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「――では、来月の社会科見学について説明する。」
教室の前に立った担任が、黒板に大きく文字を書いた。
その瞬間、教室のあちこちから小さな歓声が上がる。
「社会科見学?」
「どこ行くんだろ。」
「県外だったりして!」
そんな声が飛び交う中、私は静かに黒板を見つめていた。
先生がチョークを動かす。
一文字。
また一文字。
そして――
〔 ヨコハマ 〕
黒板に書かれたその文字を見た瞬間。
『……え』
胸の奥が、大きく揺れた。
ヨコハマ。
知っている。
……いや。
知らない。
私はヨコハマに行ったことがある。
でも。
少なくとも、今の私の記憶には存在しない。
なのに。
その地名を見ただけで、心臓が一度だけ強く跳ねた。
「夜凪ちゃん?」
隣の席から声を掛けられる。
『……あ、何でもないよ』
「顔、ちょっと怖かったよ?」
『そうかなぁ?』
「うん。」
私は笑って誤魔化した。
『たぶん、ヨコハマって聞いて驚いただけだよ』
「なんで?」
『うーん』
『分かんないや(笑』
自分でも分からなかった。
「今回の社会科見学では、ヨコハマ市内の歴史的な施設などを巡る予定だ。」
先生が説明を続ける。
「班ごとに行動する時間もあるからな」
「詳しい日程は後日配布するから、それまでに班を決めておくように。」
教室が一気に騒がしくなる。
私は配られた資料へ目を通す。
ヨコハマ。
港。
歴史。
異国文化。
いくつもの観光名所が写真付きで紹介されている。
その中に、一枚の海の写真があった。
――まただ。
無能@活動休止中
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無能@活動休止中
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#呪術廻戦
無能@活動休止中
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胸が痛む。
写真の中の海は、ただの海。
それなのに。
どうしてこんなに懐かしいのだろう。
『……』
指先で写真の端をなぞる。
その瞬間。
頭の奥に、何かが浮かんだ。
――波。
――月。
――誰かの声。
【夜凪】
『……っ』
反射的に目を閉じる。
だが、何も思い出せない。
声の主も。
その場所も。
何も。
「夜凪?」
『……大丈夫』
また同じ言葉。
大丈夫。
そう言ってしまえば、何も問題はない。
夜。
「ヨコハマへ行くのね。」
夕食の席でそう告げると、栞はほんの少しだけ箸を止めた。
『うん。社会科見学』
「……そう。」
『お母さん?』
「何でもないわ。」
栞はいつものように微笑む。
けれど。
私は気付いていた。
ほんの一瞬。
栞の目が、私ではなく遠くを見ていたことに。
『ヨコハマって、そんなに遠かった?』
「近いわよ。電車でもすぐに着く隣町でしょう?」
「横浜は平和でいいわね」
「争いごとは滅多に起こらないもの」
お母さんは”普通”の横浜と勘違いしてる
『そうじゃなくて』
『魔都のヨコハマの事よ』
沈黙。
ほんの数秒。
それだけだった。
「…なにかしらそのヨコハマって?」
「はじめて聞いたわ」
嘘だ。母は嘘をつく時、目を細める。
「そのヨコハマがどうしたの?」
『お母さん。ヨコハマの事知ってるよね』
「どうしてそんなこと聞くの?」
『うーん。なんとなく、かな』
栞は少し考えるように目を伏せる。
そして、優しく笑った。
「確かに知っていたわ」
「でも、もう忘れたわ」
『……そっか』
まただ。
昔の話になると、お母さんはいつもこう言う。
私はそれ以上聞かなかった。
夜。
ベッドに横になっても眠れなかった。
窓の外には月。
昨日よりすこし欠けている。
静かな夜。
なのに。
今日は違う。
頭の中に、知らない景色が浮かんでいた。
夜の海。
街の灯り。
誰かの笑い声。
そして――
『……誰?』
問い掛けても、返事はない。
ただ胸の奥に残る。
懐かしさだけ。
私は目を閉じた。
ヨコハマ。
すぐ近くにある、訪れたであろう街。
なのに。
なぜか私は、
その街が私を待っているような気がした。
第弐話終了しました。
最初は修学旅行で行こうかと思いましたが、
結局は社会科見学として行かせることにしました。
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コメント
1件
おお〜第4話読んだよ!!✨ ヨコハマの地名だけで心臓が跳ねる主人公、めっちゃ気になる展開すぎる……!! 「知ってるけど覚えてない」って感覚、すごくエモいし、栞さんが一瞬見せた遠い目とか「もう忘れたわ」の嘘の仕草がもう…! 何か隠されてる感がたまらん😭💕 次回、ヨコハマでの記憶のカケラがどう出てくるのか待ちきれないよ〜🌸