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#日常組BL
藍乃
100
#○○の主役は我々だ!
二酸化炭素
1,164
991
pnkr
カンザキイオリ様の楽曲、「あの夏が飽和する」の曲パロです。
展開には、個人的な解釈が含まれますのでご注意下さい。
また、捉え方によってはBL要素も含みます。
死ネタ有り。
・ ・ ・
「昨日人を殺したんだ」
クロノアさんはそう言っていた。梅雨時だというのに傘も差さなかったようで、ずぶ濡れのまんま俺の部屋の前で泣いていた。それだけでなく、夏が始まったばかりというのに彼はひどく震えていた。
そんな話で始まる、あの夏の日の記憶だ。
「殺したのは隣の席のいつも虐めてくるアイツ。いつもみたいに呼び出されたけど、もう嫌になって肩を突き飛ばして、打ち所が悪かったんだ。もうここには居られないと思うし、どっか遠いとこで死んでくるよ」
そう言ったクロノアさんに俺は言った。
「それじゃ、俺も連れてってください!」
財布と、ナイフを持って、お気に入りの携帯ゲームもカバンに詰めて。
いらないものは全部、壊していこう、って意気込んだ。
あの写真も、日記も、死ぬって決めた今ならもう要らない。
人殺しとダメ人間の、クロノアさんと俺の、旅だ、何て思って、少しワクワクしていた。
そして俺らはこの狭い世界から逃げ出した。家族もクラスの奴らも何もかも全部捨てて君と2人で。
遠い遠い誰もいない場所で2人で死のうよ、と思っていた。もしクロノアさんが捕まったら、俺の世界に価値が無くなるから。
この世に人殺しなんてそこら中に湧いてるじゃんか。俺だって人殺しになるかもしれないし、たまたまクロノアさんがなっただけで。だから、クロノアさんは何も悪くないよ。クロノアさんは何も悪くないんだ。
結局俺らは誰にも愛された事なんて無かったんだよ。そんな嫌な共通点で簡単に信じ合った。でも、そのおかげで今ではクロノアさんの考えが手に取るように分かる。
今だってそう、クロノアさんの手を握った時の微かな震えは既に無くなっていて。もうこの人はこの旅を楽しんでるんだろうな、何て思った。
誰にも縛られなくなった俺たちは、2人で線路の上を歩いた。今思うと相当な悪ガキだったと思う。お金が尽きたら盗んで、2人で逃げて、何処にも行ける気がしたんだ。そこまでしちゃったら、今更怖いものは、俺らには無かったんだ。
「炎天下の中走り回ったせいで浮かんだ額の汗だって、逃げる時に落ちた眼鏡だって、ね?クロノアさん」
「そうだね。今となっちゃどうでもいいよ。あぶれ者の小さな逃避行の旅なんだから」
「いつか夢見た優しくて誰にも好かれる主人公なら、汚くなった俺たちをちゃんと救ってくれるのかな?」
「バカ言うな、ぺいんと。そんな夢ならとっくに捨ててる。だって、現実を見ろよ。シアワセの4文字なんて無かっただろ?今までの人生で思い知ったじゃないか。
自分は何も悪くねぇって、誰もがきっと思ってる。俺が殺した奴らも自分が悪くないのになんでってきっと思ってたよ」
8月も終盤に差し掛かっていて、当てもなく彷徨う蝉の群れに、水も無くなり揺れ出す視界に、バカみたいにはしゃぎ合った。どうしようも無い事は分かっていたけど無性に楽しかった。
昔、クロノアさんと一緒に行った海辺まで来た時、ふと、彼はナイフを取った。
「ねぇ、ぺいんと。君が今まで側に居たから俺はここまで来れたんだよ。1人じゃ、とっくに捕まってた。だから、もういいよ。死ぬのは俺1人でいいよ」
「は⁈どう言う事ですか。勝手に死ぬなんて許さない。俺も、一緒に…」
「ぺいんとは、まだ何もしてないだろ。まだ、生きれる。俺は、もう無理だから。だから、ぺいんとは生きて、生きて、生きて、そして死ね」
俺が抗議の声を上げる暇もなく、彼は首を切った。
まるで何かの映画のワンシーンで、白昼夢を見ているようで、俺は目の前で起こった事を信じられなかった。
気付けば俺は捕まっていた。俺だけが。君が何処にも見つからなくって、君だけが何処にも居なくって。
そして時は過ぎていった。ただ暑い、暑い日が過ぎてった。家族もクラスの奴らもいるのに何故か君だけが何処にも居ない。そんな事実に目の前が真っ暗になった。
大人になった今でもあの夏の日を思い出す。俺は今も、今でも歌ってる。君は決して死んでなんかいない、そう信じているから君をずっと探しているんだ。一目でいいから、もう一度、その姿を見たい。あの時聞かずに居なくなっちゃったから、君に言いたいことがあるんだ。
9月の終わりにくしゃみして、6月の匂いを繰り返す。そんな夏が毎年来ては、過ぎて行く。
クロノアさんの笑顔は、あの時の無邪気さは、頭の中を飽和している。いつでも俺の頭の中にある。
あの時の俺はクロノアさんを分かった気になっていて、クロノアさんに自殺願望があるものだと思っていた。でも、今思えばそれは違ったのかもしれない。
誰も何も悪く無いよ。皆、必死に生きようとしてるだけなんだ。クロノアさんは何も悪くは無いから、もういいよ投げ出してしまおうって言って欲しかった、止めて欲しかったんだろう?
なぁ_?
コメント
1件
藍乃さん、読了しました。 もうね、胸がぎゅーって苦しくなった…。ぺいんと君がクロノアさんを「分かってる」つもりでいて、でも本当は違ったんだって最後に気づくところ、すごく切なかった。2人だけの逃避行が全部終わって、大人になった今もあの夏が飽和してるって、重いけど温かい何かを感じたよ。 続きがすごく気になる…!