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「んで、お二人のご関係は。」
ぶくぶくと太った頭の悪そうな刑事が
応接間のソファに
まるでこの家の主人かのように
どっかりと座り、訊いてくる。
二人は勿論掃除はせずに、
警察を呼んだのだった。
「どんな関係に見えますかしら。」
あぁ、またこの女は、
他人の神経を逆撫でするようなことを言う。
案の定、この図々しい男は、
燁子が持ってきた茶を払い除け、
汚いツバを飛ばしながら怒鳴った。
「質問に答えないか!」
「そんなに怒られては心に毒ですわよ」
床に溢れた茶を
エプロンのポケットから布巾を出し、
燁子は拭きながら言った。
飄々とした態度。
それが更に彼の怒りに拍車をかける。
「アンタが殺したことにしても
良いんだぞ!」
刑事としてあるまじき言動に
燁子は目をまん丸にし、
龍は呆れてものも言えぬばかり。
「全く、何てことだ!」
此方の台詞である。
全く、とんでもない男が来たもんだ
と肩を竦めると
「やぁやぁ、どうしたんです、田所刑事。」
「塩谷警部!」
まさに二枚目、清々しいほどスカした男が
田所の後ろから現れた。
恐ろしく派手な空気を纏い、
悠々と歩いてくる。
流石は警部、と言ったところか
堂々としている。
整った顔は
切れ長の瞳、高い鼻、形の良い唇で
構成されている。
服も恐ろしく高そうなものであった。
そして、
それを鼻に掛けて好き放題していそうだと
龍は勝手に思った。
どうにもいけ好かない男が来たもんだと
溜息を吐く。
「あらまぁ、素敵な御仁。」
「朽名さん、訊きたいのですが。」
「何でしょう、何でも訊いて下さいまし。」
しかし燁子は
どうしようもなく面食いであった。