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ノスの話、一応単体でも完結してますが、
私の頭の中では4部作になってました。
時系列順に、
ピザ紀行
↓
明日はないかもしれない
↓
繋がる鎖
↓
ディストピア
pizza guyとの出会いと別れがトラウマになってるという激重な設定ですが、最終的にはノスは幸せになってるのでいいかなと😅
というわけで。
見捨てられてFORSAKENに来たpizza guyの話です↓
『再会はピザの香りと共に』
夜のFORSAKENは、いつだって静かだ。
静かで、昏くて、どこか腐った薔薇みたいな匂いがする。
その中心。
豪奢なホールの玉座に座るスペクターは、ワイングラスを揺らしながら、退屈そうにため息をついていた。
「最近、平和すぎるねえ」
「スペクター様が平和を作っている側なのでは?」
アズールが書類をめくりながら冷静に返す。
「違うよ。私は“愉快”を作ってるんだ」
「最低」
ホスフォラスが笑う。
その時だった。
ホールの重厚な扉が――
ギギギギ……
と、不穏な音を立てて開いた。
全員の視線が向く。
現れたのは。
ボロボロの制服。
油の染みたエプロン。
そして。
焼きたてピザの乗ったトレイ。
「……は?」
アズールが素で言った。
男は辺りを見回し、眉をしかめる。
「なんだここ。新しい店舗のバックヤードにしちゃ、趣味悪すぎるだろ」
完全に場違いだった。
FORSAKENの空気と、
ピザの香りが、
致命的に噛み合っていない。
だが。
次の瞬間。
ホールの空気が変わる。
ノスフェラトゥが顔を上げた。
「……ッ」
赤い眼孔が見開かれる。
「お前は……」
男もまた、仮面の吸血鬼を見た。
三角の耳。
結んだ黒髪。
濃赤のマスク。
そして妙に行儀のいい姿勢。
「……あ?」
男は目を細める。
「その変な耳」
「……」
「ノスフェラトゥか?」
沈黙。
そして。
「如何にも!」
突然デカい声。
「私だ!!」
ホールに響く。
アズールがビクッとした。
ホスフォラスが笑い始める。
「うわ知り合い!?」
ノスフェラトゥは震えていた。
かつて。
終末世界で。
数ヶ月だけ奇妙に共存した男。
トマトを育て、
ピザを焼き、
吸血鬼に「野菜も食え」と説教していた異常人類。
Pizzaguy。
「まさか……この世界で再会するとは……!」
感動。
劇的再会。
因縁。
宿命。
そういう空気だった。
――はずだった。
Pizzaguyはノスフェラトゥを上から下まで眺め、
真顔で言った。
「お前、何してんの?」
「何?」
「なんでそんな綺麗に正座してんの?」
沈黙。
アズールが吹いた。
ホスフォラスはもう耐えてない。
「いや違うこれは――」
「その“待て”されてる犬みたいな姿勢」
「違う!!」
「えっ違うの?」
「これは高度な支配構造で――」
「腹減って動けないだけだろ?」
「違う!!」
だが。
その瞬間。
ぐぅ……
腹が鳴った。
ノスフェラトゥの。
最悪だった。
ホスフォラスが床を叩いて笑い転げる。
アズールは壁にもたれて肩を震わせている。
「ほら見ろ」
Pizzaguyは呆れたようにため息をつき、
そのままスペクターの前を素通りした。
FORSAKENの支配者、
完全スルー。
スペクターの目が丸くなる。
「……うん?」
そしてPizzaguyは、
ノスフェラトゥの前へしゃがみ込むと。
熱々のピザを一切れ持ち上げた。
「ほら、食え」
「なっ……」
「トマトは途中の庭から取った」
「勝手に!?」
アズールがツッコむ。
だがもう遅い。
ピザはノスフェラトゥの口へ突っ込まれた。
「むぐっ!?」
モグモグ。
沈黙。
モグモグ。
「……」
モグモグ。
そして。
「……美味い」
終わった。
吸血鬼として終わった。
ノスフェラトゥの顔が、
じわぁ……と緩む。
かつて一緒にいた頃。
トマト農園。
石窯。
焼きたての生地。
「焼けたぞー」と雑に呼ぶ声。
その記憶が一気に蘇る。
「…お前の作るピザは」
「生命力に満ちている……」
「また言ってる」
完全に餌付けだった。
その様子を。
玉座から。
スペクターが静かに見ていた。
そして。
くすり。
「ふぅん」
ゾクッ。
ノスフェラトゥの背筋が震える。
「あっ」
終わった。
今度こそ終わった。
「私の可愛い吸血鬼が」
スペクターは優雅に脚を組む。
「私の許可なく、別の男からご飯を貰っている」
「し、失礼いたしました主様!!」
条件反射。
ビシッ!!
完璧な土下座。
しかもピザ咥えたまま。
「身体が勝手に!! ピザの匂いが!!」
「言い訳が犬なんだよなぁ」
Pizzaguyが真顔で言う。
そして。
スペクターを見る。
「おい赤帽子」
ホール静止。
アズール停止。
ホスフォラス停止。
ノスフェラトゥ絶望。
「……今」
「マジシャンみたいな格好してんじゃねえよ」
「Pizzaguy!!」
「こいつ変な芸仕込まれてんだけど!?」
「違う!!」
「お座り完璧じゃねえか!!」
「違う!!」
「待てもできるし」
「違う!!」
「犬だろ、もう」
「違うッ!!!!」
スペクター。
数秒沈黙。
そして。
肩を震わせた。
「……ふ」
耐えている。
「ふふっ……」
耐えられてない。
「アハハハハハ!!」
爆笑。
玉座で爆笑。
アズールが呟く。
「スペクター様がこんな笑ってるの初めて見た」
ホスフォラスはもう呼吸できてない。
ノスフェラトゥは床で死にそうになっている。
「主様……っ、どうか誤解を……」
「いやあ」
スペクターは涙を拭う。
「君の古い友人、本当に面白いねえ」
「面白くない!!」
ノスフェラトゥは必死に訴える。
「この男はただの、『食材調達係』です!」
Pizzaguyが呆れたようにツッコミを入れる。
「お前も一緒にトマト農園の世話してただろ」
「へぇ、農園?」
スペクターがニヤニヤしながら言う。
「あとバジルとかじゃがいもとか」
「PIZZAGUY!!!!」
「だって本当だろ」
「言うな!!」
「ピザ食う時めちゃくちゃ嬉しそうだったぞ」
「やめろ!!」
スペクター、
完全にツボへ入る。
「ククッ……古代吸血鬼が農園……」
「忘れてください主様……」
「無理だなあ」
「無理ですか……」
絶望。
その時。
ホスフォラスがピザへ飛びついた。
「あっそれ食べたい!」
「ダメだ」
Pizzaguyが即答。
「なんで!?」
「これはノスフェラトゥ用」
「餌扱いするな!!」
「でもお前ピザあると機嫌良くなるじゃん」
「……」
否定できない。
ノスフェラトゥが黙る。
アズールが吹く。
スペクターが笑う。
最悪だった。
そして最後。
Pizzaguyはスペクターを見て言った。
「こいつ、ちゃんと飯食わせろよ」
「うん?」
「腹減ると拗ねるから」
「PIZZAGUY!!」
「あと褒めるとすぐ懐く」
「やめろ!!」
「寂しいと勝手に部屋来るし」
「やめろ!!」
スペクター。
完全に笑顔。
「へえ」
終わった。
ノスフェラトゥの威厳が、
完全に終わった。
「いいねえ」
スペクターは楽しそうに頬杖をつく。
「気に入ったよ、Pizzaguy」
「そりゃどうも」
「君をFORSAKEN専属ピザ職人にしようか」
「給料出る?」
「出るよ」
「じゃあ働く」
軽い。
全てが軽い。
ノスフェラトゥだけが重傷だった。
その夜。
FORSAKENのホールには、
焼きたてチーズの香りと、
ホスフォラスの笑い声と、
ノスフェラトゥの悲鳴が、
いつまでも響いていた。
おわり。
↓またgemini氏が勝手に挿絵描いてくれたシリーズ
↓こんなノリにしようか迷いました。
↓もはや原型がないけど、嬉しそうなので
↓スペクターの部屋に置かれてたぬいぐるみ。なにこれかわいい笑
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