「律くんなら、大丈夫」
琴音は柔らかく微笑んだ。
「きっといい答えが見つかるはずよ」
その声音は、かつて教育係として律を支えたときと同じ温かさを帯びていた。
律は黙って頷いた。
胸の奥に渦巻いていた迷いは、まだ完全には消えていない。
それでも――自分が本当に心を向けている相手を見つめ直さなければならない。
「……ありがとうございます」
短い言葉を返し、律は深く頭を下げた。
背を向けた瞬間、ふと華の笑顔が鮮やかに浮かんでくる。
そのイメージが、律の足取りを少しだけ強くした。
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