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「あれ、実はほぼ実話でその宝を奪いに来た賊が桃太郎なんです」
桜花姉が告げる。
「ぷっ、あはは、桜花ちゃん何言ってるの?」
蕾さんが嘲笑う。
キッと睨む桜花姉。
「ホントだよねぇ」
眠子さんも同調する。
「~~~~~~~!!!」
桜花姉は涙を堪えて、こぶしをぎゅっと握る。
ただ1人だけ、違う反応を示していた。
「さくらっち!それ詳しく!」
「紫音ちゃん……?」
桜花姉は今にも溢れ出そうな涙目でしおりんを注視する。
「だって桃太郎って桃から生まれたんじゃなくて、老夫婦が桃食べたら若返ってHしてできた子が桃太郎でしょ!?」
しおりんの目が輝く。
「違う!そういう事じゃなくて!」
桜花姉の叫び声が洞窟に轟く。
「うん、わかってるよ。続けて」
しおりんがたしなめる。
「え?」
「僕ね、ずっと気になってたんだ。まもっちとさくらっちの頭にあるコブ」
「紫音ちゃん……?なんでそれを……?」
「だって何度もおんぶされてるんだよ。さくらっちのコブも初詣の時に目に付いた。僕達には無いそれ。僕の推察だけど、希導家にはあるんじゃない?」
「「コブ……?」」
蕾さんと眠子さんが同時に呟く。
「なんなら今見せてあげたら?」
俺と桜花姉は頭を下げて、みんなにそれを見せる。
サッとみんなが俺と桜花姉の頭を撫でる。
「「確かにある」」
「ですね」
蕾さんと眠子さん、そして島田さんも驚きの表情を見せた。
「これって?」
蕾さんが訊く。
「これはあたし達が鬼の末裔だって証」
「角じゃなくて?」
「人間の遺伝子が強くて中途半端にコブが出来たんだっけ?」
以前、伯母さんに教えてもらったことを思い出す。
「じゃあ、本当に鬼は存在していた……!?」
蕾さんが呟く。
「何度も言ってたでしょ?」
桜花姉の主張。
「だって、鬼なんておとぎ話じゃなかったの?」
「事実、不自然にコブのある人達がいる訳だし、おとぎ話って線は薄れて行ったんじゃない?」
しおりんが今までの蕾さんの主張を否定する。
「聞かせてよ、さくらっち。鬼のこと」
目元をゴシゴシと拭く桜花姉。
「昔々、名のないこの島に数人の鬼がやって来ました。人々は鬼を恐れて彼らをこの島に入れて貰えませんでした。悲しみに暮れる鬼達に、この島の長とも言える一族は鬼にあるお願いしますをしました」
「川の流れを穏やかにして欲しい。でしたね」
「はい」
桜花姉の語りに島田さんがいつの間にか聞いていたのか、補足する。
「もしかして、あの岩……!?」
「そう。鬼流れの岩。あれは鬼が運んできたの」
蕾さんが驚愕する。
「そして島の人々は感謝して、鬼を迎え入れたの」
「伝説だとこの洞窟で宝を見つけるんだっけ?」
「そう、紫音ちゃんの言う通り。この洞窟の入口には大きな岩で塞がっていた。まるで、当時の先祖たちは鬼が来て、この扉を開けるのを予知していたかのように隠していた」
「鬼はその岩を退けて人々に宝を持ち帰った」
「ふむふむ。続けて」
しおりんが促す。
「日本のある地域に、1組の強欲老夫婦がいたの。その夫婦がこの島の宝の存在を知り、孫に悪い鬼から宝を取り返してこい。あれは信長様のものだと唆したの」
「なんでわざわざ、織田信長の物にしようとしたのさ。自分たちで独り占めすればいいのに」
#ラブコメ
こげ丸
梨本和広
「当時の織田信長は室町幕府を滅ぼしていたの」
「本能寺の変が起きる直前だね」
ふむふむとしおりんは相槌をうつ。
「その夫婦は日本統一目前の織田信長に恩を売っていれば、自分たちも高い地位に登れると目論んでいたの」
「ふむふむ、それで孫をこの島に向かわせたと」
「でもどうして桃太郎と結びつくの?」
それまで黙っていた。蕾さんが質問を投げる。
「それはね……」
プルルルルルル!
スマホの着信音がなる。
「あ、お母さんからだ」
しおりんのスマホだった。
「うん。え?もうそんな時間!?」
全員で時刻を確認する。
既に午後を回っていた。
「うん、今からまもっちに送ってもらう!」
プッ、ツーツーツー。
「ごめんまもっち!午後のリハビリの時間まであと少しだ!送ってくれない?」
パンッと両手を合わせて車椅子に座ったままのしおりんが頭を下げる。
「もちろんさぁ」
「それじゃあ、僕たちは失礼するね!」
急いでしおりんを病院に送る。
「とりあえず、ここまでですね。希導桜花さん、私はその続きをぜひ拝聴したいので落ち着いた場所で続きを伺っても?」
「はい。ぜひ」
「私たちはどうする?眠子さん」
「この島の文献漁ってみてもいいかもですね」
「じゃあ、図書館行こっか」
「はい!」
桜花、島田、蕾、眠子はそれぞれ目的地を選定していた。
あれから数日が経った。
蕾さんと眠子さんは鬼に対する関心が変わったようだった。
しおりんは桃太郎の老夫婦がどのようなプレイを行っていたか、妄想し、語っていた。お母さんや看護師さんからはあの後からだったので、俺が白い目で見られていた。
「朝露、性教育もいいが受験まであと少しなんだ。気を抜くなよー」
美咲先生がたしなめていた。
そんなこんなで冬休み終了。
GO TO HELL! GO TO HEAVEN!?
逝くなら当然天国!?神も天使も悪魔も閻魔も全ては幻想!信じるなら連れてこい!
うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!
このシャウトで起こされるのも慣れたものである。
鬼道島初めての登校である。
樫の木の廊下を通り職員室へ。
「おう、来たな希導。今更だと思うが、あたいがお前の担任だ」
「よろしくお願いします!」
美咲先生に挨拶を済ます。
キーンコーンカーンコーン
「予鈴だ。行くぞ」
「はい!」
登校初日、既に2週間ほどこの島で過ごしたが、やはり新しい環境というのは緊張するものである。
「ガッチガチになるな。見知った奴もいるんだ。かしこまる必要はないぞ」
ギチギチと不慣れなパイロットが乗るロボットのように、手足がガチガチになる。
「頭ではわかってるんですが……」
廊下を通り、高等部1年と記された教室札。
ほんとに1クラスなんだな。
ガラッと美咲先生が教室のドアを開ける。
「おら野郎ども席に着けー」
美咲先生の号令で、席を離れ話したり、スマホをいじっていた生徒たちがガタガタと自席へとつく。
「さて、新学期な訳だが、各自宿題は?」
「「「「やって来ました」」」」
全員の声が重なる。
「よろしい。クラス委員長、HR終了後全員分回収して昼休みにでも持ってこい」
「はい!」
クラス委員長と呼ばれた生徒は、元気よく答えた。
「そして気になってるだろうが、転入生だ。ほら挨拶」
「はい……ゴホン」
咳払いをして自己紹介をする。
「希導守です!母の仕事の都合で高校卒業までお世話になります!」
わー、ぱちぱち。
まばらな拍手。
「はい質問!」
挙手したのは、ほんとにいやがった橘徹だった。
「手短にな」
美咲先生が釘を刺す。
「ズバリ!好きな異性のタイプは!?」
シーン。
教室が凍りつく。
「よーし、HR終了だ。希導の席は窓から二番目。相川恵あいかわめぐみの隣だ。こいつはクラス委員長でもあり、生徒会の一員でもある。わからんことがあったら頼むぞー」
「はいな。よろしゅうな希導君」
「こちらこそよろしく」
「肩肘張らんでええで」
ニコッとエセ関西弁で陽気に話す彼女は、胸まで届く髪を右側から下ろし、少し大人っぽい顔立ちだ。
制服着てなかったら大学生に見える。
「色々聞きたいけど、みんなの宿題回収しなきゃアカンから後でなぁ」
彼女はそういい、1人1人から課題を回収していた。
程なくして数学の先生が入室してきた。
キーンコーンカーンコーン。
昼休み、うーんと背を伸ばす。
「希導君、せっかくだし、生徒会室でお昼にせぇへんか?」
「おーおー、早速モテモテだなぁ」
徹がだるそうに茶化す。
「いきなり生徒会なんて……」
「ええからええから」
背中を押されて無理やり気味に生徒会室へ。
「へっ!?」
長テーブルの上座には
見知った顔が。
「あ、眠子さん。お久しぶりです」
ぺこりと挨拶。
「久しぶりって言うほど、久しぶりでもないような……」
明らかに動揺している。
「ありゃ、二人は知り合い?」
「そうですね」
「ええ、まぁ」
俺の後に眠子さんが目を泳がせて答える。
「ふふふ、ここにはライバルいないからチャンスだよぉー」
間延びした声を発するのは眠子さんのすぐ横で、個別のテーブルで弁当を広げている女生徒がいた。
「忍しのぶうるさい!」
「真っ赤になっちゃってかわいぃー」
忍と呼ばれた子はセミロングの髪をゴムひとつで結んでいる。
「それで、相川さんはなんで希導クンを連れてきたの?」
「それなんやがね、生徒会に入れようかと」
「「は?」」
俺と眠子さんの声が重なる。
「転入してすぐには決められないわ!」
「ええやん、チャンスやで?忍ちゃんも言ったけど、ここにはライバルがいない。距離を縮めるなら多少強引にでも行かなきゃやで」
コソコソと女子ズが話す。
チャンスやらライバルやら聞こえたけど、なんのこっちゃ?
「それに、この生徒会は何故か女子しかいないから、男手が欲しかったんや」
「はぁ、でも生徒会に入るには選挙とかが必要じゃ?」
「こんな小さな学校にあると思うんか?」
「緩いですね」
「辺鄙な場所やからね。で答えは?」
「男手なら他にも沢山いるのでは?」
「一応いるにはいる」
「へ?だったら……」
「と言ってもその子力ないから」
恵さんがぼやく。
「ごめんねー。非力な男子でぇ」
忍さんがパンッと両手を合わせる。
「へ!?」
「忍はおとこの娘なの」
眠子さんが告げる。
「ぴーーがががががががー!」
頭がショートした。
「まぁ、学校側がok出すなら」
俺は何とか理性を取り戻して、一応検討する旨を伝える。
ポリポリと頭を搔く。
「決まりや。よろしゅうな」
「いや、話聞いてました!?学校側の許可が降りない限り入りませんよ!?」
「それなら構わんぞ」
「美咲先生!?」
ガラッと美咲先生が入ってきた。
「生徒会の顧問はあたいだ。あたいが良いといえばそれで即決だ」
「でも……」
「希導。この通ほぼり女子ばっかりでな。頼めないか?」
「うーん……考える時間くれませんか?」
「わかった。いい報告待ってるぞ」
それだけ残し、退室して行った。
「まずはご飯食べようや」
相川さんが俺を席へ座らせて、今日のお昼は半ば強引気味に生徒会室で昼を食べた。