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海の紅月くらげさん
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「アイツに任せておけば安心だからだ」
「そうかな」
安心、ねぇ。随分余裕なものだ。
二人の機嫌を更に損ねるように、わざとらしく笑みを浮かべながら言葉を続ける。
「武蔵も潤も、なにか勘違いしてない?」
武蔵が詰め寄るようにじりっと靴音を鳴らして一歩近づいてきた。
「……どういう意味だ」
「王子の座を狙ったライバルなのに」
本当なら二人ともここにくるべきではなく、彼女のところに行くべきだ。
それに僕は武蔵にだけ今日のことを連絡したのに、他の二人も連れてきちゃって。馬鹿だね本当に。
武蔵って学年違うし暴走しやすくて不利かなぁと思ったから、ちょっとチャンスをあげたのに。……まあ、本人は 望んでいないだろうけれど。
「四人は敗者で、たった一人が勝者になれる。これはそういうゲームなんだから」
「……泉」
ずっと口を閉ざしていた潤がやっと口を開いた。
「彼女と何を話したの? 何を言ったの」
口調はいつも通りだけれど、眉間には縦じわが刻まれていて、口はへの字に曲がっている。最近の潤では珍しい表情。まるで子どもみたいだ。
「僕が呼び出されて、改めて聞かれただけだよ。このゲームをする理由を」
どうやら納得できないらしい潤は更に眉間の皺が深くなっていく。
「今日なんのつもりで武蔵に連絡したの」
教える気なんてないという意味を込めて無言の笑みを返す。
「泉、俺たち以外で遊ぶのをやめろ」
「武蔵こそ、ふざけてるのもそろそろやめたら? もっと最年長らしい振る舞いをさ」
「すぐ話題をすり替えるな」
目の前の武蔵にはいつものような明るくてどこか抜けている雰囲気はない。
真剣なときだけ切り替わる険しくて近寄り難い雰囲気。
いつもは能天気そうな武蔵だって、穏やかで人当たり良い潤だってこうやって裏の顔がある。表面だけで接していたら知ることのない深く暗い部分。
本当は武蔵だって潤だって救いを求めているくせに。
そこを隠しているうちは彼女だって本当の意味で君たちのありのままを見てはくれない。
何もせずに理解なんてしてくれる人はいない。曝け出さなきゃ内側なんて誰にも気づいてもらえないのだから。
「みんなもう少し焦りなよ」
嫉妬や焦りを上手に押し込むいい子はやめて。
「じゃないと、とられちゃうよ」
思ってもみない相手に案外あっさりとられちゃったりするかもしれない。シンデレラゲームも、恋愛も勝つか負けるか、そのどちらかしかないのだから。