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何もかもがさ、完璧だったんだ
新しい年の幕開けがこんなにも楽しくて
乾杯で飲んだビールも美味しくて
料理も最高で
今日を逃したらまた暫くは会えない先輩たちともいっぱいお話出来て
めちゃくちゃ楽しかったなぁ
楽しいからさ、ついつい飲み過ぎて
………
……………
………………
………………あれ?
何か真っ暗だ
ゆらゆらゆらゆら身体が揺れる
どこかで感じたことのある匂いもする
「ーーーー起きた?」
真っ暗なのは目を閉じていたから
ゆらゆら揺れているのはおぶられていたから
聞き馴染みのある声は……
「ん…蓮?」
ぼんやりと声をかけると
「うん。暴れないでね、落としちゃうから」
返ってきたのはぶっそうな言葉
大人しくおぶられる事にした俺は、状況が全く見えない
「俺、どしたの?」
「酔っ払って寝ちゃったから、俺がお持ち帰りしました」
「お持ち帰り…なんか嫌だな」
「嫌なの?」
「………………」
嫌だよ
最悪だよ
2人きりなんて
「どこ行くの?」
「俺んち」
「蓮とこ?起きたから俺帰れるよ」
「ダメ。もう遅い。到着です」
間が悪くない?俺
もっと早くに目覚めるか
朝まで目覚めないか、が良かったよ
なんで蓮のマンションの
それも部屋へ向かう通路を歩いている時に目が覚めるかなぁ
蓮は俺をおぶったまま
ポケットから部屋の鍵を取り出した
鍵を開けて扉をあけると
キャンキャンっと甲高い犬の鳴き声が出迎える
動体感知センサーのついた照明を設置しているのか、扉を開けた瞬間から玄関が明るい
その姿を見て
「モコちゃ〜ん」
俺は思わず手を伸ばす、が…届くはずもない
普段より高い目線
「下ろして、今すぐ」
「ちょ、暴れないで」
本当に落ちそうだったのか
蓮は直ぐ様屈んでくれたが、床に足が着いた途端ガクンっと
脚に力が入らず、俺の身体は傾いた
不意をつかれた蓮を下敷きにそのまま崩れ落ちる
俺、やっぱり酔ってんのかな?
脱走防止の柵越しに『遊んでるの?』と言いたげなキラキラな瞳を向けてくる蓮の愛犬モコちゃんと目が合った
マジ可愛いんですけど♡
蓮を押し潰したまま
さっきよりぐんと近付いたモコちゃんとの距離
柵の隙間から手を伸ばし、モコモコの毛に辿りつく刹那ーーーー
「おりゃっ」
「ふへ?」
逆襲にあいました
蓮が勢いよく体勢を戻したため、背中に乗ってた俺は反動で跳ね返り…
ゴンッ
「いッぁぁぁ」
哀れ
玄関扉に勢いよく頭をぶつけましたとさ
あまりの痛さに両手で後頭部を押さえる俺
人様の家の玄関口で、なにやら腹筋途中みたいな姿勢なんですけど
なにコレ?
コメディ-w-w
痛いのに笑いたい
すんごい音がしたせいか
「うわ、ごめん」
慌てた蓮が体勢をかえて
俺の手ごと頭を押さえにきた
俺よりちょっと冷たい手
大きくてさ
繋ぐとね
離したくなくなるぐらい安心出来るの
あ〜やだやだ(3回目)
本当…やだ…
痛い
泣きたい
笑いたい
感情ぐっちゃぐちゃ
焦りと心配が一緒になった蓮の顔
こんなに近いのいつぶりだっけ?
あんま見ないよう
あんま近付かないようにしてたからなぁ
じわぁっと視界が歪んでいった
涙腺が崩壊するのが分かる
自分で思っていた以上に我慢してたんだな
だから嫌だったんだ
お前に近付くの
瞼を閉じて
ぽろりと涙が落ちて
一瞬だけクリアになった向こう側で
蓮が息を飲むのが分かった
「そんなに、痛い?」
心配そうな声色
大好き
「うん。痛い。むっちゃくちゃ痛い」
心配そうな表情も
大好き
「ハハッ笑っちゃうぐらい痛い」
笑ったら
また涙が溢れていく
そんな俺を蓮はぎゅっと抱き締めてくれた
壊れ物みたいにそっと
蓮の温もりが、匂いが
余計に涙を誘って止まらなくなるのに
「ねぇ、なんで…俺の事、避けてたの?」
多分、これが聞きたくて連れて帰ってきたんだろうな
「………バレてたか……」
「いや、普通に気付くし…俺のことバカにしてる?」
「……してない…が、究極の鈍感だと思ってーーーー痛い痛い痛い」
鈍感だと言った瞬間、ぎゅっと
優しく抱き締めていた腕に力がこもって…プロレスの技みたいになって、思わず背中をタップする
「ちゃんと答えて。これでも俺、傷付いてるんだからね」
そうか
傷付いてたか
口調がただの可愛い後輩になってるぞ
今ならまだ
幾らでも誤魔化せる気がした
本心を口にしなければ
しないことが良い事もあるし
でも確実に俺たちの間には溝が出来るだろう
幻滅するかな?
本当の事を言ったら
もういっか
もう、いいよね?
蓮の肩口に顎乗せてる状態だから顔も見えないし
でも俺はちょっとだけ卑怯な手を使おうと思う
「……これはさぁ、酔っ払いの戯れ言だと思って」
困らせる結果になったら
酔って何にも覚えてないフリしよう!!
そう思うのに…
なかなか言葉にならなかった
いざ口にしようと思ったら
また涙が溢れだして、なんて言っていいのか分からなくなって
寂しい?
行かないで?
色んな言葉がぐるぐるして
なのに
最初に口をついて出たのはーーーー
「…大好きだよ…」
カメラが回っている時にいつも言ってる言葉
何度も何度も、口にしてきた言葉だった
だってそれが根本なんだよ
大好きだから離れるのは寂しい
大好きだから行ってほしくない
頑張れも本当
寂しいも本当
大好きも本当
全部が本当の気持ち
「蓮が、大好きだよ」
「…………」
「大好きだから、寂しいんだよね」
「…………」
「俺ね、俺もね、頑張ったんだよ」
沈黙なのは、ちゃんと聞こうとしてくれているから
「いっぱい、いっぱいね、頑張ったの
頑張って、主題歌とってきたのに…
いないんだもん
いなくなっちゃうんだもん
一緒に歌いたかったなぁ
観て、欲しかったなぁ………」
堰を切ったみたいに溢れ出る言葉たち
蓮はもう一度、俺の身体をぎゅっと抱きしめてから、脇に手を入れて密着していた俺の身体を引き剥がした
涙で滲んでるけど分かる
辛そうに歪んだ顔
「アハ…だからヤダったのに」
辛そうな蓮の頬にそっと触れる
ぺちぺちって
「頑張れって気持ちだけ、贈りたかったなぁ」
「佐久間くん…」
「ごめん、とか言わないでね」
ちゃんと笑えるかは分からないけど、笑ってみせた
「分かってるから
ちゃんと
見てきたから
蓮の努力、全部知ってるから
真っ直ぐに努力する姿がね
俺、一番好きなの」
笑えてるかな、ちゃんと
涙は止まらないけど
カッコ悪いけど
笑えていたら良いなぁ
「佐久間くん」
いつもより優しい声で名前を呼ばれたと思ったら、蓮の手が俺の頬に触れた
涙を拭うように親指がなぞる
涙で歪んだ視界だからではなく、近付き過ぎて輪郭がとらえきれない
ん?
あれ?これって?
キスされるかも、と思った瞬間ーーー俺は咄嗟に蓮の唇を手で塞いだ
急展開過ぎるだろ!!
手に触れた唇の、その感触だけで、ぶわっと体温が急上昇する
唇を塞いだ手を退けて
「佐久間くんの好きはこっちの好きじゃないの?」
ムッとしているというか
ちょっと拗ねた顔が…なんか可愛い
「いや、そう…そう、なんだけど」
「じゃ、いいでしょ」
いいのか?
いや、ダメだろ!!
それに
それにーーーー
「いや、あの…見てるから!!」
そう、忘れないで
お前の可愛い天使の存在を
俺も忘れそうになったけど
微かに「くぅ~ん」と聞こえた気がしたのよ
うん、多分
急展開に動揺したとかじゃないから
キスぐらい
メンバーともしたことあるし
30歳超えてそんなねぇキスぐらいで動揺ってねぇ、アハハハ
蓮はハッとしたように振り返った
脱走防止の柵の向こうで
大人しく待ってる
大きく吠える事もなく
キラキラのお目目をこちらに向けて
『何してる?早くこっち来ないの?』て
首傾げたりなんかしてーーーー
てか、玄関口で何してんの…俺らは!!
一気に現実に引き戻されて
蓮は咳払いを一つ
「家、上がってく?」
そんな今さらな事を訊いてきた
いや
お持ち帰りしたならちゃんと中にいれてよ!!
✱.˚‧º‧┈┈┈┈┈┈┈┈┈‧º·˚.✱
続きます
ところでセンシティブってどこまでがセーフでどこまでがアウトなんでしょう?
線引きが分からない時はつけといた方が良いんでしょうかね