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夕方になってその部屋でコンビニで買ってきたお握りや飲み物で腹ごしらえをしながら、俺たちは作戦を立てた。母ちゃんが言うには、純の幽霊の出現する時期にはある程度の法則性があるらしい。
「今までの事件の起きた間隔からの推測なんだけどね。純君の幽霊は大体三週間からぐらい置きに現れているようなのね」
母ちゃんがお握りを頬張りながら言った。そう言えばあの連続殺人事件はそんな間を置いて起きてるよな。
「でもなんで?」と俺は一応訊いてみる。
「幽霊の都合なんて分からないけどね。ひょっとしたら幽霊にとってこの世に出現するためのエネルギーみたいな物が必要で、それを補充するのにある程度の時間がかかるのかもね。少なくともそう考えれば、どうして七人全員を一度に殺さなかったのか、という点は説明できるんじゃない?」
「それじゃ……悟が殺されてからもう三週間ぐらい経ってる。そろそろ出て来てもいい頃ってわけ?」
「そういう事になるわね」
その時双眼鏡で外を見張っていた美紅がアッと声を上げた。俺と母ちゃんはお握りを放り投げて窓に突進した。言ってるそばから現れたのか? いや、しかし夕方とは言えまだ外は明るいぞ。明るいうちから出られるのか、あの幽霊は?
だが、窓の下に見えたのはそれとは全然別の意外な光景だった。二十人ぐらいの中学生らしき連中が隆平の家を取り囲むようにたむろしていた。私服だがいかにもガラの悪そうな連中だ。
と、俺はその中に見覚えのある背の高い奴を見つけた。あれは俺の学校の番長の住吉じゃないか! ありゃ、住吉のそばにいるのは……絹子! あの馬鹿、さてはあれほど言ったのに。
とにかく俺は美紅を連れて外へ出た。まっすぐに住吉と絹子の所へ走って行き絹子に問いただす。
「こら! ここで何やってんだ?」
住吉は美紅の姿を見て例によって地面に片膝ついた姿勢になり、絹子に代わって俺にこう答えた。
「もちろん、美紅のアネさんのお手伝いに参りました。大体の事情はお兄さんのカノジョさんから聞いてます」
絹子は必死で俺の視線から顔をそむけていた。この馬鹿! ややこしい事になるからこいつらにはしゃべるなとあれほど言ったろうが! 住吉がとりなす様に俺と美紅に言う。
「水臭いじゃありませんか、美紅のアネさん。それに今度の事はお兄さんの命にも関わるかもしれない話だそうじゃないですか。カノジョさんもそれを心配して俺に助っ人を頼むと言ってこられたわけで。どうかカノジョさんを責めないでやって下さい」
いや、だから絹子は俺のカノジョじゃねえってば! まあ、いいや。しかし、どうする? この住吉の性格からして、帰れって言われて素直に引き下がるとは思えないな。
「いいんじゃない? 見張るなら人数は多いほどいいわよ」
と、これは俺の母ちゃん。頭上の窓から顔を突き出して俺たちに向かって言った。
「そこの番長君! じゃあ見張りは頼むわよ。ただし、例の幽霊が現れたらあたしたちにすぐに知らせてあなたたちはすぐにそこから離れるのよ。いい?」