テラーノベル
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【短歌】
画面越し 笑う君見て 嬉しくて 触れられぬ距離 忘れてしまう
【短歌をテーマにした物語】
スマートフォンの画面に、君の顔が映っている。
「もしもし」
「聞こえてるよ」
「よかった」
それだけの会話なのに。
私は思わず笑ってしまった。
遠距離恋愛を始めて、三か月。
君が進学のために遠くの街へ引っ越してから、私たちは毎晩のように電話をしている。
最初の頃は、寂しかった。
学校であったことを話したくても、隣には君がいない。
帰り道に寄った店を見つけても、「今度一緒に行こう」と言うことしかできない。
休日になれば、なおさらだった。
以前なら会えた時間が。
今は、画面越しの時間になった。
「今日、どうだった?」
「普通」
「またそれ?」
「だって本当に普通だったんだもん」
「じゃあ、俺が面白い話してあげる」
「期待してる」
君が今日あったことを話し始める。
授業中に先生が言い間違えたこと。
帰りに買った飲み物がおいしかったこと。
駅で知らない人に道を聞かれたこと。
どれも、特別な出来事ではない。
でも。
君が楽しそうに話しているのを見ると。
私まで楽しくなる。
「それでね――」
君が笑う。
その笑顔を見ているうちに。
さっきまで感じていた寂しさが、少しずつ消えていった。
*
「ねえ」
「ん?」
「今、何してるの?」
「電話してる」
「そうじゃなくて」
「宿題してる」
「じゃあ邪魔してる?」
「ちょっとだけ」
「切ろうか?」
「……それは嫌」
羊と亀のお遊戯会
23
奏音•*¨*•.¸¸♬︎💙
10
映え無し

1
君が笑った。
「どっちなの」
「話してると宿題進まない。でも、切るのは嫌」
「わがまま」
「そういうことで」
二人で笑う。
そんな時間が。
私は好きだった。
*
ある夜。
いつものように電話をしていた。
けれど。
その日は、君の声が少し元気がなかった。
「どうしたの?」
「……ちょっと疲れただけ」
「大丈夫?」
「うん」
しばらく沈黙が続く。
画面の向こうにいる君に。
私は何もしてあげられない。
隣にいたら。
飲み物を渡すこともできる。
一緒に歩くこともできる。
何も言わずにそばにいることだってできる。
でも今は。
画面の向こう。
私は少し迷ってから言った。
「じゃあ、今日は私が話す」
「え?」
「今日あったこと。全部話す」
「全部?」
「うん。くだらないことも」
私は今日学校であったことを話し始めた。
友達との会話。
先生の話。
帰り道で見つけた猫。
「それでね、その猫がすごく――」
話しているうちに。
君が少しずつ笑い始めた。
「……何?」
「いや」
「笑ってるじゃん」
「うん」
君が笑う。
それを見て。
私も嬉しくなる。
離れている。
それは変わらない。
でも。
今この瞬間。
君と私は、同じ時間を過ごしている。
そう思えた。
*
電話を始めてから、一時間が過ぎた。
「そろそろ寝ようか」
「うん」
「明日、朝早いし」
「分かった」
「じゃあ、おやすみ」
「おやすみ」
通話を切ろうとする。
でも。
なぜか指が止まった。
「……ねえ」
「ん?」
「また明日も電話しよう」
「もちろん」
「絶対ね」
「絶対」
その言葉を聞いて。
私はようやく通話を終えた。
画面が暗くなる。
さっきまで映っていた君が消える。
部屋が少し静かになる。
やっぱり。
会えないのは寂しい。
触れることのできない距離は。
やっぱり遠い。
それでも。
今日、画面越しに見た君の笑顔を思い出す。
すると。
不思議と寂しさだけではなくなった。
明日も話せる。
明日も笑える。
そしていつか。
また直接会える日が来る。
そう思えば。
今日という夜も悪くない。
私はスマートフォンを枕元に置いて。
小さく笑った。
離れているからこそ。
声を聞けることが嬉しい。
顔を見られることが嬉しい。
笑ってくれることが嬉しい。
距離は変わらなくても。
二人の気持ちは、ちゃんとつながっている。
「おやすみ、また明日」
暗くなった画面に向かって。
私はもう一度、そう呟いた。
コメント
1件
ああもう、このエピソードめっちゃ沁みた…😭💕 「話してると宿題進まない。でも、切るのは嫌」ってやり取り、リアルすぎて胸がぎゅってなったよ!! 画面越しでも笑顔が見られるだけで嬉しいのに、それでもやっぱり触れられない距離が切ない…。でも最後の「おやすみ、また明日」って暗い画面に呟くところ、離れてるからこそ声を聞ける幸せを噛みしめてる感じがして、めちゃくちゃエモかったです…!! 次も楽しみにしてますね🌸✨