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晴れた日曜の午後。
人気のカフェにふたり並んで座る。
窓際の席で、すちとみことは、ふわふわのパンケーキをシェアしていた。
軽く焼き上げられた生地に、たっぷりのホイップクリームと季節のベリー。
フォークを持つ手にも、自然と力が入る。
「ん~……おいしい!」
口いっぱいにほおばるみことの表情は、まさに幸せの象徴だった。
が、その頬の端に、白いホイップクリームがちょこんと――
「……ついてるよ、口元」
すちが小さく笑いながら指差すと、みことはモグモグしながら、
「えっ、どこどこ!?」と、あわててナプキンを探す。
しかし、それよりも早く、すちが身を乗り出してきた。
「……動かないで」
「えっ?」
──ぺろ。
すちの舌が、みことの唇の端に触れ、そっとクリームを舐め取った。
「っ……⁉」
一瞬、カフェの空気が止まったように感じる。
テーブル越しに、思わず固まるみこと。
「……もう、外なのに……!」
真っ赤になって目をそらすみことの横顔に、
すちはくすっと微笑む。
「外じゃなかったら、もう少しやってたけど?」
「や、やめて、もう……っ!」
耳まで真っ赤になって俯くみことに、
すちは悪戯っぽく笑いながら、カップに手を添えた。
「……でも、可愛すぎるのが悪いんだよ。
パンケーキより甘い顔して食べるから、我慢できなかった」
「……バカ……っ」
そう呟いて、みことはすちの膝の下を足で軽くつついた。
その小さな仕返しも、また微笑ましくて。
ふたりの間には、さりげない温もりと、
“恋人らしさ”が満ちていた。
___
カフェを出たあと、公園をぶらぶら歩いて、
木陰のベンチにふたり並んで腰を下ろした。
買ったばかりのドリンクを片手に、話す内容は他愛もない。
新しい社員の話、冷蔵庫のプリン、明日の天気――
どれも日常の断片だけど、それがいとおしかった。
みことがふと、ドリンクのストローを口にくわえたまま、
じっとすちの横顔を見つめる。
「……すちって、やっぱりかっこいいな」
唐突な一言。
ストローの音と、風に揺れる木の葉の音だけが残った。
「なっ……、急に何……!」
不意打ちに弱いすちは、わずかに耳を赤くする。
みことはくすっと笑って、ストローを離した。
「ほんとのこと言っただけ。ねぇ、こっち向いて?」
「……え?」
顔を向けるより早く、
みことがそっと唇を重ねた。
「っ……!」
控えめな、けど確かなキス。
それでも人の気配がする場所でのそれは、
すちの心拍数を簡単に跳ね上げた。
「み、みこと……ここ、外、だよ……」
「うん。……でも、したかったの」
小さく微笑むみことに、すちは言葉を失う。
みことの指が、すちの手の甲に重ねられ、
そっと握られた。
「……ほら、手。繋いで。ちょっとくらい、いいでしょ?」
すちは戸惑いつつも、みことの手を包み込むように握る。
心地いい温度。ぬくもりが、じんわりと指の隙間に満ちていく。
「……最近ちょっと大胆すぎない?」
「そうかな。……でも、すちが好きすぎて、抑えられない」
耳元で囁かれたその一言に、すちの理性がきしむ音がした。
「……あとで、覚えてろよ」
「え?なにが?」
とぼけて笑うみことの頬に、すちもそっとキスを返す。
そのとき、風がふわりと吹いて、木々の葉を揺らした。
二人だけの午後。甘い時間が、ゆっくりと流れていった。
___
帰宅すると、ふたりは自然と肩を寄せ合いながらリビングに向かった。
柔らかな間接照明だけが灯る部屋は、
どこか落ち着いた空気をまとっている。
すちはそっとみことの髪を撫でながら、静かに言った。
「さっきの……公園でのこと、まだ頭から離れない」
みことは照れくさそうに笑いながら、
「俺も……すちのこと、ずっと考えてた」と囁く。
二人の距離が一気に縮まって、
すちの手がみことの腰に回り、ゆっくりと引き寄せる。
「今日は、ゆっくりとお前を感じたい」
みことの頬が紅潮し、
「うん……俺も、すちともっと近くにいたい」
声が震えるのを感じながら、すちはみことの唇に深く口づける。
その甘い重なりの中で、指先はみことのシャツのボタンを一つずつ外していく。
肌に触れるたびに、みことは小さく息を漏らす。
すちはその反応を楽しむように、ゆっくりと首筋にキスを落とす。
「大丈夫」
すちの言葉にみことは安心し、体を預けるように身を任せる。
やがて二人はベッドへと移り、
絡み合う体は昼間の甘さを超え、官能的な熱を帯びていった。
すちはゆっくりと、しかし確かな動きでみことの中に触れ、
みことの反応に一喜一憂しながら、何度も絶頂へと導いていく。
「みこと……声、聞かせて」
「すち……だめ、気持ちよすぎて……」
その夜、ふたりの間には言葉にならない愛が溢れ、
甘く激しい夜は静かに更けていった。
___
ベッドに横たわるみことを、すちは優しく見つめていた。
橙色のライトがみことの睫毛に影を落とし、頬の赤みをほのかに染める。
「みこと……」
名前を呼んだだけで、胸がいっぱいになる。
今日の笑顔も、照れた表情も、
そのどれもが、たまらなく愛しい。
「……どうしたの?」
少しだけ不安そうな目が、すちを見つめ返す。
「いや……ただ、可愛いなって」
すちはそう呟くと、みことの額に唇を押し当てた。
ゆっくり、深く――ただ、愛おしさだけを伝えるように。
みことの指がすちの胸元にそっと触れる。
「ねえ、俺……最近すちの前だと、わがままになっちゃうんだ」
「……うん、知ってるよ。全部、ちゃんと見てる」
「でも、それって……すちを困らせてない?」
みことの声はかすかに震えていた。
すちはすぐに頭を横に振り、みことの頬に手を添えた。
「困るなんて思ったこと、一度もないよ。
わがままでも、甘えんぼでも、
俺にだけそんな顔見せてくれるのが、ほんとに嬉しいんだ」
「……ほんと?」
「ほんと」
みことは少しだけ笑って、すちの胸に顔をうずめた。
心臓の鼓動が、静かな部屋に響く。
その音に安心するように、みことの体がすこしだけ力を抜く。
「……すちと一緒にいるとね、あったかい」
「俺も、みことがいてくれると安心する。
どんなに仕事で疲れても、家に帰ってきて、お前の顔見るだけで……全部ふっとぶ」
「……それ、ずるい」
「ん?」
「そんなこと言われたら、もっと好きになっちゃう」
その言葉に、すちの喉がかすかに鳴った。
「……どれだけ好きになってくれても、いいよ。 俺も、もっと好きになってるから」
そう囁くと、ふたりはもう一度、ゆっくりと唇を重ねた。
肌が触れ合うたび、想いも重なっていく。
ただ気持ちが通い合うだけで、涙が出そうなほど幸せだと――
ふたりとも、心の奥で思っていた。
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