アスファルトの道が、平らに続いている。その上を、冷え始めた秋風が通り抜けた。
この通りをこのまま真っ直ぐ歩いても、退屈な毎日だけが広がっている気がした。
白地に黒いブチの入った猫が、車道を横切ってこちらにやってきた。上目遣いにミャーと鳴いて、そのまま舗道と草むらを分ける鉄製の柵をくぐった。柵は青く塗られた膝ほどの高さの簡素なもので、舗道に沿ってアーチ状に植え込んである。
プナールは車道を向いて、目を細めながら煙草を吸っている。
俺は草むらを向いた。奥の雑木林のその上に、城壁の頭が見えるのを再び確認した。これまで、何度乗り越えてみようと思ったことだろう。そして何度無理だと諦めてきたことだろう。そのくせ、無機質なアスファルト道の続く日常をひどくもてあましてきた。
「あのさ」と俺は言った。
プナールは煙草をくわえたまま、目だけこちらへよこした。
「今日、こっち寄ってくから」
「は?」
彼女の口から煙が漏れる。
猫は雑草の陰から縦に長い目をして、もう一度ミャーと鳴いた。俺はプナールと猫の目を両方見比べたあと、猫に視線を止めた。
「こっち寄ってく」
彼女は煙を吐き切り、短くなった煙草をアスファルトの上に落とすと、足で踏みつけた。
「バカじゃん」
プナールは背を向け、舗装路をそのまま進んで行った。明日から口をきくことはないだろう。