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文化祭は放課後まで会わないって約束だったのに!!
ダンス部の催し物に来た拓は誰よりも大きな声でノリノリだった。
一緒にいたサッカー部の人たちも…
「もー恥ずかしいんだからやめてよ!!」
赤面してしまった私に、部員が可愛いと言ってくれた。
その瞬間、拓が
「萌は俺のものだから」
とボソッと呟いて…
でかい声でヒューヒュー言われてたな。
恥ずかしくてたまらなかった。
部員の子たち、いつもあんなに真面目なのに…
サッカー部の子達のギャップにもかなり驚いた。
「なーんだ、付き合ってるんじゃん!」
同じ部活の樹里も、薄々気づいていたけど…と言いながら色々聞いてきた。
「なんでも相談しな。ずっと応援してるよ!」
秘密が少しずつバレるのは寂しいけれど、応援してくれる数が増えると自信に繋がる。
馴れ初めも今日までもとんとん拍子で速すぎた不安に対しても、きっと運命じゃんって言ってくれた。
樹里がいてよかった。
この日はたくさん樹里に相談した。
放課後、拓と階段の前で待ち合わせてドーナッツを食べに向かった。
廊下でも手を繋ごうとしてきた拓を必死に止めて、やっと人目のつかないところで手を出した。
「ずっと握りたかったんだよーーーー」
痛いほどに握る握力に愛を感じた。
ドーナッツ屋さんまで後少し…
暑さで手汗が滲むことも気にならないぐらい、愛が深まっていた。
「私はハッピーチュロスにしようかな」
半分こで食べられるものを選んでいたらほとんどが半分にできるものばかりで、拓は10個ぐらい選んでた。
「こんな食べ切れるかなー!いただきます!!」
拓の大きな口だと2口で終わっちゃうドーナッツも、半分こで全部食べ切ってしまった。
幸せそうな拓がまた、思い出話を始めた。
「実はここのドーナッツ屋で思い出があってね。
10年くらい前、このドーナッツ屋に来る前にお母さんの病気が進行していることを知って、
悲しくなりながら来たんだ。
お母さんは少しでも楽しませようとキッズコーナーで俺と遊んでくれてたんだけど辛くて。
その時、一口もドーナッツを食べない俺に半分こ!ってくれた女の子がいてさ。」
…。
あれ、この女の子って私…
あの時、泣いていた男の子に私のドーナッツを半分こしたのはよく覚えていた。
なんで泣いていたのかも、どこの誰なのかも知らなかったけど、それだけは覚えている。
そして、その一口で笑顔になったことも…
拓だ。あれは、拓だったんだ。
「それ、私だよ」
私は必死に当時の思い出を話した。