ー食事・ローレンの過去ー
エクスは、信じられないくらいに広々としていて、黄金の装飾が輝く大広間へ案内された。
目覚めた時から感じてはいたが、やはりこの宮殿の中は別世界のようだった。
「どうぞ。エクス様もこちらの椅子に掛けてください。」
そう言ってローレンが椅子を引く。
エクスの向かいでイブラヒムが椅子に腰を下ろした途端、おびただしい数の料理が運ばれて来た。どれも初めて目にするものばかりで、エクスは数々の美しい料理から目が離せなかった。
「すまないな。コーヴァスの伝統的な料理ばかりで、口に合うかどうかわからないのだが…」
イブラヒムはそう言って申し訳なさそうにこちらを伺う。
「いえ…本当に美味しそう。いい香りですし、見た目も綺麗で…」
「そうか!それはよかった。さ、遠慮せず食べてくれ!」
イブラヒムが料理を頬張っている隣で、ローレンは複雑な表情をしていた。時刻は午後1時で、それなりに腹も空く頃だというのに料理を手につけようともしない。
それに1番に気がついたのは、イブラヒムだった。
「ろれっ、全然食べてないが、食欲が無いのか?」
「いえ…何でもありません。少し考え事をしていたまでです。」
それを聞くと、イブラヒムは何かを理解したかのように、俯いて言った。
「先程の事だろう?…嫌な思いをさせてしまった…すまない。」
ローレンは少し驚いたような表情をすると、少し口角を上げた。
「あははっ、やっぱりイブ様に嘘はつけないなぁ…俺のことは何もかもお見通しですね。…そうです。さっきのこと。」
おかしくないです。男同士でも。俺もそうでしたから。
先程、ローレンはこう言っていた。しかしイブラヒムはなぜローレンがこのように発言したのか分からなかった。
(私が知らないということは、私とろれが出会う前に何かあったのかもしれないな…)
「ろれ、嫌なら構わないが、よかったら何があったのか教えてくれ。私は、少しでも君の力になりたい。」
透き通る、宝石のような瞳で見つめられ、ローレンは決意した。
「分かりました。少し長くはなりますが…」
俺には、かけがえのない親友がいた。
・
・
・
つづく
コメント
1件