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「お帰り!」
「何でおんねん…………ただいま」
いつものように疲れて帰ってきた。自分で選んだ道といえど大変なことは何一つとして変わらん。
お疲れ!と駆け寄ってくる簓、ピンと張った緊張の糸は簓の前では緩くなり、一気に疲れが来たのかはぁとため息をついた。
「今日のロケこーいうことあってん」
「へー、ほんで?」
今日も疲れながらも帰り道をほとほとと歩く。
ドアの前までと近づきドアノブに手を伸ばす。ドアノブを掴みそのまま回そうとする。
「あ、鍵」
何を期待してか鍵を使わなかった。そして今日”も”簓は俺の家にいない。
鞄から鍵を出しガチャリと音を立てながらドアを開ける。物静かな部屋の中、電気もついていない暗いままの部屋に入って行く。
電気をつけできていないもの、プリントの制作やらなんやら一人で作業する。
「連絡したって既読もつかへんやん」
(お帰り、なくなってもうたな)
ピンと張った緊張の糸は緩む様で緩まない、このワンルームが安心できるようでそうでなかった。
五月蠅い奴がいないと寂しいものやな、とか考えながらコーヒーを飲み作業を再開する。
酒を飲みに来た時、週末とかはまた合間を開けてここに来る、別にそれが当たり前だったから特に気にも留めていなかった。
それが普通だからと1日、2日、3日、4日、1週間と待った、あいつがここに来てお帰りと言ってくるかただいまと言って俺に近寄って来るのを。
「零もこおへんし」
一人酒は静かで零や簓と飲む時とはうって違う。はじめは清々した気分もあったかもしれない。
だけどワイワイやった宴会のが好きやな、って思うのが9割で残りの1割が押しつぶされそうなくらい。
簓ともっかいてっぺんとるってのは叶わんのか分からん。
あいつらと飲むときは机の上は直さんし、酷かったが俺が酔っててっぺんとったる!!と叫んだりは記憶は残るタイプやから覚えていた。
ガラガラガラガラ
外の空気でも吸おう、そう考えベランダに出た。
煙草の灰皿、簓がタバコを吸うって知った時は少しだが驚いた。今は控えてるとかなんとかいっとたかな。
夜空は美しく星が光り輝き月は俺を照らした。
不意に月へと手を伸ばす、太陽には負ける月の明かりがまるで自分みたいだと考えることは少なくなかった。簓が太陽で俺が月、足を引っ張ってばかりであいつがいなければダメだった自分が何よりも嫌いだった。
伸びをしまた部屋に戻る。若干ボーっとしてるようにも自分からでも取れるがやらなきゃいけないことは大量にある。
「簓、お前が今どこで何しとるか知らんけど元気やったら俺はそれでええよ」
戻ってきてほしいとは口に出さず応援している、みたいに伝わってほしい言葉だ。
足を引っ張ることしかできなかったから他の相方ができても文句は言えない、と自分に言い聞かせた。