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#百合
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ぺこーらは、ある人に、恋している。出会ったのはもうずっと前。なのに、この気持ちに気づいたのはつい最近で。
「兎田〜!ってアッ!? …いってぇ〜泣」
だってまさか…まさか、何も無いところでド派手に転ぶような、こんなポンコツ巫女を好きになると思わんじゃん。
「大丈夫ぺこか…みこ先輩」
手を差し伸べれば、みこ先輩の手が何も言わずとも、ぺこーらの手へと重ねられる。
そのまま優しく手を引いて、みこ先輩を立たせる。
「ありがと」
「もう、気をつけてくださいよ本当ポンコツなんだから」
「ポンコツは余計だにぇ!」
ぱあっと咲いた笑顔で走ってきたかと思えば、驚いた顔して転んで、痛さに悲しんで、また優しく笑って、次は少し怒っているみたいだ。
コロコロ変わる表情に、無意識に可愛いな、なんて思ってしまうのは、もう覚えていないくらい、前な気がする。
なのに、それが好きってことなんだって最近になって自覚した時から、どうしてもその気持ちが心にすんなりと落ちてくれない。
顔に熱を集めるし、素直に顔もみれないし。
好きだと自覚した事が、今のぺこーらには良いことだと思えなかった。
「兎田?」
「えっ、なに?」
返事をしないぺこらに、みこ先輩の怒った拍子に上がった眉が、八の字に下がる。
またコロリと変わった可愛い表情で、心配そうにぺこーらの顔を覗き込んできた。
反射でみこ先輩の方を向いて返事をしたけど、目が合った瞬間、そのうるうるとした瞳に一気に顔が熱くなって、思わず逸らしてしまった。
「え、…大丈夫?なんか顔あかいけど」
「大丈夫ぺこ」
指摘されてしまうくらい、赤く染まっているのかぺこーらの顔は。
赤くなってる原因の張本人は、本当に大丈夫?無理はするなよ、風邪とか?なんて別のものに押し付けようとする。
本当は、今すぐにでもおめーのせいだよなんて言いたいけど、それを言ってしまえば、みこ先輩に好きだ!すっごく可愛い!って言ってるのと同じではないか。
そんな思考をぐるぐる繰り返す横で、オロオロ動き回る、さくら色の声がさらに大きくなって、うるさい。
「あぁ、もう!うるさいぺこ!」
「うるさいってなんだよ!こっちはおめーの心配してやってるのに!」
「顔なんて赤くないぺこ!風邪もひいてない!」
「いや顔は真っ赤だよ!!事実をねじ曲げんじゃねえ!」
「……っ、とりあえず風邪でも体調不良でもないぺこ」
「それなら、よかったにぇ」
「うん」
いつもの言い合い。
少しだけ荒らがった声で、プロレスする。
これがいつものぺこーら達だ。だけど何故か今日はそれが針で刺されてるみたいに痛かった。
ぺこーらが体調不良じゃないって分かった後のみこ先輩の安心しきった顔。よかったって落ち着いた声。それに少しだけドキッとしたのがいけなかったのかもしれない。
その痛みを和らげようとすると、隣に座り直したみこ先輩に────触れたい。なんて、今までではありえないような事を思った。
ダメだ。兎田ぺこら。しっかり考えて行動しろ……相手はみこ先輩だぞ。
昔から一緒に居たけど、ボディタッチなんてそうそうなかった、急にしたら変でしかない…
「なーに兎田そんなみこちゃん見つめちゃって〜みこに見惚れちゃった〜?」
瞬きをした拍子に、視線が絡む。
いひひっ、なんて子供っぽい笑い声が響く。
煽るような声。
いつもなら、いつものぺこーらなら、
そんな訳ないって強く言い返して、
いつも通りプロレスする。
なのに、
……そんな姿ですら、可愛いと思ってしまう今のぺこーらは、やっぱり好きを自覚した事を良いことだと思えない。
「…はぁ、」
だから、”いつも通り”はもう辞めよう。
いつも通りが返ってくると思っているみこ先輩に、小さく息を吐いて、そのまま抱きついた。
顔は見えないように、肩に額をあてる。
そうすれば、小さな鳴き声が頭上から聞こえて、続く。
「にぇっ……えっ、え!?うさ、兎田ぁ!?!」
やっぱりこのポンコツ先輩は声が大きい。
身長はぺこーらよりも小さいのに…どこからそんな声が出るぺこか。
あわあわとしているのが触れている身体で分かった。
ぺこーらの肩に、手が触れたり、離れたりするから、
抱きしめ返そうか迷ってるんかな、
「…はやく抱きしめ返せポンコツ巫女」
ぺこーらの声は、かき消されそうなくらい小さかったけど、ちゃんと耳には届いたみたいだ。
身体がピクっと少しだけ固まって、さっきよりもさらにわなわなと震え始める。
「えっ、兎田、えっおめーやっぱり熱とかっ!?熱あるんじゃねえーの!?」
抱きしめ返されるどころか、みこ先輩は離れていく。何故か降参するみたいに、手をあげている。
そっと顔を覗けば、髪色に負けないくらい、真っ赤に染まっている。
「…ふっw」
そんな姿に小さな笑いが零れる。
その笑いを聞き逃さないみこ先輩は、少しだけ涙を溜めた瞳で、本当になに!?なんて困惑1色の表情だ。
本当に、コロコロ表情変わるぺこな。
…可愛い。
こんな風に焦ってるみこ先輩を見られるのなら、
好きって自覚するのも、やっぱり少しだけ、悪くない気がした。