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今の日本は都道府県をアルファベットを用いて呼んでいる。数十年前から住んでいる者は昔の地名で呼んでいる。福島県のD6地区は福島市の南を指している。D6地区は最前線に2番目に近い地区となっている。人が少ないところでは無いのかと思っていたがかなり人が多いというのが正直な感想だった。ただ、一人一人が一生懸命、助け合いながら生活しているというイメージが今では強い。そして、今、その人たちが血まみれになって倒れていた。
俺と海斗少尉、ハリー軍曹は商店街の表門から中に入って数分たっていた。負傷した一般人を介抱している救急隊員が多く見られた。しかし、人員が足りていないのだろう。治療が間に合っていないように感じた。
「これは急いでグリーンを呼んだ方がいいわね」
「ああ…ここまで酷いとは思わなかった」
しばらくして歩いていくと負傷者が減っていき、逆に死体の数が著しく増えていく。腹を切られているもの、頭の一部を食われているものなど言葉に表せれないような形になったものと絶句してしまった。正直、自分はこのとき吐き気など感じなかったのが不思議で仕方がなかった。
「ううっ…たす…けてくれ…」
居酒屋の戸の近くで座り込んでいる人がいた。頭から血を流して右足が逆方向に曲がっていた。俺は駆け寄って反応があるか確認した。
「大丈夫ですか?狩人です。僕の顔が見えますか?」
「う…ううっ…」
苦しそうな声を出しながら俺の方を見る。口から血が垂れており、目も充血していた。そのまま俺の肩に乗っかるように体を倒した。
「大丈夫ですか?!待っててくださいね、グリーンが来ますから」
「龍也!そいつから離れろ!そいつは鬼だ!」
「え?」
「ううっ…肉…にくぅううう!!!」
苦しそうな声を出していた人間は角を生やし、牙を鋭くなり、叫びながら俺を食おうとしてきた。こいつは鬼だった。俺は体がすぐに動かなったが威吹少尉が俺を後ろに押し飛ばし、鬼の首を両腕でロックし、そのまま倒れ込む。
「うううっぐぅ!!!」
「ハリー!頭撃て!早く!」
「はいよ!」
ハリー軍曹はサプレッサーをつけたハンドガンで鬼の頭を撃ち抜く。鬼はすぐに倒れ込んだ。
「海斗少尉…すみません…」
「はぁはぁ…仕方ない…情に訴えかけて殺しにくる鬼もいる…立てるか?」
「はい…」
すぐに立ち上がり、奥に移動していく。道中は鬼が潜んでいる様子もなく、移動できた。3分たった時、狩人の青い隊員服をきた人間が銃を持って座り込んでいた。海斗少尉がゆっくり近づき顔をのぞき込む。
「お前は…第10部隊の隊長の今井曹長か?」
「ああ…海斗少尉か…やっとバーサーカーが来てくれ…た。頼む…助けてくれ…他の隊員たちが…捕まって…ぶぁ!」
口から血を吐き、咳き込む今井曹長。両大腿部には穴が空いており、右腕は動いていない。ハリー軍曹はポケットから布を出して大腿部にあてがう。
「…ハリー軍曹、今井曹長を頼む…」
「了解…龍也頑張ってこい」
「…はい」
「今井曹長、死ぬなよ」
俺と海斗少尉はさらに奥に進んでいく。進んでいくにつれて大破した車が何台が見えていき、縄でくくり付けられた人間が見えた。俺と海斗少尉は車の物陰に隠れて様子をうかがった。括り付けられてる人達は狩人の隊員7人だった。周りにはかぞられるだけで17体の鬼が居た。特にモヒカンに黒いレーザーの上着を着ているやつと黒いパーカーに血まみれになった白い長ズボンを履いたやつが異彩を放っている。
「あいつら…爪と針だ…」
「え?爪と針って…」
「爪鬼と針鬼は仲のいいチンピラ集団だ。あいつらの周りにいる鬼たちは舎弟だろう…にしても妙だな…あいつらがこんなにテロまがいなことをするとは思えん」
「狩人ってアイツらのことマークしてたんですか?」
「そうだ。今日、10部隊と11部隊が討伐に当たる予定だったんだが…失敗したのか?」
俺たちから見て奥の方には縄で椅子にくくり付けられた隊員が1人居た。顔中が血まみれになっており微かに声が聞こえる。黒いパーカーに身を包んだ鬼が近寄って話し出す。
「なぁなぁー遠藤さんよぉー僕はあいつと違って言葉で解決したいんよぉー。頼むから僕たちのことは今後見逃してくれないかなぁー?」
「はぁはぁ…俺ら狩人が見逃すつもりあると思うか?お前らみたいなやつはチンピラで根性無しに…」
「おいおい、針ちゃんー俺も同…」
「んだとゴラァ!!!!?ふざけんなよォー!?!」
針鬼は遠藤と呼ばれている隊員の顔に拳を振り込む。遠藤は血反吐を吐き、息が荒くなっていく。針鬼は拳に着いた血を舐め回す。
「針ちゃんーその血舐めさせてぇー」
爪鬼は黒いレーザーを着ており、針鬼の拳の血を舐めましている。他の鬼たちは色とりどりな服を着ている。
「海斗少尉、どうしますか?」
「俺が先頭に立つからお前はバックアップしろ」
「でも!あの隊員たちは人質ですよね?」
「安心しろ、あいつらぐらいなら隊員は殺されない」
そう言いながら海斗少尉は立ち上がり物陰から出る。周りの鬼がこちらに気づき、海斗少尉に警戒する。爪鬼がこちらに気づきニヤニヤと笑い出す。
「お!あんたは海斗少尉じゃないですかぁー…どうですか?」
「よぉ爪鬼。おめぇの爪を切り落としてやるから一旦待ってろよォ」
「へっ!俺をやるより17人もいる鬼を殺せますか?」
「殺せるよ」
そう言った瞬間海斗少尉の右手に持っていてたハンドガンが火を吹いた。撃った先には拘束されている隊員を殺そうとしている舎弟の鬼だった。その鬼のこめかみに弾が命中した。周りがザワザワとしだす。針鬼が止まっていた頭が動き出したように海斗少尉を睨らみ叫んだ。
「てめぇら!あのクソッタレか人質を殺せ!」
周りの鬼が奇声を上げながら海斗少尉に近寄っていく。海斗少尉は鬼を避けつつ正確に鬼たちの体に弾を打ち込んでいく。それに加えて人質に手を出そうとする鬼にも弾を撃ちこんでいく。
「すげぇ…って感心してる場合じゃない!俺もバックアップを!」
龍也は体を物陰から出し、サポートをしようと支給されているセミオートのアサルトライフルを構えようとする。だが、視界の端に遠藤に伸ばした爪を振り被ろうとする爪鬼が見えた。
「やらせるかぁあ!!」
龍也は地面を蹴り、爪鬼に近づきタックルを決める。爪鬼は少しふらつきこちらを睨む。俺はベルトにかけているナイフを引き抜く。刃は鬼の皮膚を切れるように特殊な金属でコーティングされている。
「このがきぃ!!?」
「…こい!」
「がぁ!!!!あ?」
爪鬼のこめかみから血が吹き出し、倒れる。弾が撃ってきた方を見ると海斗少尉が鬼の攻撃を避けながらハンドガンを撃っていた。
「海斗少尉…。それより、遠藤さん!」
俺は持っていたナイフで遠藤を縛っていた縄を切る。
「大丈夫ですか?」
「ああ…ありがとう…。あの…鬼共がァ!!!」
遠藤は走り出し、近くでどうしていいのか分からなくなっていた針鬼の顔面に拳を振り込む。針鬼は少し後ろによろめき目がぐらつく。
「てめぇ……」
「はぁ…はぁ…ぶっ潰してやるよォ!!」
「龍也!!奥にいるほかの隊員の解放をしてくれ!」
「わかりました!」
龍也はほかの隊員の所に近づき、縄などを解く。海斗少尉の周りにいた17体は半分近くいなくなっていた。遠藤は針鬼に猛烈な拳のラッシュを決めて針鬼の攻撃を出させないようにしていた。そして、車のエンジン音が異常なまでに聞こえる。エンジン音が聞こえる方を見ると狩人の装甲車が近づいてきていた。龍也がいるところから5m手前で止まり、中からブルーチームの第2部隊がでてきた。隊長である近藤中尉が何かイカつい銃を肩にかけていた。
「近藤!!実弾じゃないよな!?威力は!?」
「実弾じゃねぇよ!対鬼専用だぁ!威力は…知らん!」
「やばいなぁ…龍也!!隊員を建物の中に誘導しろ!急げ!」
海斗少尉を鬼の攻撃を避けながら指示を出す。遠藤も近藤中尉の装備に気づき、針鬼に膝蹴りを顔にかまして急いで建物に入る。龍也も急いで隊員を避難させる。
「行くぞぉ!!ゴラァー!」
その叫びと同時に弾が2発こちらに飛んでくる。海斗少尉は異変に気づいて逃げようとする針鬼の両足を弾で撃ち抜き、近くに倒れている原付バイクを立てて後ろに隠れる。弾が床と接地し爆発が起きる。爆風が建物に入っていても感じた。5秒後爆風が止み、外を見る。そこには爆発に巻き込まれた鬼たちが倒れ込んでいた。
「いやぁ!爽快だな!」
「近藤!!!死ぬかと思ったぞ!!」
海斗少尉は原付バイクと一緒に少し飛ばされていたようだったが傷は全く見られなかった。だが、かなりカンカンに怒っていた。
「いいか!市街地での戦闘ではグレポンの威力は5段階中3にしなきゃいけないんだぞ!?あれは5だぞ!?」
「いや!4だぁ!」
「死にかけてるから関係あるか!」
「そんなことよりあそこに足ぶっ飛んだ主犯の鬼に問い詰めようぜ」
近藤中尉は両脚が吹き飛んだ針鬼を指さす。海斗少尉は針鬼に近づき近くの電柱に座らせる。
「おい、起きろ」
「ぅう…脚が…」
「脚なんかどうでもいいから、教えろ。なんでテロまがいなことをした?誰かの入れ知恵か?」
「い、言えない…何も言えない…それよりつーちゃんは!?爪鬼は!?」
「おい、質問に答えろ。答えたらお前をボイドの収監所に送ってやるから」
「言えないよォ…言ったらあの方たちに殺されちまう…」
「誰だ?」
針鬼は泣きながら質問を拒否する。海斗少尉は針鬼に何度も質問に答えるように促す。そのうちに伊吹とハリー軍曹、今井曹長がこちらに到着した。
「これなら言えるよォ…そのうち人間は住む場所がなくなるかもしれない…鬼たちは力を手に入れるんだァ」
「どういうことだ?何があってそんなこと言えるんだ?」
「それは…王様がいるからだよ…僕らを助けてくれる…お…う…」
針鬼は途中で言葉を閉じる。そして、顔がみるみる青くなっていく。何かを見つけて血の気がなくなっていく。
「あ…あ……ああああ!!!!!」
針鬼は両手で爪鬼が倒れ込んでいるほうに近寄る。海斗少尉はハンドガンを向けて撃とおうとする。
「つーちゃん!つーちゃん!僕死んじゃうよォ!心臓が冷たいんだァ!つーちゃん!!返事して!!」
針鬼が叫んだと同時に心臓から大きな氷の破片が現れる。血が周りに飛び散り、その場に倒れる。海斗少尉が近づいて意識があるか確認をするがもう死んでいた。そして、爪鬼も死んでいた。爪鬼の方には小さく氷の破片がむきだしていた。