詩でも詠むように、彼女は語る。
この娘の身体を乗っ取ったことといい、 どうにも不気味な女だ。
まぁいい、私は私なりに動くだけだ。
彼女の中に、彼の記憶はあるのか……?…………
いや、これは……。……やはり、そうなのか。
彼もまた、同じ場所に立っていたのだな……。
だが、それは叶わぬままに終わった……。
いや、違う。
終わってなどいない……! 彼はまだ生きている! 私の妄想が見せる幻影でなければ、 彼は確かに存在している! ならば、何故こんなところにいる?……この世界のどこかにいるはずだ! 探せ!探し出せ! 絶対に見つけ出すんだ!!
「……!」……なんだ!? この声は……!私のものではないはずだ。……私はここにいる。
ならば、いったい誰が……
それに……この音は、いったいどこから……
これは……歌……なのか? こんな場所で……何故歌っている? なぜ……そんなにも楽しそうなのだ……? まるで……これから始まることへの 喜びを表しているかのような……。
一体……何を考えているんだ……? わからない……
これは、本当に……
妄想なのか……? 歌声に誘われて現れたのは、 どこか幼さを残した少女だった。……その手に持つ剣からは、 禍々しいほどの力を感じる……。
おそらく彼女は、 こちらの存在に気づいている。
にも関わらず、平然と歌い続けている……。
この空間では、彼女の姿が見えない……。
彼女がいないということは、 つまりそういうことなのだ。……それとも、 もう既に消えてしまった後なのか?……わからない。
彼女はいつも笑顔を浮かべていたし、 私が知る限り、誰かに対して怒りを見せたことも、 憎しみを抱いたこともないはずだ。
私は、彼女を知っているようでいて、 結局は何も知らないままだったのだな……。……ただ、ひとつだけ確かなことがある。
彼女に会ったところで、私の心は変わらない。
彼女と過ごした日々の記憶は 今も色鮮やかに残っている。
それは、きっと永遠に変わることはないだろう。
私は、これから先も変わらずに生き続ける。
この記憶があるかぎり、 彼女を失ったとしても、 孤独を感じることはないだろう
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