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内服に着替えなおし、コックピットに戻ると郷田は腕を組んだ。
アポロンがスクリーンから消えた理由を探していたのは、最初のうちだけだった。気がつくと、まだ船が太陽系内にいた頃に交信が途絶えたときのことを思い出していた。あのときは、船が地球から遠ざかったためにかえって問題は解決した。ワープが使える距離になると、ワープ通信も使えるようになった。質量ある物体まで運ばず、波のみを送るワープ通信では、物理ワープに比べて遥かに容易に、長い距離をつなぐことができる。それでも送信距離幅には限界があるから、地球から離れるにつきワープの切れ目ごとに挟まれる実距離がかさんで声のタイムラグは大きくなっていった。そんなとき、あの壁時計を見ながら地球を思い出しては、カレンの声を待ったものだ。
「アンドロメダ星雲、そこからでも見える?」
「ああ、もちろん」
お互い遠くに離れていても、同じ銀河、同じ星、同じ思いを共有することができたあの頃を、彼は懐かしく思った。
「……そうか」
郷田は唐突に声をあげ、宇宙地図を計器パネルからはずして部屋を出て行った。