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風呂あがり、バスタオルを巻いたままの藍が、ドライヤーを持ってふらりとリビングに現れた。
「祐希さーん」
「なに?」
「髪、乾かして?」
「自分でできるだろ」
「祐希さんに、してほしいの」
しれっと言ってくるその姿に、石川はソファから立ち上がって、藍の前に立った。
「……ほんっと、お前俺にだけ甘えるよな」
「うん。祐希さんには全部出していいんでしょ?」
「……」
無言で受け取ったドライヤーをオンにして、石川は藍の髪に風を当てる。指先で優しくすくい上げながら、地肌までちゃんと乾くように。
「……きもちい……」
「あたりまえだろ。俺がやってんだから」
「やっぱ祐希さん、天才だ……」
「髪乾かす天才……? それ褒めてんのか?」
「褒めてる。だいすき」
「……もう。わかったから、じっとしてろ」
「ほんとにすき」
小さく呟いた藍の声はドライヤーの風に消えていった。