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誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第22話 〚笑っていい線を越えた瞬間〛(海翔視点)
放課後前の少し空いた時間。
俺と玲央は、
いつもの場所で話していた。
一緒にいるのは、
俺の友達。
冗談も言えるし、
変に気を遣わなくていい相手。
「昨日のテストさ——」
そんな、
普通の会話。
そこに。
「ねえねえ」
急に割り込んできた声。
振り向くと、
真壁恒一。
「それ、マジで言ってる?」
俺の友達を見て、
笑いながら言う。
「いやいや、
その考え方、ズレすぎでしょ」
「天然?
それとも狙ってる?」
一方的な、いじり。
止まらない。
「その顔でそれ言うの、
逆にすごいわ」
笑いを取ってるつもりの、口調。
……でも。
誰も、笑わなかった。
俺も。
玲央も。
友達も。
空気が、
一気に重くなる。
(……やめろ)
心の中で、
はっきり思った。
恒一は、
その沈黙を——
「ウケてる」
と、
勘違いした。
「いや〜、ごめんごめん」
「でも、こういうの言われ慣れてなさそうだよね?」
最後にもう一発、
刺すように言って、
「じゃ」
呑気に手を振って、
他のグループの方へ行った。
去ったあと。
一秒。
二秒。
「……は?」
玲央が、
低い声で言った。
俺の友達は、
俯いていた。
拳が、
ぎゅっと握られている。
「……あれ、冗談のつもり?」
震える声。
その瞬間——
俺の中で、何かが切れた。
「ふざけんなよ」
思わず、声が出た。
「人が黙ってたら、
面白いって思うタイプかよ」
玲央も、
珍しく感情を出す。
「笑ってないのに、
続ける時点でアウトだろ」
友達が、
顔を上げた。
「……俺、
何も言ってないのに」
その一言で、
全部分かった。
(こいつは——)
(“空気”じゃなくて、
“反応”しか見てない)
沈黙は、
拒絶なのに。
恒一には、
それが分からない。
「……澪たちの時も、同じだったんだな」
玲央の言葉に、
胸が重くなる。
俺は、
ゆっくり息を吐いた。
「もう、線は越えさせない」
怒りは、
爆発させるものじゃない。
向ける場所を、
間違えない。
(次に来たら)
(今度は、ちゃんと止める)
そう、
はっきり決めた。