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クリスマスに投稿する予定だったのに間に合わず年内ギリギリになりました 申し訳ないです🙇🏻♀️🙇🏻♀️(殴 だらだら書いてたら長くなっちゃったのでお暇な時にでも見てくれたら嬉しいですっ👀✨
profile ┈┈┈┈┈┈
♀︎
・紅月 聖蕾
( こうづき せら )
・写真部
・高2
♂︎
・柊 葉琥
( ひいらぎ はく )
・美術部
・高3
「 初 雪 観 測 地 点 . 」
𝘴𝘵𝘢𝘳𝘵
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
― 全身に衝撃が走る感覚。
其れ迄の寒さも忘れて 、目の前の光景に見惚れた。
「 あのっ 、すみません 」
気付けば 声を掛けていた
遡る事一週間前 、部長から告げられた一言
「 今年の冬休みの課題は 、一人一人自分が一番 ’ 冬 ’ を感じるものを撮ってくる事にしようかな! 」
枚数は何枚でも良い 、と付け加えそう言った
私が入っている写真部はほぼ愛好会に近い部活と言える。部員は5人しか居らず 、好きなものを自由に撮り交流し合うだけの緩い部活。
勿論体験入部に来る人も少ないけれど
私は最初から此処に入ると決めていた
昔から撮る事が好きだった。
特に空や周りの街並みは 、日々移り変わる景色が見ていて飽きないからお気に入り。
「 冬を感じるもの 、か … 」
首に下げたデジタルカメラのフォルダを見ながら呟く
課題を告げられて直ぐ 、何と無く外に出てみた
冬と言えば矢張り雪だろうか
炬燵も良いなぁ
あ 、夕陽も綺麗だな
私は秋の夕陽も良いけど冬の方が好きだな
一つ選ぶなら 、何だろうか?
そんな事を頭がループして
歩いて歩いて
気付けば知らない所に居た
周りは正に ’ 田舎道 ’ が相応しい眺め
「 あ 、雪 … 」
今年最初の雪が降り始めた
もっと綺麗な場所だったら 、映えたのにな
「 … !」
でも其処に人が居た
真っ白な雪と同化して透明にさえ見える其の人は
唯只管に ’ 綺麗 ’ だと思った
此の人を撮りたい
身体に操られる様にして声を掛けた
「 あのっ 、すみません 」
そうして今に至る。
「 … ?何 」
其れ迄宙を見上げていた彼が振り返った
「 えっと その 」
「 貴方を撮らせて貰えませんか … ?」
嗚呼 、伝わるわけない
突然こんな事を言う変人が何処に居るだろうか
廻らない頭を必死に動かして絞り出した言葉だったけれど
「 … 撮るって
俺を? 」
「 はい っ 」
「 … 良いけど 」
え
「 え 、って笑
よく分かんねーけど構わない
ただ … 」
何か含んだ笑みを浮かべていた
「 俺の ’ 作品 ’ も手伝ってくんね? 」
不思議な出逢いから 、貴方との恋は動き始めました 。
「 何かポーズ撮った方が良い? 」
「 あ 、いえ大丈夫です!
気にせず普通にしてて下さい 」
「 … んー 、その方がムズいな笑 」
そう言いつつも特に顔を此方に向ける事は無い
自然体で居ようとしてくれているらしい
写真なんて忘れて魅入りそうになる程だった
先ず一枚 、とシャッターを切る
「 そういや ○○高校だろ?
俺も同じ 、 何年? 」
近くにある高校は其処位しか無いから直ぐ分かったのだろう
振り向き様にそう聞いてきた
「 あ 、2年です 」
「 じゃ後輩か 」
大学生に見えても可笑しく無い大人っぽさだったから 、一歳差だと聞いて少し驚いた
「 そんで俺の協力して欲しい事なんだけど 」
「 はい 、」
若しかしたら撮られるのが嫌で
其れのやり返しの様な事をされるのでは?
失礼かもしれないがそんな事も脳裏に浮かぶ
だが次に発せられたのは
想像の何倍もある意味変だった
「 俺 、美術部なんだけどさ
作品ってのは冬休みの課題みたいなもんかな
人物画描くから 、嫌じゃないなら被写体になって欲しいんだけど 」
「 … え
私なんかがですか? 」
「 あんただから良いと思ったんだけど? 」
無表情で言う彼の真意は解りそうにない
何も特別な意味なんて無いのに
脈打つ音が速くなっている
「 えっと 、それで協力になるのなら … 」
「 ん 、さんきゅ 」
其の後は黙り込んで黙々と作業に入っていた
私にも特に何か指示することなく淡々と描いているみたい
「 … あのさ 」
「 ?はい 」
「 明日もまた此処来てくれると有難い
流石に一日じゃ描き終わんねーわ 」
「 元々また来るつもりだったので来ます! 」
「 そっか 」
此の刻初めて笑顔を魅せた
脳内でシャッターが切られる
私 、此の人が好きだ
恋をしたことの無い私は
いとも簡単に惚れてしまった様で 。
「 お 、居た 」
「 こっ
こんにちは 」
「 昨日帰って思ったんだけど
名前聞いてなかったなーって 」
まぁ俺も名乗ってなかったわ 、と軽く笑って
私が座っていたベンチの隣に腰を下ろした
翌日 、本当にやって来た先輩は唐突に話題を降ってくる
「 あっ 、本当ですね
紅月 です 」
「 下の名前は? 」
「 … 聖蕾です 」
本当は余り好きじゃない
名前と自分の姿が似合わない気がしているから
「 ’ せら ’ か 」
簡単に名前呼びして来るから心臓に悪い
男子高校生の距離の詰め方ってこんなモノなのだろうか
「 俺は葉琥 」
「 … あれ 、もしかして 」
クラスの女の子達が ’ ハク先輩 ’ と言って騒いで居たのは此の人か
「 何? 」
「 あ いえ
女の子達から人気ですよね 、先輩 」
先輩は何故か苦い顔をして目線を下にやった
「 … あー 、そうでも無いと思うけど 」
「 んじゃ描くわ 」
鉛筆を物凄い速さで走らせて描く其の姿は 、今の話題を消し去ろうとしているみたいだった
不味い話だったと反省しつつ 、話し掛ける雰囲気でも無かったから自分もカメラに集中する事にする
そうして此の場所で会う日々が数日間続いた
「 … あれ 、居ない 」
此処数日と同じ様に 、今日もベンチに腰を下ろす
私より先に来る事が多かった先輩が居ない
「 後から来る かな 」
写真のフォルダには 、気付けば大部分が先輩を占めていた
此れを誰かに見られたら其れこそ変人だと思われるだろうし
こんなに撮って居るのに 、選ぼうとすると決まらない
課題の写真は 何と無く一枚が良かった
先輩の写真で 、一番美しいものを選びたいと思った
「 どうしよう … 」
「 … マジで俺ばっか撮ってんじゃん 」
「 ?! 」
背後から声が聞こえ振り向く
「 先輩?! 」
否 、振り向かなくても誰かは分かっていた卦度
「 作品出来たから見せたくて
どうせなら驚かせたいと思ったけど … 」
「 これはあの 、本当に冬休みの課題ってだけで!!
趣味で先輩を撮り始めたとかそんな事は決して無くて 」
「 別に俺何も言ってねーじゃん 笑 」
良かった 、悪く思われてないみたい
「 でも … 照れんな 」
「 ?何か言いました 、? 」
「 否 別に 」
耳が紅いのは 寒さの所為でしょうか
「 … どう? 」
スケッチブックを見せて来た
まるで別世界の私が其処に居た
決して多くない色使い
でも一つ一つが綺麗で 、白でも幾つもの濃淡で表現されている
お陰で顔が美化され過ぎている
色鉛筆だけでこんなにも美しい絵が出来るのか
改めて 心から ’ 好き ’ だと想った
「 まぁ 、まだ下書きだし
こっからキャンパスに描いてって感じだけど 」
「 凄い … です
私じゃないみたい 、とっても綺麗 」
「 … 初めてかも 、そんな事言われたの 」
「 え? 」
こんなに立派な絵を描く先輩だから 、見なくても分かる
きっと今迄の作品も素晴らしいモノだったのだろうと
でも 、違うのだろうか?
「 理解された試し無いし
変とか 、色に面白味が無いとか散々言われてきた 」
悔しそうに唇を噛み締めて居た
「 … 皆 、分かってないですね
先輩でそんな評価なら私の絵なんて塵以下ですよ? 笑 」
「 、はは
ありがとな 」
其れでも矢っ張り浮かない顔だった
何て言葉を掛けたら良い?
自分の語彙力の無さが嫌になる
「 あ 、雪 … 」
「 うわ本当だ 」
あの日 、先輩と初めて出逢った日
其の刻も雪が降っていたっけ
初雪 だったな
「 俺雪好きなんだよね 」
「 分かります! 」
冬にしか見れないし 、溶けてしまえば跡形も無くなる
あんなに白かったのに 、あっという間に自然に呑み込まれてしまう
そうか 、先輩と似てるんだ
白はどんな色も薄くしてしまう
溶け込む様な儚さが 、あの日の先輩にはあった
「 そういや初めて会った時も雪降ってたよな 」
「 ですね 」
初雪の日 、私の初恋も貴方に奪われたんですよ 。
経った数週間でこんなにも誰かを愛したいと想ったの 。
私は 軽く惚れた重い女でしょうか 。
とても口には出来ず
何と無く 目線を地面にやった
「 … 雪が止みませんね 」
此の意味もきっと気付かない 、でも其れで良い
作品の下書きが終わったのなら
先輩が此処に来る必要はもう無くなってしまった
私も今のフォルダの中から選ぶ事にしようか 、
「 … 此の儘時が止まれば良いのにな 」
「 、え 」
「 俺 雪好き 」
… 何だ 、吃驚してしまった
「 さっき言ってましたよ?笑 」
「 そんで 、聖蕾はもっと好き 」
「 … へ? 」
遂に耳が可笑しくなったみたいだ
自分に都合の良い様に聞こえる
「 い 今何て … 」
「 紅月聖蕾が好きって言った 」
痛い程に先輩の視線が伝わってくる
でも今の顔は見せられない
「 顔 、あげて 」
「 っ 先輩狡いです 」
「 其方こそ
気付かないと思った? 」
「 私も 好きです
こんなの初めてで 」
「 初めて貰っちゃおっかな 」
先輩の笑顔は一桁台の寒さなんて吹き飛ばしてしまう
あ 、今だ
咄嗟にシャッターを切った
「 ちょ 、今撮った?
盗撮なんだけど 」
「 最初に許可貰ったので 」
先程から悪戯されてばっかりなので少しやり返してみる 。
「 其れはそうだけどさ … 」
「 有難う御座います 、お陰で良いの撮れました! 」
「 なら 良かった
俺も 、有難う 」
絡められた指先で手が温まっていく
「 俺と付き合ってくれますか 」
「 はい 、喜んで 」
今日の雪は止みそうにない 。
「 へー 、聖蕾ちゃん珍しく人撮ったんだ!」
部長に写真を見せると第一声にそう言われた
今迄は風景ばかりだったから当然の反応だろう
「 タイトルとかある? 」
あったら書いてね 、と紙を渡して来た
どうやら少しの間部室内に貼っておくらしい
「 タイトル … 」
タイトル︰ ’ 消えない雪 ’
そんな想いを込めて一画一画丁寧に書いた
一番綺麗だと想った人と 、冬で一番美しいと思うもの
化学反応を起こした其の一枚は 、私の宝物に成りました 。
𝐹𝑖𝑛.