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つられたアタシもヤツの目線を追って、そして驚愕する。
校舎の玄関前には軒がついている。
その上に、人影がユラリ。揺れているのが分かったのだ。
「ななな七不思議のななな七つ目!」
「げげげ玄関に落ちてくる女生徒!」
アタシたち2人はその場で腰を抜かした。
人影は軒の上で軽やかに跳ねている。
スラリとした体躯。伸びた襟足が夜空に舞う──どこかで見たシルエットだ。
「えっ、待って?」
アレ、有夏チャンじゃないか?
そう気付いた瞬間、バカは軒から飛び降りたのだ。
シュタッと軽やかに校舎の玄関前に着地すると「2階の窓から出てきた」なんて言う。
えっ、何ですか?
1階の窓から入って、階段上って2階の窓から出るのがアンタの探索経路なんですか?
「あっひゅうぅぅぅ……」
ヘンな声をあげて、幾ヶ瀬がゆっくりと倒れた。
有夏チャンがとっさの反応で避けたものだから、ドシンと音を立てて幾ヶ瀬は地面に倒れ伏す。
ひ、人が失神するとこ初めて見た……。
カメラの向こうで、怨念チャンネルの主催者は泡を吹いている。
グーグーと、すさまじいイビキをかき始めた。
えっ、失神した直後にイビキをかくってヤバイんじゃ?
「ちょっ、胡桃沢さん(今更だが「胡桃沢」とは有夏チャンの苗字なんだよ!)この人、どうしたら……」
有夏チャン、急に我に返ったみたい。
「しまった!」と叫んだはいいが、さすが有夏チャン。
ヤツの「しまった」は意味が違った。
「深夜アニメの録画忘れてた!」
言うが早いか、見たこともない軽やかな身のこなしで駆けていったのだ。
えぇ……? ブレねぇにも程があるよ、有夏チャン。
仮にも彼ピ(?)が、死にかけ(?)っていうのに、深夜アニメを優先したよ。
ある意味、今夜一番のホラーかも、この人。
イビキをかきながら失神してる幾ヶ瀬を見下ろす。
この攻めの人……可哀想すぎるじゃねぇか。