アンジェルスッッ!!」
ミフィルク「あ、あぁ、なんだ…俺俺、誰か呼んでくる!!待ってろよ!!」
いや、見過ごすわけにはいかない、待っていられない。
アンジェルスは必死にバシャバシャともがいる。
私は、スーッと堤防を降り、上から追いかけるが手を伸ばそうにも高さがあり届かない。
飛び込んでしまっては私までも巻き込まれて助ける事ができない、そして何より私は流水が苦手なのだ。突然の事に焦りと恐怖が混じる。
私はただひたすら流れていく彼女を追いかけることしかできない。奥に行くに連れて流れが速くなっていくのがわかる。息が切れようが私は走った。ただひたすらに走った。
ディサイア「アンジェルス!!!アンジェルス!!!」
アンジェルス「う゛ぅ゛っぐふっは゛」
やだやだやだ!嫌だ!!どうしたらどうしたらどうしたらどうしたら!!!
この先は滝、道はなかった。このまま進めば落ちる、しかし、そんなことなに振り構わず落ちた。
骨が折れていようが、、見失いたくなかった、見つからなくなってしまうのではないか、、と、、、、
ゴギッバキッと骨が折れる音がする。節々が痛い。ズシリとのしかかる。
いたい、っいたいいたいいたいいたいいたいいたいいいいいいい
だけど、行かなきゃ!走れ!足、動け!体が追いつかず、結局見失ってしまった。
意識が朦朧とした中で私はただひたすらに歩いた。下を見ながらどこを目指しているのかわからない引き攣った足で。
何か建物が見える。ぼやけて分からない。手が痺れている。立てない。
ディサイア「うっ…」
私はその場に崩れ落ちてしまった。
気がつくと、仄暗い部屋の中にいた。
ミカン「お、起きたか」
ディサイア「ん………ど、どこだ…………はっ!アンジェルス!」
私は急いで起き上がった。
ミカン「回復能力が早いのう…羨ましい。っと、外は猛吹雪じゃ、無闇矢鱈に出る状況でない。幾ら、ヴァンパイアじゃからって…」
ディサイア「川で溺れた友が待っているのだ」
ミカン「友…戦友か?」
ディサイア「違う。戦友ではない」
ミカン「玄関で惨たらしい姿で横たわっとったぞ、てっきり、ヴァンパイアハンターと争ったのかと思って、死体かと思ったんじゃぞ!?」
ディサイア「ここに運んでくれて大変助かった。が、私はこれで…」
ミカン「こらっ、待てい。例え見つかったとしても、今は猛吹雪、助からんじゃろう。不死身でない限りは」
ディサイア「………」
私は結局この館に留まるしかなかった。
猛吹雪が止み、日差しが差す翌日、館の近くにある川に岩にひっかがった人の姿があった。まさかと思い、私を助けてくれたミカンというヴァンパイアと一緒に駆け寄ってみると、それはアンジェルスの変わり果てた姿だった。体は冷たかった。
ミカン「…これがディサイアが言っておったアンジェルスか」
ディサイア「そんな」
あの時川に飛び込んでいれば良かったのか?そんなこと思ったって仕方のない事かもしれない。
受け入れるしかない。変えられない運命。
数日後、帰る場所は遠い。ミカンに暫くここにいてはどうかと言われたので、いる事にした。彼女の死体は奥の山の土に埋めた。
ミカン「お主、サンルナ人じゃな?」
ディサイア「そうだが。もしかして、ミカンもか」
ミカン「そうじゃよ。なぁディサイア。わしと良ければ、同居しないか!」
彼女の墓に近い、いつでも立ち寄れる場所。
ディサイア「あぁ、良いだろう」
それから2人で広い館の中。共に生きていく事になった。
あれから毎日墓参りに行っている。今でも。
色々振り返っていると部屋へ着いた。そして私はノックをする。
コンコンコン!
続く