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闇の中、意識が浮かんでは沈む。 モルグはどこか“冷たい”場所に投げ出されていた。
(……ここ、は……?死んだ……?)
目の前には、森の中で怯えていたころの自分――
“陽斗”だった頃の姿が、無表情で自分を見下ろしていた。
「結局、俺、お前もこうなるしかなかったんだな。」
「や……やめろ、やめてくれ……」
過去の自分が形を歪める。
溶けたキノコ、腐った目玉、ぐちゃぐちゃの肉塊になりながら、嘲るように囁く。
「無駄だったろ?人間でもキノコでも、結局“終わる”だけさ。」
場面が一変し、操られた村人たちが現れる。
皆、真っ白な目と歯のない同じ顔で…。
「なんで気付かなかった、なあ?」 「俺たちははじめから魔物――お前と同じだよ。」 「お前だけ“人間ぶる”なよ。仲間になれよ。」
彼らは腐った手や獣の爪で、モルグの身体を引き裂こうとする。
「やめて!近寄るなあぁ!」
逃げようとしても体は動かない。
村人たちの声はだんだんゾルグのものに溶けていく。
ゾルグの姿が現れ、口をゆがめて嗤う。
「ほら見ろ、“命を与える者”だ。お前の命なんて、いくらあっても余計なだけだろ?」 「お前の痛みも絶望も、すべて俺のものだ。もっと声を上げろ、惨めになれ!」
ゾルグの命令ひとつで、操られた住人、百足、犬――無数の生き物が群がり、モルグの身体を引き裂き、踏みにじる。
「うあぁあぁああッ!やめろ、俺は死にたく――」
どこからともなく、かつての職場の上司の声が聞こえる。
「何もできないお前はクズだ。ここでも社会のゴミだなあ?」
「うそ、うそだ……もうこんな世界いやだ……!」
無数の手・爪・牙がモルグの肉体も心も切り刻む。
終わることのない痛み。感情も塵のように砕け散り、どこにも逃げ場がない。
ふと横を見ると、操られた王様がこちらをじっと見ている。
「助けてほしい?だったら――お前が全部引き受けろよ。助ける価値があるのか?」
村人全員が一斉に罵声を浴びせる。
「お前はキノコだ、役立たず!」 「誰からも必要とされていないんだ、ここで消えてしまえ!」
(やめろ、やめてくれ……俺は……俺は……!)
闇の中で、ゾルグがささやく。
「お前の世界に救いはない。“命を与える”とは、終わりなく苦しみを繰り返すことだ。」
「や、だ……もう、終わりでいい……」
どこまでも続く悪夢。骨の髄まで痛めつけられ、希望の光すら見えない。
そしてまた、モルグは黒く沈む奈落へと沈んでいく。
全てが砕け、絶望だけが残る――
それが、モルグの“命”の在りかだった。