ちょうど時計の針が12時をむかえようとする頃、警視庁で6人は合流した。
「主任、今の事件に集中しようって言ったの誰ですか! ジェシーと高地も巻き込んで。身内だけでやるって言いましたよね」
早々、樹が食ってかかった。
「いや、一刻も早い解決が望まれるからな」と大我は胸を張る。
「こっちには手がかりがある。そっちは?」
「あります」と慎太郎が答えた。
「よし。じゃあデスクに戻って会議しよう」
いつもの部屋で、大我の机の周りに集合する。
「まずは俺らから。横領事件の捜査資料を、所轄に探しに行ったらあった。コピーを持ってきたんだけど」
持っていたクリアファイルから紙を取り出し、机の上に置いた。
のぞき込む6人。その内容を理解した各々は顔色を変えた。
「えっ?」
「これって…」
「名字一緒だけど」
そう、と大我は言う。「容疑者とされていたのは、森本巡査長。つまり慎太郎の父親にあたる人かな。警察官をされてたんだね。それで、担当していたのは京本警部。俺の父」
慎太郎が顔を上げた。その唇は小刻みに震えていた。
「…そんな、知らなかった…」
名前合ってるよね、と大我に問われ、うなずく。
「横領したらしいんだけど、警視庁が隠蔽したからこの弁解録取書までで止まってるんだと思う。釈放になってる。で、その後依願退職したって」
「ニュースにもなってないの?」
高地が訊いた。
「うん。ネットでも見たけど、ほとんどない。完全に闇の中。しかも慎太郎が生まれる前だろうから、知らないと思う」
「でも、これは今の警視総監の話ですよね? じゃあ、なんで元警視総監がいなくなってるんですか?」
ジェシーの声に、みんなは首をひねった。
「ここからは、俺たちが」
北斗が言って、自身のデスクに置いてあったパソコンを取ってくる。
「強盗殺人事件の現場付近に聞き込みに行ったら、男性に出会ったんです。散歩をしていたようで、話を聞いてみれば事件発生日もそのあたりを通りかかったと言っていました。そのとき、不審な車を見かけたそうです」
パソコンを操作し、防犯カメラの映像を呼び出す。
「これです。黒のセダン。ほら、今近くを通ったこの人が、話を聞いた男性です。で、この車内で男性2人が言い争ってるような様子を見たとか」
樹が続く。
「それで、Nシステムでこの車を運転してた人を調べてみたら、警察の関係者でした」
今度はその車の持ち主の免許証写真が画面に映し出される。それは、警察庁の元長官だった。
「鈴木元長官は、横領事件のあった当時の警察庁長官。元警視総監もそのときトップの地位にいた…」
高地が独りごつように言った。
「映っているのは、強盗殺人事件現場から近い住宅街。ちなみに出発した地点は、元長官の住所です。そこからまず元警視総監の自宅住所に向かい、その後事件現場付近を経由し、また元長官の自宅に戻っています」
「っていうことは…」
ジェシーが口を挟む。
「恐らく、元長官が元警視総監を拉致したんだろう。たぶん後部座席に座らせられてて、カメラには映ってない」
大我が言った。「よし。家宅捜索の準備だ」
みんなは一斉に返事をした。「はい!」
続く
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