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次の日の放課後。
🖤は迷わなかった。
クラスの友達に「今日遊ばないの?」と聞かれても、
「ちょっと用事あるんで」
と軽く笑って教室を出る。
向かう先は、もう決まっている。
図書室。
静かな空気。
差し込む夕陽。
そして、窓際。
——いた。
💙は昨日と同じ席で、本を読んでいた。
なぜか、それだけでほっとする。
「先輩」
顔を上げる。
「あ……また来たの」
少しだけ、昨日より驚きが少ない。
「来ちゃダメでした?」
「……別に」
その言い方が、優しく聞こえる。
🖤は自然と笑った。
「先輩って、いつも一人なんですか」
いきなり踏み込みすぎたかもしれない。
💙はページをめくる手を止める。
「一人が楽だから」
嘘ではない。
でも本音の全部でもない声。
🖤はそれをなんとなく察する。
「俺も、ここだと楽です」
ぽつりと本音が出た。
💙が少しだけ目を見開く。
「……なんで?」
「先輩、俺のこと特別扱いしないから」
笑って言うと、
💙は困ったように眉を下げる。
「特別扱いされたいの?」
「されたくないです」
即答だった。
「俺、普通でいたいんです。ここでは」
その言葉に、💙は何も言わなかった。
でも。
ほんの少しだけ、距離が縮まった気がした。
沈黙のあと。
🖤はふと思う。
「先輩、名前なんですか」
「……今さら?」
「ちゃんと呼びたい」
少しだけ迷ったあと、💙は自分の名前を名乗る。
静かな声。
🖤はその音を心の中で何度も転がす。
「いい名前ですね」
「普通だろ」
「俺は好きです」
さらっと言ったつもりだった。
でも💙の耳が赤くなる。
(あ、可愛い)
胸がぎゅっとなる。
その瞬間、はっきり分かった。
自分はもう、この人を「気になってる」だけじゃない。
その日は偶然、校門で一緒になった。
「先輩、駅まで一緒に行っていいですか」
「……好きにしろ」
並んで歩く。
沈黙が続くけれど、不思議と気まずくない。
夕焼けが、二人の影を長く伸ばす。
「先輩」
「ん?」
「俺、また明日も来ます」
少しだけ真剣な声。
💙は横目で見る。
「……来たければ」
許可でも拒否でもない。
でも、🖤には十分だった。
ベッドの上。
スマホを眺めながら、ふと思う。
今日も女子からメッセージが来ている。
でも、心は動かない。
代わりに浮かぶのは、図書室の光と、
少しだけ赤くなった耳。
(やばいな)
初めてだった。
誰かの隣に「行きたい」と思ったのは。
ただの興味じゃない。
これはもう、
始まりかけている。
静かで、でも確実な、
恋の前触れだった。