太中
五感損失
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突然、懐に振動と聞き慣れた音が流れた
衣類の擦れる音と共に、携帯電話を取り出した
そこの表示には、知らない番号が写っていた
電話を取ると、何年も聞き馴染みのある声のある声と共に、緊張感が漂った
森『信じなくても良いし、これからする君の判断は君に任せるよ ただ、聞いて欲しくて』
なんて、これから冗談を云うみたいに聴こえる言葉と裏腹に、真正直な其の声は只事では無い事を悟った
電話の先から聞こえる其の言葉ひとつひとつが、重く、鈍く聞こえた
結論から云うと、中也が病気を患っているらしい
何年か前の幾多もの汚辱の償いと云おうか、その償いの代償に身体が耐えきれず、症状がこの四年間で少しずつ悪化していったという
その病気に早く気付けば良かったが、もう中也の命は残りわずかと言うことが分かった
持って一ヶ月程ぐらいだ
症状は、五感の喪失だ
其れも、少しずつ発症していく為、自分でも気付きにくい
其の一ヶ月間中也に付き添ってくれないかというものだった
中也の病状を確認する為という事もあると思われるが、きっと私達が元相棒だという事も気遣ってだろう
私はその交渉を呑んだ
気が向けば行けば良いと言われたが、これから家に帰るだけだった為、直ぐに向かった
ポートマフィアには容易く入れた
森さんが事情を話しておいていたのか、誰も私を気にしなかった
中也の居場所はきっと執務室だろう
倒れるまで仕事に取り組んでいるのが目に浮かぶ
四年前と変わらない執務室の扉の前に立って、何も言わずに入った
扉を開くと、机に寄り掛かりながら気絶して倒れている姿が一番に目に止まった
何故倒れているのかの詳細は分からないが、きっと机の上の書類の山が原因だろう
何徹したかも分からないほど、目の下の隈が目立つ
気絶している中也の顔を観察していると、私に気付いたのかゆっくり目を覚ました
まだ脳が処理されてないのか、私が何故此処に居るのか分からない様だった
ゆっくり口を開いて、
中「太宰か…?」
太「そう、太宰」
中「フッどうやって入って来たんだよ」
へらへらしている彼の笑顔を見つめて、何とも言えない気持ちになった
太「普通に入って来た」
中「そうかよ」
と云いながら立ち上がり、ふらふらとした足取りで何処かに行こうとしている
私はまだしゃがんだまま顔を向けず、中也に話し掛けた
太「何処行くの?外は真っ暗だよ?」
中「… 首領の処に」
と云いながら扉を開こうとして扉に手を置いた様だが、其のまま動かなくなった
暫くし、漸くして扉を開け、執務室から出て行った
其のことを確認してから、執務室を観察し始めた
暫く探していると、空の睡眠剤が出てきた
結構な量が入っていたと思われる空の瓶を見て、この私でも心配したぐらいだ
矢張りなかなかのブラックだ
時期に中也が帰って来た
中「なんか首領に休めと云われたんだが手前首領になんか云いやがったのかよ」
太「さぁ?私知らない」
中「あっそ」
太「其れよりもさ この空っぽの睡眠剤どうしたの」
中「…一寸眠れなくてな」
太「最近は?」
中「大丈夫だ 気にすんなよ 手前らしくないねぇぞ?」
太「そうかい… 矢張り私らしくない」
「あ、じゃあ今日は中也に晩御飯作って貰おうかな〜」
中「は?手前、初めから其れが目的で…」
太「まぁまぁ 良いじゃあないか ほらほら、善は急げだよ 行った行った」
中「あぁ もう、分かった 好きにしろ」
私は中也と一緒にもう使うことの無い執務室から出て行った
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お疲れ様でした
フォロワーさん100人ありがとうございます
とても嬉しいです
掛け持ち常習犯な私だけど、これからもよろしくお願いいたします
最後まで見て頂きありがとうございました
コメント
2件
昴さんの不穏太中本当に大好きですッッ..!!隈とかそういうの大好き過ぎます... 太宰さん、中也疲れてるの知っていても晩御飯強請るあたり太宰さんっぽいなぁ.... フォロワー様100人おめでとうございますッッ!早過ぎませんか...これからも頑張ってください!!応援してます!