テラーノベル
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1月下旬。
雪が静かに降り積もる、そこに俺はいた。
雪の降り積もる季節だと言うのに、俺は薄着だった。
ーー何故だったか……。
…………あ、思い出した。
俺がこの地球で生まれてすぐだったからだ。
冷たい風でかじかみ、真っ赤になった指先に息を吹きかける。
一瞬で目の前が真っ白になったようだった。
温度差で吐き出した息が白くなったのだろう。
生まれたすぐであっても、俺はなぜか冷静だった。
そんな時、さっきまでは開けていた視界が、いきなり土のような色の物で埋め尽くされた。
「うわっ」
思わず声が漏れた。
それは温かく、フワフワとした肌触り。
ーーーー毛布だった。
無駄にビックリした気がする…。
そんな事を考えながら、頭から被ったそれを取ろうとする。
すると、頭上から厳かで、優しい声が聞こえた。
「悪い。そんなに驚くと思わなかった……」
男性の声だった。
地べたに依然として座り込んだまま、後ろを振り向く。
少し日に焼けている肌。決して綺麗とは言えないような傷だらけの手。不器用な笑み。
されど、碧とも深緑とも受け取れるような霞んだ色の冬の軍服からは風格と底しれぬ強さが伝わる。何にも染められぬような黒の髪。情熱と温かさを持ったガーネットの瞳。
俺は、彼をかっこいいと思った。
いや、そんな言葉では収められぬ程、憧れてしまった。
「俺は、この国。ドイツ帝国のドール炎逸だ。初めまして、そしてよろしく。我が弟よ」
そう言って、彼は、兄さんは、俺へ不格好に手を差し出した。
恐る恐るその手を取る。
すると、兄さんは俺の手をしっかりと掴み、引き上げる。
その勢いで俺は立つことができた。
「ありがとうございます、兄さん」
肩にかかった雪を払い除け、感謝を一言述べる。
「俺は、津炎。貴方の後継者です」
一息ついてから、丁寧に自己紹介をしてみせた。
兄さんは相も変わらず厳かに微笑む。
「敬語じゃなくていい。兄弟、だろ?家族には多少口調を崩せ。まぁ、他者には敬語の方がいいがな」
そう言って軽く笑った笑顔は優しかった。
「はい!じゃなくて、うん。分かった」
その時はまだまだなれない口調に戸惑いながらも楽しかった。
兄さんが今の俺を作ったと言っても良いほどに、俺は兄さんに多大な影響を受けた。
今となってはもう、その兄さんもいないのだが……。
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