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八雲瑠月
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「次は中二病の番なわけだけど、勝てるの? 因縁の相手、DRAGONEYEに」
友美が言うと、書也のアバターは勝利の確信を持っているかのように頷いた。
「勝てるさ。俺はあいつの友人でもあるからな」
そう言って書也の美少女アバターは笑みを浮かべた。
「なら、何も言う事はないわ。行ってきなさい中二病!」
友美のアバターは力強く書也のアバターの肩を力強く叩いた。
『最後の大将戦は泣いても笑っても、ラノケンかマンケンのどちらかが勝てば勝利! まずはラノケンのメンバーの大将はなんと一年! 中二病だ!』
スポットライトに照らされた書也のアバターは恥かしそうに舞台の前に出る。
「やっぱ……性別が逆転していると恥ずいな」
『中二病は入部したばかりのルーキーですが、実力はどうなんでしょうか? 教子先生?』
『可もなく不可もなくといったところだ。作品の傾向としてはペンネーム通り、かっこ良さを追求した内容になっている。キャラの台詞、呪文の詠唱から、設定、技名まで叫ぶこだわりがある。男心をくすぐる内容で、良くも悪くも見る人を選ぶ内容になっている』
『なるほど、男性読者には好かれそうな内容ではありますね。そして次はマンケンの大将もなんと! 一年! DRAGONEYEだ!』
画竜点睛のアバター、DRAGONEYEは余裕な表情で手を振っていた。
『DRAGONEYEも一年のルーキーですが、どんな漫画を書く方なのでしょうか? 素描先生?』
『二年生に負けず劣らずに絵は上手いですね。ただ、経験不足もあるのか、ストーリー性が弱い部分があるのがネックですね。そういう部分ではどちらが勝ってもおかしくないのではないでしょうか?』
『なるほど、どちらも負けず劣らず、新人ながらも得意、不得意があり、良い勝負になりそうだ! それでは最初に一週間目の……』
書也のアバターと画竜数値の攻撃エフェクトが発動し、歓声と共に開始した。その場にいながらも、書也は走馬灯のように思えた。興奮していたせいもあり、一瞬で終わってしまったからだ。
「ベタ終わったよ!」
マンケンの部室で、愛の声が響いた。
「愛君、こんな雑用を頼んで申し訳ない。できるなら、漫画を描きたかっただろ?」
マンケンのカーミラ・赤月が申し訳なさそうに愛に言った。
「いいえ、背景を描けたのも楽しかったし、裏表紙も描くのも楽しかったんだよ」
愛が言うと、カーミラは複雑な表情をする。
「やはり勝負とはいえ……漫画研究部に正式に入部しないか? ラノケンと掛け持ちでもいい! 君はやはり文章を書くより、絵を描く方がむいている。その才能を腐らせておくのは惜しい! お願いだ! 部に入ってくれ!」
部員が見ている前で愛に頭を下げるカーミラに愛は首を横に振った。
「ごめんなさい。それでもやっぱりわたしは文章が、小説が、ラノベが好きです。誤字脱字でもラノベ作家を目指します!」
愛は笑顔で言うと、踵を返した。
「そうか」
カーミラは残念そうに言う。
「愛、マンケンの助っ人は終わったか?」
書也は先ほどの会話を聞いていたかのように戸を開け、マンケンの部室に入って来る。
「うん、ちょうど終わったところだよ」
愛が答えると、点睛がちらりと書也に視線を向ける。
「点睛、なんだよ?」
書也が点睛に声をかけると、歩み寄ってきたかと思うと、頭を下げていた。
「すまない書也! お前のこと、今まで見下していて! 漫画でストーリーもまともにできていないのに、お前をけなす資格はなかった!」
「いや、もう気にしてない。お前が俺の小説のことを認めてくれるなら、それで良いよ」
そう……勝ったのはマンケンではなく、ラノケンだった。書也と点睛の数値は一週目、二週目、三週目と拮抗し、最後は僅差で書也が勝利したのだ。点睛の漫画はバトルで迫力あるシーンを描けていたが、戦闘シーンが長く、物語にひねりがなく、ドラマ性が無く、敵である魔神が殺した人間を主人公がひたすら生き返らし、命の駆け引きやドラマ性を奪っている事が敗因となったのだ。
「それじゃあ、僕の気がすまない! 書也もう一度、俺と漫画家を目指さないか? お前のストーリー性なら、絵が下手でも漫画に活かせるはずだ! 絵が駄目なら漫画原作という手も!」
書也は首を横に振った。
「点睛、すまないな。俺は漫画も好きだが、やっぱりラノベはもっと好きなんだ。見守ってくれると嬉しい」
「いつでも待ってる……お前が漫画をまた描きたいと言うまでな」
点睛は笑みを浮かべて言うと、書也は苦笑いした。
「それは無理じゃないかな? だって、わたしと書也君は卒業までにはラノベ作家になってるから!」
愛は笑みを浮かべて言うと、書也の手を引いて、マンケンの部室を出ていた。
――俺達のラノベ作家を目指す戦いは始まったばかりだ。