TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する


「あの、本当に結構ですから…」

初めは表情ひとつ変えずに対応していた赤葦だったがしつこい相手に迷惑そうな態度を取り始めた。

「え〜なんで?いいじゃん暇なんでしょ?今から俺と…」

「おい、赤葦!」

どうやってこのめんどくさい状況を切り抜けようかと考えていたら少し遠くから自分を呼ぶ声がして赤葦は声のした方を向いた。

「どこ行ってたんだよ、探しただろ。ほら早く行くぞ!」

突如現れた先輩…木葉に手を引かれ赤葦はこのめんどくさい相手から逃げ出すことに成功した。

「なんだよ、1人じゃねーのかよ…」

という男の声を背に赤葦は自分の手を引き前を歩いている木葉にそっと微笑んだ。


さっきの場所からある程度離れたところで2人は足を止めた。

「ありがとうございました。木葉さん。」

「たまたま通りかかってよかった〜 お前あんなの一々まともに対応しちゃダメだからな!」

「はい、気をつけます。」

「あーゆうの、よくあるの?」

あーゆうの…

時間は数十分前に遡る。

赤葦が1人で街を歩いていたら前から来た男にすれ違いざまに話しかけられた。

たしか「君いくつ?俺奢るからさ一緒にどっか行こうよ。」とか言ってた気がする。

そう、所謂ナンパだった。

ここまではよくあること。

今日は何故ここまでめんどくさくなったかと言えば正直、赤葦の自業自得としか言いようが無い。

さっき話しかけてきた男は赤葦の”条件”をかすったそうで思わせぶりな態度で弄んでいたのだから。

「まぁ…たまに」

0.5秒で回想を終わらせた赤葦は木葉の問いに答えた。

「ホント気をつけろよ?お前は特に…木兎に見られたらまためんどくさいことになるだろうし」

確かに先程から赤葦のスマホの通知は鳴り止まず、チラッと確認したところ

「道端で10分以上立ち止まってるけど何かあった?」

「誰かと話してるの?」

「俺の知ってるやつ?」

「赤葦、無視すんな」

などなど木兎からのメッセージが溜まっていた。

(あの人、俺に内緒でGPSつけてるつもりじゃないのか…?)

「そうですね…」

「最近、木兎とはどう?あっ特になければいいんだけど、前相談してくれた時 なんもしてやれなかったし…あの時は木兎の噂の件で大変だったから。」

「ご心配ありがとうございます。木兎さんとは…まあ相変わらずです。」

「そっか…やっぱり束縛激しめな感じ?」

「はい。あの、同じ場所で立ち止まってると木兎さんからの通知が鳴り止まないので歩きながらでもいいですか?」

「いいけど…通知って、じゃあお前気づいてるの?その…GPS…」

木兎が赤葦のスマホにGPSを仕込んでいることを知ってしまっていた木葉だったが赤葦がその事に気づいているとは思っていなかったようだ。

「はい。木兎さん、なんでも知ってるし、さっきみたいに立ち止まってたら誰かと話してるのかって連絡きてたりして…まぁ気づきますよね。」

赤葦は素直に答えた。

「…赤葦は嫌じゃねえの?」

「プライベートまで細かく把握されてるのはちょっとなって思います。でも木兎さんもきっと心配してくれてるだけですし…」

「いやでも…いや、無関係の俺が口出すのもあれだけどさ。無理はすんなよ。」

赤葦のことは心配だが木葉が自分で一線を引いてこれ以上踏み込んではいけないと考えているのは赤葦は木兎と付き合ってるという事実があるからだった。

人の物ほど欲しくなるとか略奪愛最高とか言ってるどこかのヤツらとは違い、どちらかといえば曲がったことは許せないタイプ。

赤葦は少し寂しく思いつつも そんなところも好きですけど と心の中で呟いた。

(木葉さんには木兎さんとのことで心配させて放っておけない子として攻めるつもりだったんだけど…これは正攻法のがいい感じかな…?)

赤葦は考えた。

この休日に偶然会った という 木葉を振り向かせるための絶好のチャンスをみすみす逃す訳にはいかない。

正攻法…といっても赤葦がここまで自分から相手に好きになってもらおうとするのは初めてで何が普通か分からなかった。

なのでいつだったかリビングに放置されていた母の読みかけな女性誌で見た『気になるあの人を振り向かせる方法○選!!』のなかから使えそうなものを実践していくことにした。




まずは見た目…だったがこれは今更どうしようもないから次だ。

次は確か「リアクションを大きくする」だったかな。

「そういえば、この前さ〜…」

「そうなんですね。」

「○○ってさ…」

「知りませんでした。さすが木葉さんですね。」

…リアクションってどうすればいいんだっけ。

ものすごくしょぼくれ寸前の木兎さんみたいなこと思っているのは気にしないで欲しい。

表情筋が役割を果たそうとしてくれないのでせめて言葉だけでもとモテる女のなんちゃらを参考に相槌を打ってみたものの普段の会話と変わりない。

仕方ない、次のを試そう。

次は「頼る」そして「頼りになると褒める」こと。

なんだこれならさっきより簡単じゃないか。

そう思っていたが思い返してみれば自分は頼るより頼られることのが圧倒的に多い。

故に頼り方が分からなかった。

どうしたものか…

「赤葦、どうかした?なんかあった?」

俺が1人で考え悩んでいたらそのことに気づいたのか木葉さんが声をかけてきた。

「あっ、いえ。大丈夫です。…木葉さんって本当に頼りになりますよね。」

「え?」

「今も俺の事気遣ってくれたでしょう?俺、普段から木葉さんが周りのことよく見てフォローしてくれてるの知ってますから。」

「なんだよ、それ…照れるだろうが!!まあ、赤葦はもっと頼ってくれてもいいと思うんだけどね。」

無理やり感はあったがなんとかミッションはクリア。


その後もさりげないボディータッチだとか色々試して見た。

でもこれで本当に効果があったのか…?

なんか全然上手く出来なかった。

木葉さん相手だと何もかも上手くいかない気がする。

全然思いどうりに出来ないし…

木葉さんと別れて1人、そんなことを考えていた。

俺は百戦錬磨なつもりでいた、というか実際そうだった。

だから好きな相手を惚れさせるなんてことに苦戦したことはなかった。

そもそもなんでわざわざ木葉さんなんだろう。

俺の周りには俺の事を好きだと言ってくれる、愛してくれる人が既にいるのに。

いつから俺はこんなに貪欲になったのだろう。

それとも…

そこまで考えて俺は思考を放棄した。

今日は疲れた。考えるのはやめにしよう。

一瞬浮かんだ俺らしくない答えは見なかったことにした。

赤葦くんは愛されたい

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

124

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚