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涼ちゃんが闇堕ちしてから、教室の空気もどこか冷たくなった。
授業中、ふいに涼ちゃんが顔を真っ青にして、手で口を押さえながら立ち上がる。
誰もが驚いている中、涼ちゃんは何も言わず、足早に廊下のトイレへと駆け込んでいった。
個室に入ると、止めようのない吐き気に襲われ、そのまま嘔吐してしまった。
――涙か、汗か分からないものが頬を伝っている。
それでも誰にも助けを呼ばず、一人きりで吐き気が治まるまでふるえていた。
教室に戻っても、涼ちゃんは誰とも目を合わせない。
給食も、配膳されたものにはあまり手をつけず、食堂の隅で小さくうずくまりながら本を読むばかり。
「ねえ、もうちょっと食べなきゃ…」と誰かが声をかけても、涼ちゃんは無視してページをめくる。
以前なら𓏸𓏸がそっと寄り添い、励ましの声をかけてくれた。
けれど最近は、𓏸𓏸も涼ちゃんと距離を置くようになってしまった。
𓏸𓏸はクラスの三人組の子たちと過ごすことが増えた。
体育の準備、給食、下校――その輪の中に、もう涼ちゃんはいなかった。
(あのとき、僕がもっと何かできていれば…)
涼ちゃんはそんな思いを胸の奥にしまい、カレンダーの印だけが増えるノートをじっと見つめる日々。
やがて体調を理由に、涼ちゃんは学校に来る回数も少なくなった。
欠席が続き、教室の席も、食堂の隅も空席のまま。
誰もが、「仕方ないよね」と言いながら、次第に涼ちゃんの“いない日常”に慣れていった――。
それでも、𓏸𓏸の胸の奥には、涼ちゃんの面影が痛いほど残り続けていた。