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#YJ
みー
1,309
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それからも、仁人は変わらなかった。
教室では笑っていたし、くだらないことで笑わせてくることもあった。
きっと、周りから見れば何も変わっていなかった。
でも俺には分かってしまった。
仁人が笑うたびに、少しだけ無理をしていること。
ひとりになった瞬間、その笑顔が消えること。
夏休みが近づいていた
蝉の声が聞こえる帰り道
隣を歩く仁人は、いつもより静かだった。
「勇斗」
「ん?」
「俺ってさ」
珍しく、仁人の方から話しかけてきた。
「何?」
「……いや」
そこで止まる。
まただ。
仁人はいつも、あと少しのところで言葉を飲み込む。
「言ってよ」
初めて、少しだけ強く言った。
仁人は驚いた顔をして、そして小さく笑った。
「勇斗は変わったね」
「何が」
「前より、俺のこと見るようになった」
胸が痛くなった
もっと早くそうしていればよかったと思った。
「仁人」
「ん」
「俺じゃ頼りない?」
仁人はすぐに首を振った。
「違う」
小さな声だった。
「勇斗は、ちゃんと優しいよ」
そう言ったあと、仁人は少しだけ黙った。
「でも」
「……」
「優しい人ほど、困らせたくなくなる」
その言葉を聞いた瞬間、何も言えなくなった。
仁人はきっとずっとそうだった。
自分が苦しいことより、誰かが困ることの方を怖がっていた。
「仁人」
「ん」
「俺は困らないよ」
そう言うと、仁人は少しだけ目を伏せた。
「ずるいよ、」
笑った。
でも、その笑顔は泣きそうだった。
初めて見た。
仁人が、笑顔を作れなくなる瞬間。
目に溜まった涙を隠すように、顔を背ける。
「ごめん」
「また謝る」
「癖なんだと思う」
その言葉が苦しかった
仁人は、自分のことを後回しにすることに慣れすぎていた。
「勇斗」
「ん?」
「もしさ」
仁人が空を見上げる
「俺がいなくなっても、忘れないで」
冗談みたいな声だった
だから余計に怖かった
「何言ってんの」
笑って返したかった
でも、できなかった。
仁人はすぐにいつもの顔に戻る。
「なんでもない」
またその言葉。
俺は何度も聞いてきた
でも、その日はなぜか胸に残った。
夏休み明け
仁人は、学校に来なかった。
次の日も
その次の日も
いつもなら気にするようなことじゃなかったはずなのに、 嫌な予感だけが消えなかった。
その後、
仁人がもう戻ってこないことを知った。
信じられなかった
教室に行けばいつもの席に座っていて、
「おはよう」って笑って、
そんな気がしていた。
でもそこに仁人はいなかった。
放課後
誰もいない教室で、俺は初めて泣いた。
声を出して泣いた。
あの日、
仁人が泣くのを隠したみたいに。
俺も隠せると思っていたのに
無理だった。
悔しかった
苦しかった
もっと早く気づけばよかった
もっと強く手を伸ばせばよかった。
仁人が隠していた痛みまで
俺が全部、受け止めたかった。
コメント
1件
うわあああ第3話、心臓ぎゅーってなったよ…😭💔 「優しい人ほど困らせたくなくなる」の仁人の言葉、グサッときた。勇斗が気づいても間に合わなかった後悔、最後の泣き声が響いてくるようだった…。 もっと早く手を伸ばせたかもしれないっていう切なさ、めっちゃ刺さる。ゆさんの書く静かな感情の揺れ、本当にエモいです…!次、どうなるんだろう…(まだ続くのかな?)