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kaede🍁
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おその★
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#❤️💙
みら

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コロナ禍が落ち着き、少しずつ以前の日常が戻ってきた。
目黒の生活も、また忙しさを取り戻していた。
それでも、一つだけ変わらなかったことがある。
阿部へのアプローチだった。
「おはよう。」
「今日も頑張ろう。」
朝会えば自然と隣へ行き、仕事が終われば、お疲れ様と声を掛ける。
動画撮影では、気付けば阿部との距離が近くなってしまう。
収録中に笑い合っていると、つい肩が触れる。
休憩中に話し込んでいると、無意識に近付きすぎる。
そのたびに、誰にも気付かれないように阿部が小さく肘で押してくる。
収録が終われば、人目のない廊下で小さく説教される。
「約束したでしょ。」
「気を付けるって。」
「分かってる。」
「でも、あべちゃんが隣にいると忘れる。」
「忘れないで。」
困ったように笑う阿部を見ると、怒られているはずなのに嬉しくなってしまう。
そんな日々が続いていた。
___________
その日も、九人全員での撮影だった。
楽屋へ入ると、阿部が静かに椅子へ腰掛けている。
声を掛けようとした、その時だった。
小さなため息が聞こえた。
目黒は思わず足を止める。
阿部はすぐに気付いて笑った。
「おはよう、めめ。」
いつもの笑顔。
いつもの声。
なのに。
何かが違う。
(疲れてる……?)
ほんの少しだけ顔色が悪い気がした。
目の下にも薄く疲れが見える。
「大丈夫?」
思わず聞く。
「大丈夫。」
阿部はいつものように笑った。
「ちょっと寝不足なだけ。」
それ以上は何も言わなかった。
撮影が始まる。
阿部は普段と何一つ変わらなかった。
進行に合わせて話し、
メンバーへツッコミを入れ、
スタッフにも気を配る。
(やっぱり考えすぎか……。)
目黒もそう思うことにした。
___________
撮影も終盤。
立ち位置を変えるタイミングで、目黒は自然に阿部の後ろへ回った。
笑いながら、軽く腰へ手を添える。
「……!」
服越しでも分かる。
熱い。
明らかに体温が高い。
目黒は一瞬だけ表情を変えたが、すぐに笑顔を作る。
撮影中だ。
何も言えない。
阿部はそんなことを知らないまま、最後まで笑顔で撮影を続けていた。
スタッフが「OKです!」と声を掛ける。
拍手が起こる。
メンバーも「お疲れさま!」と笑っている。
阿部もいつも通り笑っていた。
誰一人、気付いていない。
目黒だけが知ってしまった。
(熱があることを隠してる。)
胸が苦しくなった。
今までもきっと、こうだったのだろう。
誰にも心配を掛けないように。
仕事へ穴を開けないように。
笑って。
いつも通り振る舞って。
一人で耐えて。
その姿を想像しただけで、胸が締め付けられた。
___________
撮影後。
メンバーが帰る準備を始める中、目黒はそっと阿部へ近付く。
「ねぇ。」
阿部が振り向く。
「何?」
目黒は小さな声で言った。
「熱あるでしょ。」
阿部の動きが一瞬止まる。
阿部は数秒黙ったあと、小さく笑った。
「ばれた?」
「うん。」
「だから。」
目黒は真っすぐ阿部を見る。
「家まで送らせて。」
阿部は苦笑した。
「え?」
「断ったら。」
「みんなに熱あるって呼ぶよ。」
阿部は思わず吹き出す。
「それ。」
「脅しじゃん。」
「うん。」
「脅してる。」
目黒は珍しく即答した。
「今日は譲らない。」
阿部は困ったように目を細める。
少しだけ沈黙が流れる。
やがて阿部は観念したように息を吐いた。
「……分かった。」
「送って。」
その一言に、目黒はほっと笑う。
「ありがとう。」
「でも。」
阿部は歩きながら肩をすくめる。
「今日だけだからね。」
目黒も笑い返した。
「今日はそれで十分。」
その横顔を見ながら思う。
本当は送るだけじゃ足りない。
代わりに苦しんであげたい。
それくらい大切な人だった。
でも今はまだ、その立場ではない。
だからせめて。
今日くらいは、この人が一人で無理をしなくて済むように。
目黒は阿部の歩幅に合わせ、静かに隣を歩いた。
___________
車を走らせている間。
助手席の阿部は、ほとんど何も話さなかった。
窓の外をぼんやり眺めていたかと思えば、いつの間にか目を閉じている。
「……あべちゃん。」
小さく名前を呼んでも返事はない。
規則正しい寝息だけが聞こえてくる。
(寝ちゃったか。)
目黒は少しだけ安心した。
きっと、それだけ疲れていたのだろう。
仕事中はいつも通り笑っていた。
何事もないように振る舞っていた。
でも、本当は限界だった。
信号待ちのたびに助手席をちらりと見る。
苦しそうではないか。
熱は上がっていないか。
そんなことばかり気になった。
「……無理しすぎだよ。」
眠る阿部には届かない声で、小さく呟く。
___________
しばらくして、阿部の住むマンションへ着いた。
「着いたよ。」
目黒は優しく肩を揺らす。
「……ん。」
阿部はゆっくり目を開けた。
「寝ちゃってた。」
「ごめん。」
「謝らなくていい。」
目黒は笑った。
「歩ける?」
「うん。」
阿部はそう答えたものの、立ち上がる動きはどこかふらついていた。
目黒はすぐ隣へ回る。
「玄関まで送る。」
「大丈夫だよ。」
「大丈夫じゃない。」
少し強い口調になってしまう。
阿部は困ったように笑った。
「はいはい。」
二人でゆっくりマンションへ向かう。
入口まで来た目黒は、思わず周囲を見回した。
「……。」
オートロックがない。
誰でも入れる、ごく普通のマンションだった。
(ここに一人で住んでるの……?)
胸の奥がざわつく。
人気アイドル。
しかも一人暮らし。
セキュリティとしては、あまりにも心配だった。
「早く引っ越した方がいいよ。」
思わず口にすると、阿部は苦笑した。
「そうだね。」
「でもインキーしちゃうから。」
その言葉も、どこか力がなかった。
部屋の前へ着く。
阿部はポケットへ手を入れた。
「あれ……。」
鍵を探す。
もう一度探す。
「……ない。」
ぼんやりしたまま反対のポケットへ手を入れた、その瞬間。
ふらり、と体が傾いた。
「あべちゃん!」
目黒は反射的に腕を伸ばす。
倒れかけた阿部を、すんでのところで抱き止めた。
「大丈夫!?」
「……ごめん。」
返事はある。
けれど体へ力が入っていない。
額へ触れる。
「熱……。」
撮影より明らかに熱くなっていた。
目黒は迷わなかった。
「ごめんね。」
阿部のポケットから鍵を取り出し、玄関の鍵を開ける。
「……。」
中へ入り、靴を脱がせる。
肩を貸しながら寝室まで歩いた。
ベッドへゆっくり寝かせると、阿部はほっとしたように目を閉じる。
「ごめんね。」
「送ってもらったのに。」
「こんなことまで。」
目黒は首を横に振った。
「謝らないで。」
「今日は俺が来てよかった。」
もし送らずに帰っていたら。
阿部は玄関で倒れたまま、一人だったかもしれない。
その想像だけで背筋が冷えた。
眠るように目を閉じた阿部の前髪を、そっと整える。
「本当に。」
「無理しすぎ。」
小さく呟く。
その声に返事はない。
静かな部屋には、熱で少し荒くなった阿部の寝息だけが響いていた。
目黒はベッドの横へ腰を下ろしたまま、しばらくその寝顔から目を離すことができなかった。
コメント
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みらさん、第4話読ませていただきました。 阿部さんの「熱を隠して笑顔で仕事をこなす」姿に、胸がぎゅっとなりました。誰にも気づかれないように振る舞う姿を、目黒さんだけが知ってしまう――その対比がとても切ないです。「鍵がない」からの倒れそうになる流れ、そして「今日は俺が来てよかった」の一言に、全てが詰まっている気がしました。 送るだけじゃ足りない、それくらい大切な人――この感覚、すごく伝わってきました。続きも気になります!