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拓はあの頃のあの男の子だったこと、
そして私がその時の女の子だったことを知って、
たくさん感謝を伝えてくれた。
黄色いチューリップのパワーも、私がその時に教えたことだった。
「本当にチューリップのおかげで元気になったんだ。お母さんまで救ってくれてありがとう。」
またドーナッツ屋さんでボロボロ泣き始めた拓を、私は笑顔で見守った。
あんなに辛い思いをしていたのに、今こんなに元気をくれる存在になって…
もらい泣きしちゃうよ。
黄色いチューリップは本当にパワーがあるように感じた。
ドーナッツ屋さんから駅まではつながっていて、駅の中のお店から歩いて向かった。
もちろん、手を繋いで歩いていた。
その時。
「永山くんと渡来さんだよね…?」
私たちが付き合った日にクッキーを渡してくれた女の子の隣にいた子が話しかけてきた。
「えっびっくりなんだけどなに…」
そう言い放って帰ってしまった。
ライバルに付き合ってることがバレるという不穏が、心の中にまとわりついた。
「萌…元気出して。俺何か言われてもちゃんと断るからさ!」
そういう問題じゃないの。いつ取られちゃうか不安なのは私だけなの?
悲しくなって、拓を予定より早めに見送った。
あの子に知られたら…
最悪なことばかりを考えて仕方がなかった。
拓はここまでポジティブに言ってくれていたけれど、今回はそういう気分になれなかった。
どうしよう…
そんな気持ちばかりがよぎった。
次の日。
思っていた事態が発生した。
隣のクラスの真原さんが泣いていたんだ。
拓にクッキーをプレゼントしていたあの女の子だ。
「永山くんがあの女と歩いてて…」
「本当に私許せない」
学年中に瞬く間に噂が広がり、文化祭2日目どころではなくなってしまった。
部員にも心配され、本調子になれずいつもしないミスを連発してしまった。
「今日は永山くん来てないね…」
やっぱりもう気軽には会えないのかな。
好きな子の気持ちを考えたら胸が痛いし、かといって好きであることを隠すこともできない。
別れることなんてできない…
真原さんごめん…
罪悪感とともにやるせなさが出て凹んでいた。
「そういう時こそ堂々とするものよ!」
昨日相談に乗ってくれた樹里は明るく前向きに声をかけてくれて、文化祭を一緒に過ごした。
「永山くんはキッパリ断ってくれるはずだよ」
樹里は笑顔で頭を撫でてくれた。
私もそれを期待していた。