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――その声が私に告げたのは、
その子が眼を失ったと言う話だった。
あまりにも痛々しい抉り傷の様子とは裏腹に、酷く落ち着いた様子であの子はその時話した。
「ワタシはね、あなたと現実を結ぶ架け橋なの。それでいて、あなたの守護者でもある。今回の現実にはワタシ達が眼を向けてはいけないものが沢山ある。だから抉り取った。」
布団がまだ膝に掛かっていて座ったまま唖然とする私に、あの子はこう続けた。
「もう何かを見て感動することは一生出来無いけど、何かを見て傷付くことも一生無いから、大丈夫だ。」
大丈夫だ、だって。分からない。どうして大丈夫だって言えるのだろう、とっても痛そうだ。身体の機能を失ってまでして守られるべきものが、目に見える事しか分からない様な当時の私にはさっぱり理解出来なかった。
そう、当時の私は何時からか、すっかり過去の記憶を失くしていたのだ。せっかくの嬉しいとか残念とか言った気持ちも、あの視界から広がっていく様々な景色を沢山見せて貰っていたのに、なんて勿体ない。
勿体ない、と言っても結局のところ、本当に心の底から悔しく思うことは出来ないのだ。私達は、使命を果たせ無かった。きっとその罰だ。あの子に降りかかった次の不幸は――