テラーノベル
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べりり、とカレンダーを破る。
桜を大きく繊細にあしらったものから、鯉のぼりが3匹踊るものになり、あと約2週間後に恋人の誕生日だと知らされる。
毎年プレゼントを用意し合ってていると、何となく面倒くさがられている気がしてくる訳で。でも俺は気にしない振りをして、君がどんな風に喜ぶのか予想しながら買い物をするのが楽しみだった。ラッピングはどんなのにしようかな。あ、サプライズでどこか連れていこうか。
そんな小さなわくわくは、盛大にへし折られてしまった。
「あー…。誕プレ?いいよいいよ。もう32回目の誕生日だよ?元貴と過ごせれば充分だよ〜」
「いや、でも…。ほら、形に残しておきたくない?例え100回目だとしてもさ」
「100回!?もう僕おじいちゃんどころか生きてるか分からないよ〜」
朝、テーブルで紅茶を飲みながら朝食を食べている時、何が欲しいかと聞いたらこの会話になってしまったのだ。笑いながら寝起きで回りきっていない呂律でそう返された。やっぱりサプライズにすれば良かったかな。よほど不貞腐れた顔をしていたのか、なんちゅう顔してるの!とまたも笑いながらつっこまれた。
「僕にとっては、元貴と居れる今日こそが素敵なプレゼントなんだから。」
と、急に柔らかいが真剣な声色で言われる。でも中々分かってくれない年上に苛立ちを覚えてきた。思わず、
「そう言って考えたくないだけでしょ。涼ちゃんめんどくさがりだから」
と口にする。困ったように君は
「違うよ!ただ本当に僕は元貴のおかげで活動とか楽しくやらせて貰ってるから…」
と言った風に反論しだした。途中でさえぎり声を上げる。
「分かってないな、そんなんじゃなくて!俺があげたいから言ってんじゃん」
するとムッとしたのか、
「そんなんじゃないって何?簡単に片付けないでよ。分かってないのは元貴の方でしょ!形になれば、元貴さえ満足できたら2人の思い出なんてどうだっていいの?!」
それだけ言って涼ちゃんは立ち上がり部屋に駆け込んで行った。やってしまった。こんなことにするつもりは無かったのに。それに涼ちゃんをこんなに怒らせたことはない。記憶にないだけかもしれないが、普段俺の我儘な態度も大目に見てくれる人がこうなるのを忘れるはず無かった。
「どうしたもんかなぁ…」
1人になりやけに広く感じるリビングでそう呟いた。
◻︎◻︎◻︎
しばらく考えた後、朝ごはんの食器の洗い物をしている時に1ついい案が思い付いた。スマホで確認すると、その案は実現可能な様だ。
決意を決めて寝室まで行き、ノックを3回、思ったより大きく行ってしまった。
10秒、20秒。30秒が経った。
返事が無い。寝ているのだろうか。涼ちゃん、入るよ。それだけ言い、そうっと扉を開ける。
目に入ったのは、泣いているような寝ているような姿でベットに横になっていて、思わず拍子抜けする。てっきり体育座りとかしてうずくまっているのかと思っていた。涼ちゃん、と。今度は先程より優しく、丁寧に言う。枕に顔を押し当てうつ伏せだから顔は見えない。でも、何、とだけ鼻声で言っているのが聞こえたため、緊張を溶かすようにゆっくり話し始めた。
「涼ちゃん、さっきはごめん。プレゼント選びが楽しいからって実際俺一人の事しか考えてなかった。でも、形にすればそれでいいって訳じゃ無いんだよ。渡す場所とか、タイミングとか。それによって同じ事でも印象が変わるでしょ。それも思い出になるかなって」
やっぱり歌詞なら想いも思いも率直に込められるのに、対面になるとどうしても口下手になってしまう。言っている途中で、俯いてしまう。次何を言おうか。唇を舐めて湿らせた時だった。ぎし、とベットが軋む音がしたと理解出来た時にはにはもう抱きしめられていた。
「僕もごめん。元貴が折角プレゼント用意してくれるっていうのに、大人気ないこと言って、その思いを無下にして。だから、欲しいもの考えてたんだ」
ゆっくりと離れていき、目が合う。
言葉が揃った。
「「ディズニー」」「行きたい!」「行かない?」
最悪な日でも、君の機嫌を直すくらいに素敵なプレゼントを。
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読んでくださりありがとうございます!
涼ちゃんの誕生日記念というめでたい日なので、もりょきとりょつぱ迷ったのですが…。好評ならりょつぱも書いてみようかなと思います。
更に、フォロワー様30人を超えました!伸びが早すぎて驚いています。本当にありがとうございます。
次もぜひ読んで頂けると嬉しいです。
コメント
4件
ひんやぁぁ、、甘くて好きです.... (ごめんなさい....語彙力が、、)
初コメント、失礼します🙏💦 お話読ませて頂き、フォローさせて頂きました。 💙💛も好きなので、読んでみたいです🐣