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若井の車はゆっくりと街中を走っていた。後部座席では、涼ちゃんと元貴が静かに並んで座っている。
涼ちゃんは窓の外に視線を向けたまま、結局一度も目を合わせようとしなかった。
車内には穏やかな音楽が流れているけれど、三人の間には気まずい沈黙があった。
やがて元貴が、ためらいながらもふいに声をかける。
「……涼ちゃん。俺ら、今日ちょっとだけ、家に行ってもいい?」
涼ちゃんは小さく肩をすくめ、下を向いたまま小さく頷いた。
やがて車は涼ちゃんのアパートへ到着する。
若井がドアを開けて先に玄関に立つと、元貴と涼ちゃんもゆっくり後ろからついてくる。
部屋のドアを開けると、中は少し異様なほど乱れていた。
机の上には片付けられていないゴミや、洗濯物の山、本や日用品、楽譜が散らばって――
元貴は思わず目を丸くする。
それでも気を遣いながら、明るい声で言った。
「……涼ちゃんはベッドで休んでていいよ。俺たちが片づけるからさ!」
若井も「そうそう、任せときな。もうすぐ元通りになるから」と微笑む。
涼ちゃんは遠慮がちに頷いたが2人と一緒に部屋を片ずける。
本当はまだぎこちないけれど、二人の優しさが、少しずつこの部屋と涼ちゃんの心をあたためていく――