12月24日、クリスマスイブ。寒さに頬を赤く染めながら、澪と陽は、駅前のイルミネーションがきらめく通りを歩いていた。
「すごいな……駅前、こんなにきれいに飾られてるんだな」
陽が見上げながらぽつりとつぶやく。
「うん。こうやって見るの、なんだか特別な気分だよね」
澪も、手袋越しに陽の袖をつまみながら、にっこりと笑った。
今日はふたりきりのクリスマス。
約束していたわけじゃない。ただ、自然に、「一緒に帰ろうか」とメッセージアプリでやりとりしただけ。
それだけなのに、今こうして隣にいるのが、たまらなく嬉しかった。
「ほら、あっちに屋台も出てるぞ。温かいもの食べようぜ」
陽は少し照れたように言って、澪を手招きする。
2人は並んでココアを買い、ベンチに座った。
カップを両手で包みながら、澪はぽつりと呟いた。
「来年の今ごろ、どうしてるかなあ……」
「来年?」
「うん。大学生になってるはずだけど、またこうして、一緒にいられるのかなって」
不安そうに視線を落とす澪に、陽はそっと答えた。
「絶対、一緒にいるよ。……オレがそうするから」
少し強引な言葉。でも、迷いのないその声に、澪の胸がきゅっとなった。
「……バカ」
小さく笑って、澪はカップを唇に運んだ。
甘いココアの味が、ほんの少しだけ涙をにじませた。
夜空に一瞬、白い息が舞う。
ふたりは、イルミネーションの光の中で、そっと目を合わせた。
そして、ほんのわずかに、距離が縮まる。
言葉じゃない。
けれど、お互いの想いが、確かに伝わった瞬間だった。