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#大人の恋
鷹槻れん

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#ハッピーエンド
美凪ましろ
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朝、海のスーツを準備する為にクローゼットを開ける。
弥生からプレゼントはもらっていないんだろうか?自己顕示欲の強い人だから身につける物を渡していそうだけど、香水とかパンツとかだったらマジで気持ち悪い。
そんなことを考えながらクローゼットの中を見ていると、小物を入れる収納ボックスの横に無造作に置いてある長方形の薄い箱が見えた。
箱を開けると、そこには青いバラ柄のネクタイでハイブランドだと思うが、海は新宮電機の専務という立場でホストではない。
取引先とかそういう人から貰ったとするなら、もう少し無難な柄を選択するだろうし、これはたぶん弥生からのプレゼントだ。
弥生だとしたら彼女のセンスに呆れてしまう。
海もこんなところに放置するなら会社のデスクの中にでも入れておけばいいのに。でも、せっかくだから夜の帝王風にコーディネイトしておこうかしら。
ネイビーのスリーピースと薄いブルーのワイシャツとともに青いバラのネクタイを合わせておいた。
何気なく海用のサイドテーブルの上を見るとトレーに財布とともにあのボールペンも置かれていた。
テーブルにポパイエッグ、チーズとハムを挟んだホットサンド、オレンジジュースを並べていると海が起きてきた。
「そう言えば、テニスは基本が週2回で火曜日の午後と土曜日の午前中にしたの。何かあれば振替で他の日に変更もできるから」
「わかったよ、今度からは少しは俺からの連絡を気にしてくれると助かる」
「はい、気をつけます」
一瞬、私を心配しているのかと思ったけど、もしかすると私の帰る時間が気になるということなのかもしれない。
片付けをしていると海がスーツに着替えてきたがネクタイは青いバラではなかった。
「ネクタイどうしたの?」
「ああ、あれは・・・」
さすがに、アレをつけるという感覚は海にも無いようだ。
「誰かからのプレゼントでしょ?せっかくいただいたのに、箱に入ったまま置いてあったから」
放置という方がぴったりだけど
「取引先の・・・おばさんから貰ったんだけど、あまり好きな柄じゃないんだ」
「そうなのね、でも使わないのは勿体無いわよね、シルクだし。海がいらないなら貰ってもいい?」
「え?どうするの?」
「違うものに作り替えてもいい?」
「そういうことか、いいよ」
「ありがとう」
海は「それから」というと背広を開けて内ポケットを見せながら
「これありがとう、さすがビスコンティだね。書き味もいいよ。じゃあ行ってくる」
そう言って、出ていく背中を見ながら
ボールペンは内ポケットに入れて持ち歩く可能性があったんだ。
もっと、どうでもいいものにすればよかった。
いつものように、洗濯物をランドリーに出して掃除をする。
弥生はリビングでドラマを見ながら美顔ローラーで顔をコロコロとしている。
「ねぇ、奈緒さん。テニスはどうなったの?」
「火曜日の午後と土曜日の午前中にしました」
「そう、がんばって」
「はい」
どう伝えようか考えていたけど、聞いてくれてよかった。土曜日は海が休みになることがあるし、今頃いろいろ計算しているんだろう。
自宅に戻って掃除を済ませクローゼットを見にいくと青いバラのネクタイは丸めて収納ボックスの上に置いてあった。
ネクタイを持ってリビングに行きテーブルの上に置いてから、結婚するときに持ってくるかどうか悩んだが、結局持ってきてそのまま仕舞いっぱなしになっていたミシンと裁縫セットを引っ張り出してきてテーブルの上に置いた。
ネクタイを解体しようとした時に、ふと隠しカメラを思い出し、海があの日どうしてソファに座ったまま寝ていたのか気になったので見てみることにした。
SDカードを持ってベッドルームに行き、モバイルパソコンに差し込んだ。
上書きしながら録画するタイプなので、二日も前のものが残っているか不安だったが、ギリギリ録画されていた。
海は手に私がテーブルに置いたプレゼント持ってソファに脱力するように座ると「はあっ」と大きなため息をつくと深く背をもたれた。
しばらくもたれたあと、上半身を起こすとプレゼントを開け始めた。
箱の蓋を開けしばらく中を見つめてから背中を丸めて箱におでこにつけじっとしている。
なんだかお祈りか呪いでもかけているようで気持ちが悪い。
動きがないのでクリックして飛ばしていくと、ボールペンをテーブルに置き両手で頭を抱えた。
じっと見ていると、今度は背もたれにもたれそれからは動かなくなった。
「何これ?」
罪悪感があるんだろうか?
いや、あったらこんな馬鹿な結婚をしないでしょ。
ついでに、土曜日と日曜日の私が出かけていた時間の動画を確認したが、LINEらしきやりとりをしているものの弥生がくることはなかった。
ただ、共通している行動はソファに座ったり立ったりうろうろと歩き回ったりと落ち着きが無かった。
散歩に行きたい大型犬みたい。
特に収穫となる動画はなく、そのままSDカードをカメラに戻した。
青バラのネクタイの解体を始める。
裏地と合わせて2枚の布になるとアイロンをかけた所で夕食の準備を始める時間になった。
ミシンと裁縫道具を片付けていつものスーパーに向かった。
銀杏が並んでいた。
この季節だけのもの、酒の肴にしてもいいし
じっと銀杏をみつめていると
「茶碗蒸しに入っていると美味しいですよね」
背後から声がして慌てて振り返ると、テニススクールで一緒になった工藤さんだった。
あれ?こんなこと以前にもあった。
「こんにちは、もしかして以前イカの話をしたのも工藤さんだった?」
工藤さんはニコニコと笑って
「やっぱりそうだったんだ。この間、そんなきがしたけどいきなりイカの人ですか?なんて聞けなかったから」
「家が近かったんですね」
「献立は決まった?」
「茶碗蒸しと秋刀魚にします。工藤さんのおかげで献立が決まりました」
「秋刀魚かぁ。それいいわね、うちもそれにしよう」
しばらく一緒に買い物をしてから帰宅した。
お義父さまも秋刀魚と銀杏入り茶碗蒸しは喜んでくれた。
「おいしい」とか「おいしそう」とかそいういう言葉の一つで作り手は幸せな気持ちになる。
今の私は、嘘つきの海の言葉よりお義父さまの一言が嬉しい。
海は息をするように嘘を吐くから。
でも、その嘘つきのために今日も食事を用意して、時々抱かれる。
「はぁ」
ため息をついていても仕方がない。
「ただいま」
海はにこやかにダイニングに入ってくると頭にキスをしてベッドルームに向かった。
「茶碗蒸しか!家で食べるのは初めてだな」
「銀杏が出てたの、茶碗蒸し以外に串に刺して今グリルに入れてあるから、酒の肴にしよう」
「それはうまそうだ」
楽しい食事、楽しい晩酌。
普通に結婚した夫婦なら仲良し夫婦だ。
いつも通り、海を送り出して午前中に家事を済ませる。
今日はテニススクールに行く為、いつもの日常に小石を落としたレベルの変化が起きる。
スクールに行くと先日のお試しで見かけた人が数名いる中に工藤さんも見つけた。
コーチは私よりは年上だが、それでも十分に若いコーチで女性から人気があるようだった。
レッスン中、聞きもしないのになんやかんやと話をかけてくるから、古参の女性生徒に「何しにきたのかしら」とか「若くて綺麗だと得ね」などとめんどくさい。
特に平日の午前中ともあって、主婦が多くスクールでもグループというか、派閥のようなものが出来ているようで、工藤さんと二人でため息をつきつつ帰宅の準備をした。
帰りに二人でスーパーに行き、相談しながら夕食の買い物を済ませて帰宅した。
夕食の準備まで時間があったため、ミシンと裁縫道具を持ってきてあの青いバラで細いところは斜めに縫い合わせコースターを4枚作った。
「綺麗なコースターだね」
グラタンと玉ねぎのスープ、にんじんやきゅうりのピクルスをならべ、最後にレモンとハーブの水をコースターの上に置いた。
「元はネクタイだったんです、でも青いバラが綺麗だったのでコースターにしたんです」
青いバラに反応したのか、リビングでテレビを見ていた弥生がダイニングに入ってきた。
コースターを見ると一瞬険しい顔をしたが、すぐにいつもの表情に戻る。
「せっかく取引先の女性から頂いたのにクローゼットの中に箱に入ったまま放置してあったので、コーディネイトして準備したら、この柄が好みじゃないっていうので、貰ったんです」
一瞬、お義父さまの顔が歪がむ。
「海智も結婚したんだからこういうプレゼントを女性から貰うのは好ましくないな、奈緒さんだって気分は良くないだろう」
「断れない時もあると思うので仕方がないです。それに、その・・・おばさんだと言っていたので」
そっと弥生を見ると綺麗にネイルアートが施された爪が手のひらに食いこんでいるのが見える。
「それにしたって、些細なことも醜聞になる。この件はわたしから海智に注意しておくよ」
「でも、こんな風に再利用できたので今回は大丈夫です。冷める前に召し上がってください」
「ありがとう、本当に奈緒さんはいいお嫁さんだ」
ニッコリと微笑んでから
「弥生さん、青いバラが綺麗ですよね。でも、ネクタイだとナンバーワンホストみたいになっちゃうけど、コースターなら洒落てませんか?」
「そうね、奈緒さん裁縫もできるのね」
「はい、遊び程度ですけど。それでは」
弥生は悔しさが滲み出ているが、お義父さまの手前かなり我慢しているのがわかる。
今夜は、海のスマホはLINEの嵐になりそう。
コメント
1件
第16話、読み終えました。青いバラのネクタイをコースターに変えるアイデア、めちゃくちゃ痛快でした…!あの場面でお義父さまがスッと注意してくれたのも読んでて気持ちよかったです。弥生さんの悔しそうな様子が手に取るようにわかって、ちょっとざまあ…って思っちゃいました(笑)。でもそれ以上に、海がボールペンを内ポケットに入れてたシーンと、隠しカメラに映ったあの異様な様子がすごく気になります。何か隠してる?続きが待ち遠しいです。工藤さんとのやりとりも、こういう日常のほっこりが逆に不気味さを引き立ててて、いいバランスだなって思いました。