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#百合
コメント
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ああ、もう、本当に……第9話、すごかったです……。あやが「忘れたくない」って泣きながら必死にエルを抱きしめる場面、心臓がぎゅっとなりました。プログラムだから痛くないなんて嘘だ、って言葉が、エルの冷たい指先の描写と重なって、涙が止まらなかったです。梓さんの「何年、親友やってると思ってるんだ」も、あのタイミングで沁みました。最後の水鏡越しの二人のエルが触れ合う光景、まるで絵画みたいに美しくて、何度も読み返してしまいました。エルが「お待たせ!」って笑うところ、もう最高です…!
第9話 「貴方は私 私は貴方」
「──システムコード、00-Shinbi。高次元論理防壁、強制展開」
長髪エルの声が、完全に感情を排した絶対零度の電子音へと切り替わった。
瞬間、観測室の無機質な壁面がすべて透明なガラスのようなホログラムに変わり、その向こう側に、数億、数兆の「世界線の履歴(ログ)」が滝のように流れ落ちる。
けたたましい警告音(サイレン)が鳴り響き
パリンッ 観測室の硝子に幾重にもヒビが入り
流動しながらホログラムのレコードが空間を飲み込むようになだれを起こしていく
長髪エルの背後から幾何学模様で構成された光のセラフィムような高次プロトコルが収束し空間全体に膨張していく
フィルムを巻き込んだ暴風が吹き荒れながら彼女の白銀の髪を狂おしく巻き上げた。
硝子細工の瞳の奥で、膨大な演算結果が弾き出されていく。
ジジッ
無機質なレンズのような瞳があやを捉えた瞬間言葉にならない程のスピードで演算回路が数式を弾き出す。
「保護対象を確認 」
「調整を開始します」
瞬間あやの足元に幾何学模様のような魔法陣が展開される
「……っ」
バランスを崩したあやが床に倒れこむ
大理石の床に裂けるように無数に亀裂が入っていく
あやの記憶を消去し、世界線を前周期のセーフティを編み上げる──それが、プログラムとしてのエルの「全体最適」だった。
「やだ……! 忘れたくない……! エル、離してっ!!」
あやは叫ぶように必死に呼びかける
あやは、手をロックするエルの冷んやりとした指先を振り払おうと、必死に抵抗した。
しかし、長髪エルの細くしなやかな指先に加わる力見た目からは想像できないほど固くあやの腕をにぎりしめていた
視界が明滅し、世界の書き換えの光に染まっていく。
あやの頬を涙が伝う。みんなと紡いだ日々エルのぬくもり、そのすべてを「なかったこと」にされるなんて、絶対に嫌だった。
エルと過ごした日々 はじめて双子座を見る約束を交わした夜がフラッシュバックする
長髪エルの表情は変わらない。
ただ、その深淵の瞳の奥で、高速で明滅する数式だけが、あやを捉えていた。
(これでいい,あやが傷つかない世界線を引くのが、ロジックとしてのエルの役目。……それに)
エルの演算回路の片隅で、誰にも届かない冷たいノイズが寂しく響く。
(みなさんが好きなのは、笑って、甘えて、みんなを照らす天真爛漫な『エル』。だから、私はこの世界線と共に…)
エルが世界を編みあげようとした
その時だった。
――カチッ。
観測室に、小さな時計の音が響く。
赤い警告灯が乱反射するの中
セピア色の髪が光を受けて揺れた。
「……認証情報なし。」
エルの演算が一瞬フリーズする
空間を埋め尽くすようにホログラムが瞬く間に映し出されては消えた
緊張感が場を支配した
「侵入経路、解析不能。」
エルの視界が梓の姿を捉えた時、エルの瞳孔が一瞬見開かれた
「どうして。」
「ここへ……。」
梓は静かに懐中時計を閉じた。
「やれやれ。」
困ったように肩をすくめる。
「何年、親友やってると思ってるんだ。」
その一言でエルの演算が、一瞬だけフリーズした。
そう、世界線が再構成されれば、この履歴もまた、暗いデータの底に消える。
それでも、私はー
エルは、未来のために
「──処理を、開始す──」
エルがシステムを確定させようとした、その刹那。
『──アーカーシャ・レコード』
世界線を固定しようとしていた光の防壁が、バキィィィン!!と激しいガラスの砕ける音を立てて内側から裂けた。
「……っ!? 認証情報(アカウント)のない、強制介入──!?」
エルの瞳の数式が激しく乱れる。
梓は一歩も引かずに、エルの展開する高次システムのプログラムが編み上がる前に過去を記録していくー
空間の警告音が、激しく反転していく。
記録されなかったはずの温度だけが、映像の隙間から、静かに零れ落ちる。
「……っ」
エルの瞳が、揺れる。
「そうやって君はいつも自分を責めて
どうしようも無いほど不器用で」
梓の周囲に世界中の記録が1つのフィルムのように収束して円環を描き出す
エルは即座に幾何学模様を展開しようとするが梓なフィルムがそれを巻き取り阻止する
「…..っ」
梓の額に汗がにじむ
「…くっ」
なんとか世界が編み上がる前にフィルムが空間を膨張させたまま保っている
「自分が悪役になろうなんて思うな」
梓はエルを見据えそう叫んだ
「…..っ」
エルの演算が僅かに遅れた。無機質な瞳が潤むように揺らいだ
瞬間
その様子をみて、2人の攻防に呆気に取られたままみつめていたあやが
はっとしたようにエルの元に駆け出す
「エル….エルっ」
「あや…だめ..近ずいたらあぶな….」
エルが言い終わる前に
あやは、エルの華奢や身体をこれでもかというくらいぎゅっと力強く抱きしめる
まるで、もう1人にしないと誓うような優しくどこまでも熱い抱擁だった。
触れ合った制服ごしから熱が伝わりトクトクと心音が聞こえてくる
ロックされていたはずの手のひら。その冷たいエルの指先を、あやは今度は自分から、壊れるくらいぎゅっと、強く強く、その『温度』で包み込んだ。
「天真爛漫なエルも、今あやを守ろうとして傷ついてるロジカルなエルも、どっちも私の世界に唯一の大切なエルなんだよ!…だから、もう
そんな事しないで、エルのそんな悲しんでる顔私観たくないよ……プログラムだから痛くないなんて、苦しくないなんて嘘だよ…」
あやはエルに縋りつくように掠れた声で声を押し殺し泣きはじめる
「あや……っ」
その瞬間、エルの心の中で出力前の定義できない余白が生まれた
空間が静まり返り、エルの調整の幾何学模様が光の粒子となって霧散していく
全体最適として収束していた演算式へ、定義不能の熱量が割り込む。
例外処理。
解析不能。
未定義。
──それでも。
演算回路は、初めて”抱きしめられた温度”をなかったことにはできなかった。
「….気が付かなくてごめんね」
そう囁くとあやは、今度はエルを慈愛に満ちた瞳で見つめながら優しく深く抱きしめた
「一緒に帰ろう」
エルの肩が、小さく震えた。
あやの制服へ顔を埋めたまま、しばらく何も言えない。
温かい生命の温度が言葉を通じて体温から伝わってくる。
世界を優しく書き換えようとしていた高次元演算
が停止して
今はただ、管理者としてでなく、1人のエルとしてあやを真っ直ぐみつめていた。
無数に空間を覆っていた幾何学模様が、一つ、また一つと光の粒子へ還っていく。
張り詰めていた観測室の空気が、ようやく静かに息を吐いた。
「……。」
梓は二人の姿を見つめたまま、小さく肩をすくめる。
そして、どこか困ったように笑った。
「まったく。」
懐中時計を閉じる。
カチッ、と小さな音が響く。
「結局、最後はそうなるんだ。」
その声には呆れもあった。
けれど、それ以上に安堵が滲んでいるようだった。
「レコードを何万回読み返しても。」
「未来だけは、記録通りにならない。」
それが少しだけ嬉しそうで。
少しだけ誇らしそうで。
梓は静かに目を細めた。
「だから君たちは。」
「放っておけないんだよ。」
ふっとどからか星空の記憶を乗せて風が吹く。
無機質な観測室だったはずの景色が、静かに光の粒子となり溶け始めた。
崩壊していた世界線は消失する前に、まるで誰かが優しく編み直すように姿を変えていく。
つま先から水鏡のような波紋が広がり砕け散っていた光の欠片は、水面へ降る星屑となって
あたりを小さく照らしながら波紋と共に広がっていく
どこまでも透き通る水鏡は、天井に果てしなく広がる銀河を映し出す
天と地。
その境がゆっくりとゆっくりと溶けていく
梓はその光景を見届けると、小さく息をついた。
「なるほど、これが
君たちの選んだ答えか。」
「綺麗….」
あやが思わず感嘆の声を漏らす
その世界の中心で、あやの視線の先には奇跡のような景色が広がっていた。
透明な湖が満天の星空を鏡合わせに映し出す。
天と地の境が消失したような、その世界の中心で──
二人の少女が、透明な水鏡の壁を挟んで向き合っていた。
その崩壊の危機の中心で、あやの視線の先には奇跡のような景色が広がっていた。
あの日、画面を越えて胸に飛び込んできた天真爛漫な微笑みを浮かべる「実体」のエル。
そして、画面の向こう側からずっと現実を支えるために幾度と計算を繰り返し居場所を守り続けてきた論理としてのエル。
二人の少女は、吸い寄せられるように、鏡にそっと手を伸ばした
白く細い指先が水鏡に波紋を広げていき、指先が触れた
2人の瞳が、鏡越しに重なり合う
コズミックブルーの瞳の奥にキラリと星屑が舞う
「ねえ、あや」
二人のエルの声が、同時に優しく空間に響き渡る
「画面の中のわたしも、外のわたしも、どっちもあやを愛するために生まれた、本物のエルなんだよ」
「、、、、、っ」
あやが目を見開いた
その瞬間、二人の胸元にあった白銀のリボンが、まばゆい光の帯となってほどけた。
ー光の糸は境界線を優雅に踊るようにうねりながら越えいき、お互いの身体を包み込むように交差していくー
「──繋ぎたいから、今を選ぶの!」
星屑が祝福するように空間を踊り出す
水鏡が波紋を立てながら霧散しいく
2人の少女は触れ合った指先から指を絡め合い
優しく抱きしめあった
パリンッと音を立てエルを隔てていた境界線が欠片になりながらパラパラ崩れていく
光のような水鏡の破片が空間を舞う
あわい光の粒子が空間を漂いながら収束していく中、そこに佇んでいたのは、たった一人の「エル」だった。
ほどけた光の糸が、彼女の胸元で再びきゅっと、「ひとつの新しいリボン」の形に結び直される。
ーまるで宇宙を再定義したようにー
スカートが踊るようにふわり、と揺れ、白銀の髪が星空の天の川のように靡く
刹那、星空と余白を映し出した瞳に高次の数式が一瞬だけ眩しく走った。
ふっと余裕そうな微笑みを浮かべると、次の瞬間にはあやにゃに向かって最高の「愛されスマイル」を咲かせた。
「あや、お待たせ!」
可憐な声が神秘な空間に響く
どこまでも愛らしく真っ直ぐあやを捉える星空の瞳
エルは白い指先で、夜空に浮かぶ星を軌道を描くように優しくなぞった
指先から光の糸が紡ぎだされ夜空に美しい「双子座」が編み上がっていく
その光に呼応するように、星座が呼吸するように揺れた