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芙月みひろ
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駒場東大前の私の自宅。ビデオ通話の向こうには、臨月が近い美咲さんの姿があった。
『あ、ひよりちゃん! 久しぶり。……えっ、コスプレ!? しかもお兄の好きな「NIKKO』の「女神」!?』
美咲さんは実は、元コスプレイヤーであり、今はプロのヘアメイクアーティスト。その目が、一瞬で「職人の目」に変わった。
『任せて。衣装とメイクなら、アタシの得意分野!』
画面越しの美咲のテンションに押されつつ、真帆による「物理的」な準備が始まった。
「よし、ひより。美咲さんに一ミリの狂いもない設計図を送るわよ。さっさと脱いで!」
「えっ今!?」
「プロにオーダーするのに、曖昧なサイズなんて失礼でしょ! ほら、早く!」
私はメジャーを真帆に渡す。下着姿になった私は、美咲さんと真帆の指示に従って腕を上げた。
「……アンダーバストとウエストは……あ、ひより、あんた少し痩せた?でも胸のサイズは変わんないね~」
真帆の手が、私の脇腹から腰のラインをなぞる。
『女神の持つ「神秘的なエロス」を強調するなら、スカートはミリ単位で切り詰めて、胸元は視線を誘導するデザインにアレンジかな。お兄、これ見たら鼻血どころか知恵熱出して倒れるかも!』
「ちょと、美咲さん、あんまり過激なのは……あぅっ!?」
真帆がメジャーを回しながら、ふざけて私の胸を「ぷにっ」と揉んだ。
「ちょっと、真帆! 何するのよ……!」
「いやー。やっぱ、ひよりの『素材』は最高だねえ。この柔らかさと白さ。女神の衣装は肌の露出が多いから、この質感を活かさない手はないわ」
一人のプロと一人の変態による、私の「解体新書」が作成されていく。私はメジャーに縛られ、いいように弄られるがままになっていた。
「ひより、あんたのこの太もも……。女神のニーハイとの相性が抜群だわ。……陽一さん、この『絶対領域』を不特定多数に晒されてるのを見たら、独占欲で死ぬわね」
真帆がニヤニヤしながら、私の太ももをパチンと叩く。私は恥ずかしさに身悶えしながらも、心のどこかで、この「武装」を纏って陽一の前に立つ自分を想像していた。
『よし、デザインは固まった!お兄の視線を釘付けにする最高傑作の衣装を作るからな!」
美咲さんの力強い言葉と共に、ビデオ通話は終了した。個室には、乱れた格好の私と、満足げにメジャーを巻く真帆が残された。
「……ひより、覚悟はいい? 当日は一万人の男たちに囲まれることになるけど」
「……それはさすがに言いすぎでしょ(笑)。陽一さんのためなら、陽一さんが、私だけを見てくれるなら。……私はなんだってできる。彼にとって『一番の推し』は私だって、分からせてあげる」
私は、床に落ちたブラウスを拾い、ボタンを留めた。
真帆はひよりの瞳を見て驚いた。その瞳には一人の女の嫉妬の炎が灯っていた。
***
一方、その頃の陽一はというと。
オフィスの自席で、ようやく『迷宮』の一つの大きな分岐を解明し、「……よしっ!」と小さく声を上げた。
その瞬間、シャツの肩が「びりっ」と裂けた。
「……あれ? また破れた? このシャツ、そんなに古かったかな……。新しいのを買わないと。というか、やっぱりこのシステム、物理的な負荷が凄すぎるよな……」
陽一は首を傾げながらひよりから届いたLINEに、返信を打った。