テラーノベル
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手芸教室の机の上で、涼ちゃんは静かに手を動かしていた。でも、途中で難しい工程にさしかかり、指先が止まってしまう。
フェルトの端がうまく縫えない。どうしたらいいか分からなくなって、涼ちゃんは不安そうに手元を見つめていた。
その時、隣にいた女子生徒がそっとのぞき込んだ。
「大丈夫?ここ、ちょっとむずかしいよね」
涼ちゃんが困ったように首をかしげると、
女子生徒はにこりと微笑んで、
「ここはね、こうやって針をいれて……ぐるっと回して――
うん、こう! やってみて」
優しく説明しながら、涼ちゃんの代わりに一部やってみせる。
涼ちゃんが「わあ……」とほっと小さく声をもらすと、
「大丈夫、すぐできるようになるよ」と励ましてくれた。
もう一度、今度は少し自信を取り戻した手つきで針を動かす涼ちゃん――
その表情には少しだけ温かな気持ちが灯っていた。
周りの同級生たちも、その様子をちらりと見て、
教室の雰囲気は前よりずっとやわらかくなっていた。
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