テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
.
『 星とアルコール 』
著 ・ ame
この世はどうも、ひとりが好きみたいだ。
【 第一章 ” 酸性雨 】
この世は酸性雨みたいに
直接的に人体を攻撃しては来ないけれど
絶対的に、目に見えない何かが
じわじわと人体を蝕んでいる。
それが痛くて悲しくて悔しくて
だから、人は死んでしまうんだと思う。
野生動物は 自分自身を守るために逃げる。
人間は自分自身を守るために逃げたら
どうしてか、バカにされて嘲笑われる。
だから必然的に
戦って傷付いて、そうやって消えてくんだ。
星は心臓で雨はアルコール。
僕の心臓の灯りは消えかかっていて
それを必死にアルコールが繋ぎ止めて
そのアルコールが何かなんて分からないけど
なぜか、僕のことを生かし続ける。
ちょっとだけ、それに感謝したりする。
【 第二章 ” 絵具 】
僕の友達に、 とある子がいる。
男の子でもなく、女の子でもない。
どうやら、クエスチョニングらしい。
生きている上で、どちらの性別で生きるか
なんて考えることは少ないと思う。
その中でも
性別のない人や心身の性別が違う人は
多分、自分の身体の性別に違和感を抱いて
悩んでもがいて抗った先に
やっと、『lgbtqia+』という答えに
たどり着いたんだろう。
そういう人達が心底羨ましい。
自分自身について考えて、答えを探して
自分自身を認めてあげて、尊敬してあげる。
そんな偉大なことが出来たあなたは
出来そうなあなたは
きっと、きっと世界で一番偉い。
青、ピンク。
そんな型に当てはまらないあなたも美しい。
可愛いものに心惹かれるあなたも
格好良い洋服を好んで着るあなたも
自分の良さを伸ばす方法を探すあなたも
自分の短所を認められないあなたも
人と比べて悲しむあなたも
精神的な疲労感に気付けるあなたも
全部全部、違う色だから。
人と比べることも必要だけど
それに深く嘆き悲しむ必要なんてない。
皆違う色だから
この世は成り立っているんだよ。
【 第三章 ” 蟻 】
雨は嫌いだと、
君はよくそう呟いていた。
でも その後に架かる虹が好きだと
同じようによく呟いていた。
虹なんて僕が幾らでも見せてあげるのに。
どうしてか、その言葉は
喉奥に張り付いて 出てきてはくれなかった。
どうしてか、隠れたままだった。
多分、もう直ぐ アルコールが無くなるから。
【 第四章 ” ヨル 】
拠り所がないと、 君はそう呟いた。
そんな時
僕が君の終着点になれれば、と
心底 悲しくなったりする。
夜、君はよく泣いていた。
直接その場面に出くわしたわけじゃない。
けど、腫れた目元を見ると
いつも、泣いていたと嫌な程わかった。
君を笑わせる何かがあれば。
君にアルコールを注げることが出来れば
君から 負の感情が無くなれば
何度も何度も
叶わない夢を描いて 悔しくなった。
僕の人生を一言で表すとしたら
「 後悔 」「 霹靂 」「 悲哀 」
きっと、ただそれだけの
ちっぽけで くだらないこと。
【 第五章 ” 思い出 】
僕が死んだらなにが残るんだろうか。
暇な時、ぽ、と頭に浮かぶ。
今だってそう。
言葉に表す度に、存在意義を探している。
残るのは 骨と、写真と、服と、部屋と
それから君との日々と思い出。
それだけのことが
ただ、嬉しかったりする。
早く、アルコールなんて無くなってしまえ。
そして
僕はこの世界から消えて
あの星から
君たちを見守っていたい。
【 第六章 ” 2割 】
2割。君の知る僕。
残りの8割は、きっと誰も知らない。
きっと誰にも見せない。
どうしてか、なんて分かりきったこと。
みんなに離れられるのが、
君に嫌われるのが怖いから。
ただ、それだけ。
【 第七章 ” 雨 】
今年はきっと、洗車雨が降る。
そんな、気がする。
証言者は君で、ちゃんと目に焼き付けてね
あの星の声が聞けたら
あの星に手が届けば
きっと、誰もが幸せに生きられる。
不幸せな人が居るのは
あの星に手が届かないから。
あの光り輝く星を
手元に置いておけないから。
しんどい時に
その星を眺めて 元気になれないから。
【 第八章 ” 共感 】
自分の辛さを知って欲しくて
何回も何回も 言葉に表した。
誰かの辛さを知る度に
何度も何度も 自分と比べた。
ただ、意味の無いことなのに。
辛さに
生き方に
人生に
死に方に
人に、優劣なんてある訳がないのに。
いつしかの時代から
人はすべてに優劣を付けた。
人は優れているものを正解として
正しさを正義として、生き始めた。
生き始めた。
僕はそれに何度も生き恥まれた。
何度も行き始めて止まらない正義に
自分の正義を振りかざす勇気はなかった。
誰の正義がふつうで
誰の価値観がふつうで
誰に沿って生きていけば良くて
誰の真似をしていれば正解、だなんて
誰も、教えてくれなかった。
その癖に
自分が普通だと思うな、だとか
自分の正義を振りかざすな、だとか
何度も何度も、僕は殺された。
お父さんに
友達に
親友に
他人に
大好きな人に
たぶん大嫌いだった人に
何度も何度も、殺された。
だから分かった気になれる。
ホンモノの正義を、知った気になる。
なにも、知らないくせに。
コメント
10件
星が心臓で雨がアルコールって表現すき アルコールが なんなのかは人によって違うのかな なんか生き甲斐てきな すごい惹き込まれた!!
本 当 に 最 高 す ぎ る こ の 作 品 大 好 き す ぎ て ま た 見 た い っ て 思 っ て た か ら 凄 い 嬉 し い . . 💭
わっ……今回もめっちゃいいです!!お~が先輩の小説ってどれも綺麗ですから読み終わったあとつい余韻に浸ってしまいます……💕最初の「この世はどうも、ひとりが好きみたいだ。」から一気に惹き込まれました……✨今回のは特にメッセージ性があって心に響きました……