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ごちゃまぜ自分用(笑)

9 - 狗巻片想い 伝わらない

♥

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2025年06月07日

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狗巻棘は、いつもと変わらず、彼女に近づいていた。

廊下ですれ違うときも、任務後の報告中も、自然に隣にいるようにして。


「しゃけ」

「おつかれ、棘くん」

「こんぶ」

「うん、私も今日眠い〜」


おにぎりの具でしか話せない。

それは呪言師である彼の宿命であり、制限でもあった。


だけど――

彼女はそれでも、棘の言葉に慣れて、日常的に会話を続けてくれるようになった。

意味は通じなくても、返してくれる。その優しさが、棘には何より嬉しかった。


でも。

でも、肝心な「気持ち」だけは、伝えられなかった。


好きだってことも、

もっと話したいってことも、

手を繋いで帰りたいってことも。


「しゃけ」って言えば、彼女は笑って返す。

だけど、彼女は知らない。

――それが、“好き”の意味であることを。



ある日。

彼女は、別の男子と笑いながら話していた。

任務のことを相談しているらしい。


棘は少し離れた場所から見ていた。

心臓が、ズキリと痛んだ。


(……ツナマヨ)


なんとか気を紛らわせようと呟いたけど、声には出せなかった。


任務のあと、彼女と帰り道が一緒になった。


「今日、頑張ってたね。棘くんもお疲れさま」


「しゃけ」


「……最近、よく『しゃけ』って言ってくれるよね」


棘は一瞬、足を止めた。


彼女が、続けた。


「ねえ、それって……どんな意味?」


棘の目が揺れた。


けれど、答えない。


「わかってるよ。きっと言えないって、わかってる。でも、棘くんが優しいのも、いつもそばにいてくれるのも、すごく嬉しいんだよ」


棘は俯いて、言葉を選ぶように小さく呟いた。


「……しゃけ。明太子。高菜」


彼女はくすっと笑った。


「……それ、嬉しいの全部?」


棘はほんの少しだけ、頷いた。


彼女が少しだけ歩を詰めて、彼の袖をそっと掴んだ。


「私も、棘くんのこと、もっと知りたいな」


棘の目が見開かれる。


彼女が小さく微笑んだ。


「だから、しゃけって、また言って?」


棘は一度、口を結んで、それから真っ直ぐ彼女を見て――


「しゃけ」


彼女の頬がふわりと赤く染まった。


ほんの少し、距離が縮まった気がした。

言葉じゃなくても、ちゃんと届くんだ。


棘はそっと、彼女の手を取って歩き出す。

彼女は驚いたけど、すぐに笑って、手を握り返した。


もう一度、棘は言った。


「……しゃけ」


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