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#世界が私を嘘という
EP.10 新しい朝の、冷たい手触り
あの喧騒から、数ヶ月が経った。
健太と、その共犯者であった戸田は逮捕された。警察に送った膨大なデータは、前尾の不審死に関する再捜査の決定的な引き金となり、彼らが過去に行ってきた数々の余罪も次々と明るみに出た。
瑞希のスマートフォンには、すべてを知った親友の亜美から、何度も謝罪のメッセージが届いていた。職場の同僚たちも、自分たちが健太の言葉を鵜呑みにして瑞希を追い詰めてしまったことを深く悔やんでいるという。
周囲の誤解は解け、世界は元の形を取り戻したはずだった。
引っ越しを終えた新しいアパートの部屋で、瑞希はカーテンを開けた。窓から差し込む朝の光は温かく、どこまでも穏やかだ。
「……終わったんだよね」
瑞希は静かに呟き、キッチンへ向かった。
新しく買い直した、シンプルな白いマグカップにコーヒーを注ぐ。かつて自分の認識を狂わせた、あの鮮やかなシトラスグリーンのカップはすべて処分した。今の自分の手元にあるものは、間違いなく自分で選び、自分で買ったものだ。
コーヒーを一口すする。温かさが身体に染み渡るのを感じながら、瑞希はふと、リビングのチェストに目を留めた。
引っ越しの片付けの際、まだ開けていなかった小さな段ボール箱が一つだけ残っている。身の回りの細々とした小物を詰めた箱だ。
瑞希は鋏を手に取り、段ボールのガムテープを剥がした。中には、古い文房具や予備のキーホルダーなどが乱雑に入っている。その底に手を伸ばしたとき、指先が冷たい金属の感触に触れた。
「え……?」
箱の底から取り出したのは、一本の小さな、見覚えのない鍵だった。
古びた銀色の鍵。この新しい家のどこのドアの鍵でもなければ、前の家の鍵でもない。もちろん、自分でここに入れた記憶など、全くなかった。
心臓の鼓動が、静かに速くなっていく。
健太はもう拘留されており、この家を知るはずもない。家中の防犯ロックも確認済みだ。なのに、どうして自分の荷物の中に、こんなものが紛れ込んでいるのだろうか。
瑞希は震える手で鍵を握り締めた。
(私が、引っ越しのドタバタで無意識に紛れ込ませただけ……?)
(それとも、まだ誰かが……?)
自分の記憶はもう正常なはずだ。世界も正しく回っているはずだ。
けれど、手のひらの中にある冷たい金属の感触だけが、瑞希の足元を再び静かに揺らし始めていた。
窓の外では、何も知らない小鳥たちが、いつも通りにさえずっている。
#世界が私を嘘という完結しました!
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腐ったはんどくりーむ
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耀聖(ようせい)
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コメント
1件
那月さん、完結おめでとうございます…!😭💕 最後の鍵、めっちゃ不気味でゾワッとしたよ…!「終わった」と思わせておいて、また新しい謎を残す感じがもう、那月さんらしいニクい演出すぎる…! 前尾さんの事件もスッキリ解決して、瑞希がやっと平穏を掴んだかと思ったら、まさかの拾い物。これってまた誰かの罠なの…? それとも瑞希自身の記憶の問題…? 小鳥が無邪気にさえずるラストが、逆に瑞希の心の不安を際立たせててズルいよ…! 最後までドキドキさせられっぱなしでした! 素敵な物語をありがとうございました🌸