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「な……な……」


千紘はわなわなと手を震わせて、信じられないと目を見開きながら凪を見つめた。

凪は、スープカップを持ってようやく量が減って冷め始めたクラムチャウダーを2口、3口と続けて口に放り込む。


泣きそうなほど顔を崩壊させた千紘は、絶望を物語っていた。その表情を見て、凪はようやく安堵した。

千紘に振り回されるなんて面白くない。元はと言えば、千紘が客を装って凪を無理やり犯し、そのせいで女性とのセックスでイケなくなってしまったのだ。

仕事にやる気がでなくなったのも、面白くなくなったのもそれが原因とも言えなくもない。


そう考えたら、何もかも千紘のせいだった。確かにセラピストとして仕事になれてから、女性の体に魅力を感じることは少なくなった。

だからと言って吐き気を感じるほどではなかった。追い討ちをかけたのは絶対に千紘の存在だと断言できた。


最初からずっと千紘に振り回されっぱなしで、今だってこんなふうに凪の心を揺さぶった。しつこいくらい好意を示してきたかと思ったら、急に距離をとったりする。

これが駆け引きではなく、千紘の自然体でしていることがまず気に障る。

余裕な表情で凪のスケジュールを把握しているふうな態度を取るのが鼻につく。


前にも言ったはずだ。主導権を握られるのは嫌いだと。そんなに俺のことが好きなら、お前が振り回されてろ。


そう思った凪は、さっさと食事を済ますと「ごちそうさま」と言って立ち上がった。それから何も言わずに洗面所に向かう。

千紘はぽかんと口を開けたままその動作をじっと見てたが、慌てて立ち上がると凪の後を追った。


「凪! なんで、今そんなこと言うの!?」


歯ブラシに歯磨き粉を出している凪に向かって千紘が叫んだ。凪は鏡に体を向けたままシャカシャカと歯を磨き始める。


「なにが?」


「なにがって、セックス!」


「うるせぇな。朝っぱらからセックス、セックス叫ぶな」


「凪がっ」


「予定あるんだろ?」


凪は意地悪そうに歯を磨きながら口角を上げる。ようやく主導権を取り戻した気がした。やっぱり千紘との関係はこうでなくちゃならない。

凪は丁寧に歯を磨きながら、ギャンギャン叫ぶ千紘の声を聞いていた。


「じゃあ、断る!」


「断んなよ。お前が受けた誘いなんだから」


凪が口をゆすぎ終わってからそう言う。唇をキュッと結んで、何もかも後悔でいっぱいの顔をしている千紘。


「……うん、行くけど」


凪は、しょんぼりとしてしまった千紘の横を通り抜ける。その瞬間に、軽く唇で千紘の頬に触れた。


「スルならさっさと飯済ませて歯磨いたら?」


ニヤリと笑った凪は、うーんと伸びをして1人リビングへと戻って行った。


千紘は鯉のように口をパクパクと開閉し、瞼を大きく持ち上げた。


「そ、それって抱かせてくれるってこと!?」


「したくないなら別に」


「する! するする! 待ってて! すぐにご飯をっ、いやご飯なんて後からで」


「うるせぇ、さっさと食え」


興奮が先走って今にも襲いかかってきそうな千紘の額を、凪が掌で押し返す。放っておいたらリビングで押し倒されかねない。

千紘はまるで発情期の犬のように息を荒らげて血走った目を向ける。たったそれだけで、千紘が今までどれほど我慢してきたかわかるような気がした。


「言っとくけど、俺夜は仕事だからな。ちゃんと手加減しろよ」


なんとなく危機を感じてそう言う凪だが、千紘は皿に盛り付けられた料理が混ざってもかまわないのか、とりあえず口の中に詰め込んだ。


「お前……」


最近までの余裕ぶった千紘はすっかり姿を消してしまった。今までとんでもない理性で本能を押し殺していたのだろう。ストッパーがなくなり、爆発でもしてしまったかのように千紘は食事どころではなくなってしまった。


「とりあえずシャワー浴びてくるわ」


「ほれならひっしょに」


「食いながら喋んな」


「らって」


「落ち着いて食えよ」


凪が呆れて息をつくと、口内が空になった千紘が「だって凪の気が変わっちゃうかもしれない!」と声を上げた。


「そんなにガッツかれた方がヤル気失せるわ。ヤリ殺されるんじゃないかと」


「優しくする! ぜーったい優しくする!」


「信憑性ねぇな」


凪は既に自分が言ったことを後悔し始めていた。もっとスマートにベッドへ行けないものだろうかと色気もへったくれもない千紘にただただ呆れた。


とてつもない速さで食事を終わらせた千紘は、歯磨きをしながらシャワーを浴びる準備をする。あんなにも朝はゆっくりでいいね、なんて言っていたくせに、今では1分1秒だって惜しいくらいだった。


歯を磨き終わった千紘は、脱衣場まで凪の腕を引っ張って連行し、服の裾に手をかけた。


「待て待て」


慌てて凪が千紘の手首を掴むが、千紘はハフンハフンと鼻息を荒くさせて凪の首筋に唇を寄せた。

誘ってきた凪の言葉がOKサインだと捉えた千紘は、凪の待てもおかまいなしに触り始める。


「おまっ、いい加減にっ」


「はぁ……凪、いい匂い」


襟足から匂いを吸い込んで、凪の香りを堪能する。荒い息遣いが耳元で聞こえて、凪は思わず顔をしかめた。


「ちょ、ほんとに犬かよ」


グイグイと千紘の肩を手で押すが、びくともしない。それどころが凪の方が壁まで追い込まれて、背中をピッタリと押し付けられた。


「あー……早く食べたい。シャワーなんか」


「シャワーは浴びる! とりあえず浴びてから」


「はあはあ……我慢できない」


千紘の手はさわさわと凪の横腹を撫で、首筋に歯を立てた。


「んっ、ちょ……」


「凪の匂いする」


軽く甘噛みした後は、舌全体を使ってそこを舐め上げた。


「こーら、やめろって」


凪は、本当に千紘が大型犬に見えてきて、快感よりも呆れる方が上回った。


「美味しい……」


「おい、千紘。待て」


千紘の顔と自分の首筋の間に手を差し込んだ凪が待てをする。千紘は、久しぶに凪に呼ばれた名前に反応し、ピタリと動きを止めた。


「……犬だな」


凪は千紘の口を手で塞ぎ、押しのける。距離ができて目が合うと、「シャワー浴びるって言ってんだろ。がっつくな」と言い聞かせるように言った。

千紘はコクコクと細かく頷くと、ようやく自分の服に手をかけた。それを見た凪がそっと手を離す。


「早く浴びよう! 早く!」


誰かに追われてるんじゃないかというくらい性急にシャツを脱ぎ、洗濯機の中に投げ入れた。あっという間に裸になった千紘は、やっぱり凪の服の裾もグイグイと引っ張る。


「わかった! わかったから! 自分でやる! 先入ってろ」


「ヤダヤダ。凪の体見たい。触りたい、舐めたい」


「わーかったって言ってんだろ!」


「早く早く早く」


「るせ……」


頭を抱えたい凪は、軽くため息を着きながらTシャツを首から抜いた。肌が顕になると、千紘の興奮はMAXに達し、凪の顎を手で掴んで唇を重ねた。

ほら、もう諦めて俺のモノになりなよ

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