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#異世界転移
花月夜れん
2,559
設楽理沙
880
耀聖(ようせい)
269
耀聖(ようせい)
855
「よっ、麗霞! 例の絵出来た?」
麗霞が訪れたのは調香院。友達の葉青に用があって来た。
「遅くなってごめん。よく考えたんだけど、やっぱり実在する人物をモデルに描くのは良くないかなって思って。ほら、万が一見つかっちゃったら大事でしょ?」
実際、大事になったんだけどね。
本人に見つかってビリビリに絵を破かれた挙句、接吻されたとは絶対に言えない。
葉青に話したらそれこそ一大事にされそうだ。
「んー、まあそうだよね。どれどれ見せて」
描き直した春画を渡すと、葉青の顔面が崩壊した。瞳孔が開き、鼻血まで垂らしている。
そうそう、こうやって妃殿下にも楽しんでもらいたいのよ。
「どう? なかなか良い出来でしょ?」
葉青は鼻血を懐紙で抑えながら、コクコクと頷き返している。
「いい。すっごくいい! こんなに色っぽいのにちゃんと男だわ。こっちの手なんて、もうっ……触り方がやらしすぎ」
「葉青のお陰で新境地に辿り着いたわよ」
男同士の春画は初挑戦だったけれど、かなり感性を刺激された。たまにはこういうのも悪くないし、新たな需要に答えられそうだ。
「どういたしまして。じゃあ御礼にこれ。私の最高傑作!」
葉青からはいつも、春画の代金の代わりにお香を貰っている。調香に優れた彼女の作るお香は格別で、このお香を焚きながら絵を描くとインスピレーションがじゃんじゃん湧いてくるのだ。
「いっつもそんなこと言ってない?」
「あら。そんなこと言うならあげない」
「嘘よ嘘。嗅がせて」
包みを開いてクンクンと香りを嗅ぐと、優雅で重厚な甘い香りが鼻腔に広がった。まるで夜の花咲く庭園にでもいるかのようだ。
「茉莉花と月下香を中心に調香してみたの」
「月下香?」
「そう。夜になると強く香る変わった花なの。最近海の向こうの国から入ってきて調香院でも栽培してみてるんだけど、これがまたエロい香りがするのよ。色々試してみたけど、私が思うに茉莉花との相性が抜群よ! ねえ、いやらしい気持ちになってきたでしょう?」
「うん、分かるわ。なんかこう、ムラムラっとしてくる感じ。まさに私が今求めていた香りよ!!」
香りだけでこんな気分にさせてしまうとは、流石は葉青。調香の天才。
「求めてたって、この香を使って誰を落とす気ー? もしかして最近仲のいい煜峰殿下?」
うっふふ〜と気味の悪い笑い方をして肘をウリウリと押し付けてくるが、決してそんなんじゃない!
「ちっ、違うわよ!」
「慌てて否定するところがあやしーい」
「煜峰殿下には玉も棒もないのよ? ムラムラさせてどうするって言うのよ! このお香は今回は、他の御方にお譲りするわ。私よりこのお香を必要としている方がいるの」
「譲る? 誰に?」
「もしその方に気に入って貰えたら、とんでもない上客が付くわよ」
「ふぅん。まっ、期待して待ってるわ」
葉青から受け取ったお香を手にしたまま、麗霞は今度は皇太子妃の住む宮へと足を運んだ。
ただし会うのは皇太子妃ではなく、その侍女。
「恋恋さん、どうされましたか? この前依頼されていた絵が、もう完成したのですか?」
「いえ、今日は別件でお伺いしたのです」
「別件?」
「難しいことではありません。今日からこちらのお香を、夜に妃殿下の宮で焚いて下さい」
「お香……? まあ、凄くいい香り」
手渡されたお香を嗅いだ侍女が、うっとりと目を細めてため息をもらした。
ここまでくると、取り扱いに注意が必要そうなくらい扇情的で危険な香りだ。
「それから宮には綺麗な花を生けるようにして欲しいのです。美しい花を見ると気持ちも華やぎますし」
「風水師の方からは運気を上昇させる為に、花ではなく厄除けの置物を飾るようにと助言されています」
金ピカの龍だの亀だのでは妃殿下の心は解せない。女性のテンションが自然と上がるのはやはり花!
どうにかして侍女を説き伏せようと口を開きかけたところで、皇太子妃の宮の中から煜峰が出てきた。
「その官女の言う通りにせよ」
「煜峰殿下、こちらにいらしていたのですか」
「お前に買わされた絵を妃殿下に納めに来たのだ」
「恋恋さ……麗霞さんに買わされた? 煜峰殿下が妃殿下にお持ちになった絵は、麗霞さんに言われたからということなのでしょうか?」
訳が分からないといった様子の侍女は、煜峰の顔と麗霞の顔との間で視線をさ迷わせている。
「私も彼女も、妃殿下の為に手を尽くすつもりでいる。ここは麗霞の提案を聞いて欲しい。悪いようにはせぬ」
「煜峰殿下が皇太子殿下と妃殿下に、どれほど心を砕いているのか存じ上げておりますので案じる必要はないとは思いますが……。一体何をする気なのですか?」
自分の主人に忠実な良い侍女だ。
万が一にも害があってはならないと考えてのことだろう。たとえ煜峰が遥かに目上の人であっても、理由を聞いてきた。
「私は妃殿下にもっと、潤いに満ちた暮らしを堪能してほしいのです。特に、太子殿下との夜の生活において」
「よ……夜の、ですか?」
何を言いたいのか察した侍女の耳が、ほんのりと色付いた。
コメント
1件
読み終わりました……。 葉青の鼻血、麗霞の春画の熱量、そしてお香で妃殿下の夜の生活に仕掛ける流れ……もう全部が好きすぎる。😳 「ムラムラする香り」って言い方、草。でもその後で煜峰殿下が登場して、恋恋が宮に向かうとこで物語がぐっと深くなった感じ。妃殿下の潤い不足ってテーマを、エロくて優しい方法で解決しようとしてるのがいいな。 二人三脚の動き、すごく胸がときめいたよ。次、お香が妃殿下にどう作用するのかめっちゃ気になる。🤍🌙