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14 - 第14話 記者会見

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2024年07月09日

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それから私たちは人気のないところに東堂さんと三上さんを連れてきて、関係を戻したことを報告した。

すると東堂さんが厳しい口調で言う。


「それで、どうするつもりだ?より戻しました。おめでとうございますって訳にはいかないだろう?」


厳しいけれどその通りだ。

私たちは1度写真を撮られてしまっている。


せっかくスキャンダルのほとぼりが冷めたところを、再び掘り起こすのだから収まっていた世間は再び炎上するだろう。

私たちの交際は真剣で、思い合っているのは確かだ。


だけれど、そんなことは私たちを見る人には関係ない。

遊びだろうが真剣交際だろうが、イメージダウンは避けられない。


すると彼は決意を固めた顔で、こう言った。


「分かってます、だから記者会見を開きます」

「……は!?」


三上さんも東堂さんも驚いた表情を浮かべた。


「本気で言ってるのか?記者会見は好き勝手質問される。ウソ偽りはすぐに見抜かれ、下手すりゃ今以上に悪い方に向かう可能性だってある。それでもやるつもりか?」

「やります」


蓮の真っ直ぐな気持ちが痛いほど伝わってくる。


「俺が花に対する気持ちにウソ偽りはありません。俺らのファンにも、見ている人にも全て話して認めてもらいたいと思っています」


真剣である気持ちをみんなに誤解されたくない。

女優であること、それから蓮とお付き合いを続けること。


どっちもとるならばきちんと、みんなに話さなくてはいけない。


「お前らが真剣だろうがなんだろうが、世間にとっては付き合っていること自体が受け入れられないケースがほとんどなんだぞ。甘くない。わかってるのか?」


東堂さんは畳み掛けるように続けたけれど、蓮は大きく頷いた。


「どんなに鋭い質問をされても構わない。しっかりと答えて見せるよ」

「花ちゃんはどう思ってる?」


三上さんが今度は私に尋ねる。


「私も同じ気持ちです。自分の口でしっかり伝えたいと思っています」


私たちの決意の表情を見て、三上さんと東堂さんは少し考えたすえ、頷いた。


「分かったよ」


東堂さんも続けて言う。


「こっちは、こっちでマスコミに発表しておくよ」

「ああ、頼んだぞ」


たくさん迷惑をかけてしまった。


本来だったら無理やり別れさせられているはずなのに、三上さんと東堂さんはこうして世間に公表することを許してくれた。

しっかり向き合わなくちゃ。


許してくれた、その分これからも頑張っていくために。不安はある。だけど、蓮と一緒だから大丈夫だ。



【西野花、白羽蓮真剣交際。緊急会見】



それから3日後。

私たちの記者会見が始まった。


記者会見をすると発表してからテレピやニュースで取り上げられ、ネットでも大きな反響が出ていた。


もちろん、悪い意見もたくさん出てきた。

今後の流れがどちらに向かうかは今日、この日で決まる。


「たくさん来てる……」


会見の裏から来ている人をみると、想像以上に多くの人が集まっていて、手が震えた。


どんなことを言われても、どんなふうに思われても耐えなくちゃいけない。

何聞かれるんだろうって、少し怖くもある。


でも……。


「大丈夫、俺がいるから」

「うん!」


蓮が側で笑ってくれるから、不思議と不安はどこかに行ってしまった。


「では、白羽蓮くんと西野花さん。お願いします」


司会者の人がそう呼びかける。


「行こう花」

「うん」


先に歩く蓮の後ろに私も続いた。


いつも以上に蓮がたくましく見える。

たくさんのシャッターが切られる中、用意されるイスヘと座った。


蓮がマイクを持つ。


「本日は私たちのためにお集まり頂き、ありがとうございます」


マスコミの人の鋭い視線とともに、カメラのシャッター音が鳴り響く。


「今日は全てをお伝えしようと思っています」


蓮は堂々とそう伝えた。


「俺と西野さんはみなさまもご存知の通りお付き合いをしています」


フラッシュがまぶしく光る。

緊張感は凄まじい。


そんな中でも蓮はリードして話しをしてくれた。


「初めてスクープを取られた時、俺たちはお互いの仕事のために別れる決意をしました」


苦しかった。


離れている間。


「別れた後も仕事をこなしていく中でたくさん花さんとのことを考えました。仕事をこれからもしていくのであれば、別れた方がいい。それは分かっているけれど、俺はどうしても花さんを忘れることが出来なかった」


思い出す、苦しかったあの時を。

たくさん泣いて、たくさん蓮を思った。


もうあの時には戻りたくないと思うけど、あの時のことがあったからこそ私たちは強くなれた。


「でも……いくら時間が経っても、彼女を忘れることは出来ませんでした」


蓮の声を周りにいる人たちみんなが、じっと聞いている。


テレビを見ている人、私たちのファンの人に上手く伝わるだろうか。


「俺の仕事は俳優です。この仕事をしている限り1番に取らなくてはいけないのは仕事だって分かってます。それなのに突き通すことが、できませんでした」


自分の気持ちに嘘をついて、縛り続けるのは本当に苦しいことだった。


嫌いだと言って突き放して心は好きだと叫んでる。


苦しかったよね。

本当に。


「その気持ちが俺だけじゃないんだって分かった時、どうしてふたりして心にウソをついて、思いあっていたはずの時間を無かったことにしなきゃいけないんだろうって思ったんです」


自分の心にウソをつき、叫びだす心を救ってあげられるのは自分しかいないのに、その自分が心を傷つける。


ボロボロになっていくことも、見えなくなって気づけばどんどん沈んでしまう。


「大事なものを守るのに、ひとつを選んで一方を切り捨てないといけない。でもそれだったら俺は、いつまでも自分しか守れない」


彼は強い眼差しでそう伝えると、深くゆっくり深呼吸をした。


「彼女と付き合うと決めた日から彼女も守っていくと誓いました。それなのに、自分のために何かを捨てる……そんな自分ではいたくない。俺は……俺は仕事もして、彼女も守ります」


彼のその言葉を聞いた時、私の目から涙が零れ落ちた。


彼の覚悟や決意。

真剣さが伝わってきて、涙を流さずにはいられなかった。


ああ、この人を好きになって良かった。

私は本当に幸せものだ。


「熱愛の真意について、そして互いに仕事を今後も受けさせていくことにあたっての覚悟をお話すべきだと思い、今回、記者会見を開くという形で皆樣に本当のことをお伝えするきっかけをいただきました。今言ったことにウソはありません。今後も花さんと共に頑張っていきたいと思います」


すると、会場からバチパチと拍手が沸き上がる。


その拍手はやがて大きくなっていき、会場の緊張感は柔らかなものになった。


それからは、記者の人の質問タイムが始まり、いつ頃から好きになり出したのかとか、好きになったきっかけは何だったのか、とかまさにカップルに投げる質問がたくさん寄せられた。


会見が始まった時のマスコミの空気は冷たかったけれど、蓮の言葉を聞くにつれ段々それが変わっていくのがわかった。


「では花さん、蓮くんの好きなところを教えてください」

「あ、はい……えっと、白羽くんは……本当に仕事熱心で、温かくて、ぶっきらぼうなところもありますが、それでも優しいところ、です。私の心が折れそうな時、何度も救ってくれました」


って、恥ずかしすぎるよ……。


「いいですね~」

「それじゃ、蓮くんはどうでしょう」


「はい。彼女はクールな印象を持たれがちですが、不器用でありながらも自分より周りを考える優しく温かい方です。また、仕事に対する真摯な姿勢に影響を受け、僕自身の原動力になっています」


「ありがとうございます。こちらも幸せな気持ちになりますね」


記者会見は、和やかな雰囲気で話すことが出来た。


「ではお時間になりましたので、この辺でしめさせていただきましょうか」


司会の人が言う。

私と蓮は立ち上がり、真っ直ぐカメラを見つめる。


「本日はお集まりいただき、本当にありがとうございました」


私たちは深々と頭を下げると、記者会見は終了した。

伝わっただろうか、私たちの気持ちや決意。


「緊張、した……」


私たちが楽屋に戻ってくると、すみっこで見ていたという東堂さんと三上さんが出迎えてくれた。


「ありがとうございました」


三上さんと東堂さんにもお礼を述べると、三上さんは私の肩をポン、と叩く。


「本当によく頑張ったね」


しかし、東堂さんは何も言わなかった。


もしかして、怒ってる?


そう思った瞬間、彼はつぶやいた。


「すげーな。普通言えるか?世間の目が好奇に晒されてるってわかってて、仕事も女も守るなんて……」

「東堂のヤツ、横で泣いてたからね」


「えっ!」


東堂さんは別に泣いてねえし、と言いつつ目は赤く充血している。


「俺はお前のこと、見くびってたよ。俺の想像よりもはるかに成長してる。本当恐ろしい男だよ、白羽蓮って男は」

「褒めすぎだろ」


蓮は褒められて恥ずかしくなったのか、ふいっと顔をそむけた。


「ふふっ、彼みたいな男はきっと大物になるだろうなあ」


大物か……。

見てみたい、彼が輝くその姿を。


「正直花ちゃんの相手が蓮くんで良かったよ。蓮くんの誠意、ちゃんと伝わった」


にっこり笑う三上さんは蓮を見た後、私に視線を移した。


「……三上さん」

「やっと言えるね、花ちゃん」


彼はそう言うと、右手を差し出した。


「幸せになってね」


たくさんの人に支えられて、私達はもう一度、ふたりで手を取ることが出来た。


お仕事だって、恋愛だって。

何ひとつ捨てない選択が出来たのは周りのサポートのお陰だ。


「これからも精一杯頑張ります」


目に涙をためながら、私は三上さんと握手を交わした──。


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