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ざわざわ音を立てながら進むうち、腰ほどだった雑草は俺の背丈を越えた。手でかき分け足の踏み場を定める。小さなバッタがぴょんぴょん飛び出してくる。途中で二度ほど足を取られた。草の汁がズボンの膝小僧に散る。猫は葉の間から、ときどきこちらを振り返る。草むらがやむと、雑木林に出た。午後一時半が薄暗い。幹は曲がりくねりながら天空を目指している。枝先の葉の中に、先端がからし色になり始めたものをいくつか認めた。焦茶色をした腐葉土は、踏み出すごとに沈む。そのうちに、幹の合間から城壁が見えてきた。足元が明るくなると雑木林が終った。レンガの目が見えてきた。植物のつるが伸びている。スペード形の葉の一枚に、小さなてんとう虫が歩いているのを見つけたとき、ついに城壁は俺の行く手を百八十度遮っていた。教室の窓からは一枚岩に見えた肌地は、角がこぼれた不器用な岩と薄いレンガの混合体だった。見渡す限りレンガの方が圧倒的だが、岩ばかりのところもあるし、両者が半々で混じっている所もある。レンガの縁を指先で触るとざらざらしていた。掌底で叩くと音もなく手がしびれた。隙間に手を突っ込むと、モルタルに指先が触れた。レンガが欠けたところに土が載り、そこから生えた小さな雑草の上にあぶら虫が、短い触角を動かしながら歩いている。レンガと岩は傾斜をつけて積み上がっていた。角度はきついが、身体が乗らないほどではない。その先に雲が見えた。太陽は見えない。猫は少し離れたところで上を向いて座っていた。歩き寄ると、壁に沿って走りだした。追いかける途中で、柔らかい黒土の中から急に出てきた太い根っこに足を引っ掛ける。手にこびりついた土を落とし膝をさすっているうちに、猫はいなくなってしまった。根は雑木林の群れから一本だけ離れて城壁に寄り添う巨大な木に届いていた。その木の幹は大人が両手を伸ばす以上の径があり、湾曲しながら数か所壁に接している。高さを違えた枝は、城壁に並行に伸びているものもある

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